06月23

嫁は元レディースの総長

バリバリに気合いの入ったレディースの総長してたのが俺の嫁なんだが、知り合ったきっかけはメンバーに絡まれてたのを助けてくれた事。
「おい!何やってんだ?」
「あ!総長お疲れ様です!」
「そいつは?」
「何かいやらしい目でうちらの事見てたんでシメてました」
「ああ?良い度胸してんじゃん」
「そんな事してませんよ」
「なあ、正直に言ってみな?ウチらのサラシ巻いた胸見てたのか?」
特攻服の前を全開にしてサラシ巻いた胸が見えてたらそりゃ少しは見るけど、怖い集団をガン見する度胸は無い!
「チラッとだけ見ましたけどガン見なんてしてませんて」
「やっぱ見てんじゃねーか!」
嫁に答えたのにメンバーが煩い。
それにしても嫁からは凄え良い匂いがして頭がクラクラする。
「ウチが話してんだよ!黙ってろ!」
ひぃぃっ!おっかねえよ!
目力ハンパねー!
「ふぅ…で?どうだった?」
「あの…どうとは?」
「感想聞いてんだよ」
「えっと…起こりません?」
「さあ?どんな感想かによるかもな」
「ひぃっ!」
「何ビビってんだよ、ウチは気が短いんだから早く答えろよ」
「あの…そんなにキツく巻いて苦しくないのかな?って思いました!」
「ぶっ!あはははは!何だよそれ!全然エロい目で見てねーじゃんか!あはははは!ダメだ!ツボった!」
メンバーも俺もポカーンだよ…。
「ひっひぃっ!苦しい!お前笑かしてくれたから許してやるよ!あはははは!もうダメだ!」
「えっと…総長?」
「くくくく…何だよ…ぶはっ!」
「こいつ見逃すんですか?」
「オモシレー奴じゃん、ウチが許す!」
って事で許された俺は何故か嫁に気に入られたんだ。
バイト先のコンビニに嫁が来た時はビビったけどな!
嫁とメンバーの内の5人で特攻服姿で来店して、他のバイトは皆バックヤードに逃げやがったから俺が対応するしかなかった…。
「お前この前のオモシレー奴じゃんか!へー、ここでバイトしてたんか!」
「この前はどうも…助かりました」
「良いって良いって!笑かしてもらったからよ!」
「今日もビシッと決めてるんですね」
「おう!これから集会だからな!どうよ?」
わざと前屈みになって潰れた谷間を見せてくる。
「やめて下さいよ!」
「顔真っ赤だぞ!あはははは!」
嫁の声がデカいから他の客も出て行ってしまった…。
「いつまでそいつ揶揄ってるんですか?そろそろ他の皆も集まりますよ?」
「おっと!じゃあまた来るな!」
「ありがとうございましたー」
「それはウチの胸に対してか?」
「コーヒー買ってくれたお客様だからですよ!」
「照れんなよ!じゃーな!」
後ろ姿も様になってるなーって見てたら、バックヤードに逃げた奴が出てきた。
「知り合い?」
「前に他のメンバーに絡まれてる所助けてくれたんだ」
「意外と良い人?」
「怒ると目力凄いけどね、多分良い人」
「カメラで見てたけど結構気に入られてない?」
「揶揄って遊んでるだけだろ」
多分また来るんだろーなと思ってたら、連日現れて駐車場が溜まり場みたいになった。
オーナーから俺のせいだと言われてしまい、辞めざるを得なくなった。
「おっす!また来たぞ!」
「いらっしゃいませ、あの…今日でここ辞める事になりました、今までありがとうございます」
「何で辞めんだよ!ウチらが迷惑だったか?」
「そんな事ないですよ!」
「じゃあ何でだよ!」
「オーナーから言われまして…」
「何て言われた?」
ヤバい…ちょっと怒ってる…小便チビリそう…。
「あの…怒らないで下さいね?」
「早く言え!」
「ひぃっ!あんなガラの悪い友達に溜まり場にされると困るって言われて…」
「ああ?それでクビか?」
「はい…」
「そっか…ここのオーナーシメるか…」
「やめて下さい!俺は全然迷惑なんて思ってないですから!」
「それはウチと会えて嬉しいってか?」
「最初見た時は怖そうだなって思いましたけど、実は優しくて良い人だなって…それに良い匂いするんで…」
「ば…バッカヤロー!いきなり何言ってんだよ!」
「ひっ!すみません!調子に乗りました!」
「クッソ!調子狂うな!」
「すみませんすみません!」
「まあ良いや!何時に終わる?」
「えっ?」
「バイトだよ!何時に終わるんだよ」
「24時までですけど」
「その後暇だな?」
「後は帰って寝るだけですね」
「んじゃ、終わったら最初に会った時の公園に来い!待ってるからな!」
「明日朝早い…」
「ああ?」
「ひいっ!わかりました!ダッシュで行きます!」
有無を言わさない迫力に負けてバイト終わりに公園に向かった。
公園に近くなると何だか騒がしいから嫌な予感がする。
警察でも来てるのかと思ったら嫁がリンチ受けてた。
「何してんですか!やめて下さい!」
慌てて飛び込んで嫁を庇った。
「何だ手前!」
「怪我してるじゃないですか!もうやめて下さい!」
嫁に覆い被さって代わりに殴る蹴るの暴行を受けた。
暫くしてリンチが終わり、嫁が俺の下から這い出て言った。
「ちょっと決まりとは違ったけどこれでウチの引退に異論は無いな?」
「ハイっす!お疲れ様でした!」
「まったく…弱っちいくせに何やってんだよお前」
嫁の手を借りて立たせてもらった。
「前に助けてもらったじゃないですか」
「本当にバカだな、ウチのチームは男厳禁なんだよ、男が出来たらこうして制裁喰らってから辞めるのが決まりなんだ」
「えっ!彼氏出来たんですか!?」
「何言ってんだよ!お前だよ!」
「へっ?俺?」
「他に誰が居んだよ!」
突然の事でパニックになり理解が追い付かない。
「ウチじゃ嫌なのか?」
笑顔と怒った顔は見た事あるけど、こんなに女の子らしい顔は初めて見た。
殴られて青タンとか出来てるけど可愛いって思ったんだ。
「嫌な訳ないですよ、寧ろ俺みたいな男で良いんですか?」
「ふん!ウチに対して普通に話せるだけ大したもんだし、今だって守ろうとしてくれたろ?それでどうして他の男を選ぶ必要あんだよ」
「あのー、二人の世界作るのやめてもらって良いすか?」
他のメンバー居るの忘れてた!
「良い所で邪魔すんなよな!」
やっぱ怖え!
「私ら男作らない決まりを守ってんすよ?言ってみりゃ溜まってんすよ!目の前でイチャつかれたら精神的にくるっす!」
「お、おう…悪かったよ…」
流石の嫁もメンバーの悲痛な想いを知って素直に謝った。
「じゃあウチはこいつと帰るから」
「チクショー!爆発しろっす!」
後ろからの叫びを浴びながら嫁と帰るのはよかっとんだけど、何故か一人暮らしの俺の部屋にまでついて来る。
「家に帰らないの?」
「今日からここがウチの家でもあるからな!」
「親御さん心配するでしょ!?」
「メンバーの家に泊まって一週間帰らないとか普通だから大丈夫だ!」
「何やってんの!?」
「ウチが一緒に住んだら迷惑か?」
しょぼんとしたその顔はズルいよ!
「全然迷惑じゃないから!好きなだけここに居れば良いから!」
「だよな!今日からヨロシク!」
こうしてなし崩し的に同棲が始まり、怪我が治ったら嫁に押し倒されて食われました…。
後は良くある出来ちゃった婚です。

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