09月23

萌えない修羅場体験談

何打っても勝てる時期があったんだけど、その日も北斗で調子よく5k枚くらい出てた。

BBを消化しながら箱にコインを詰めてたら、ひざに引っ掛けてた箱がずれてコインをぶちまけた。
床に落ちたコインはなかなか拾いにくいもんだ。
恥ずかしながら店員を呼んで拾うの手伝ってもらってた。

そしたら話した事ない常連のおっさんが拾うの手伝ってくれた。
俺「サーセンwありがとうございます」
お「いーよいーよ気にしないで」

しばらくしてからわざわざ拾ってくれた店員にジュースを渡した。
それから手伝ってくれたおっさんが吉宗打ってたからジュース持って行った。
俺「どうぞ」
つ【ジュース】
お「おぉありがとう、スマンね。気を使わんでいーのに」
凄くいいおっさんだ。

おっさんが笑顔で話しかけてくる。
お「最近見るけどいつも勝ってるでしょ?」
俺も笑顔で言葉を返す。
俺「調子がいいだけですよ。トータル負けですから」
お「あの北斗はどうなの?」
俺「ぶっちゃけ6っぽいですよ。」
お「いーねぇ。俺の台は天井でバケ来てまたハマってるよ」
俺「じゃ自分がやめるときは声掛けましょうか?」
お「そーして。お願い」

それから自分の台にまた戻りサクサクとBBを引けてた。
しばらくしたらおっさんが来た。
お「凄い出てるね」
そのときで7k枚くらいはあったはず。
俺「めっちゃ台がいんですよ」
お「あの台やめてウロウロしてるからやめる時は教えてね」
俺「いーですよ。呼びますから」

当時雀荘でバイトしてたんだけど、来る客は全員やくざと右翼とよごれ。
でもなぜか凄くぬるいトコだった。

スロでいい台掴んだからもう少し打ちたいと電話したら、頑張れよと言われて終わり。
仕事でも遊びでも、【金になる方を優先するべき】という妙な信念のあるオーナーだった。
だからパチで稼げるならパチを打てと。
金がないならうちでバイトしときなさいと。
嘘を付かず連絡さえちゃんとすれば文句は言わない人だった。

その日も電話して夜8時まで打つことにした。
時間が近づき万枚前後というとこで時間切れ。やめることに。

2チェ引いて少し回し、下皿に30枚くらい置いて残りを店員呼んで流してもらった。
箱を運んでる途中におっさんを探した。
ベンチに座ってた。

俺「やめましたよ」
お「いくら勝ったね?」
俺「20万あるかないかってトコです」
お「凄いなぁ」
俺「めっちゃ嬉しいですよマジで。2チェ引いてやめてるから打っていいですよ」
お「ありがとう」

そしておっさんと一緒に俺が打ってた台に向かう。
おっさんが台に座ったのを見て、レシートを受け取り換金に行った。
210kの勝ちだった。

換金してからおっさんを見に戻った。
するとおっさん座ったままで打ってない。
見るとコインを打ち切ったトコだった。

俺「あれ?打たないんですか?」
お「あー打つよ。ちょっといい?」

そう言っておっさんは外に出て行った。
俺は何も考えずに付いて行った。

外に出たとこでおっさんが話しだす。
お「いくら勝ったね?」
俺「21万勝ちでしたよ」
お「ほー凄いな君」
俺「最近ついてますから」

お「でさぁちょっと金貸してくれない?」
一瞬何言ってんだと固まった。
お「実は今日6万負けてもう何百円しか持ってないのよ」
お「あれが出れば返せるし月末までには返せるから。ほとんどココに来てるし」
俺「いや、それはムリ。金は貸せないですよ」
だいぶ戸惑ったがすっぱりと断った。

するとおっさんの態度豹変。
お「おまえそんだけ勝ってんだから3万くらい貸しとかんかコラ」
俺は突然の変身に面食らってただ呆然。
お「コイン拾うのも手伝ってやったのにコラ。返すって言ってんだろがオイ」

気が付けば駐車場の端で人も車も通らないトコまで歩いてきてた。
お「3万貸すのと金取り上げられるのとどっちがいーか選べコラ」
お「おいコラどっちよ若造」
物凄い勢いで一人でしゃべり倒してくる。
しまいにはキスしそうなくらい顔を近づけてきた。

なんかおっさんはもう切れてる自分に酔ってるような感じ。
こっちは何も言わないのにどんどん興奮してきてた。

お「はよ決めろや。それとも事務所で話しするか?あ?」

さりげなく【俺はヤクザだぞアピール】まで始まった。
時間は8時を過ぎようとしてた。

このままではちょっとヤバい。
とりあえず冷静に考えてみる。

1.お金を貸す
2.金は貸さないと突っ張りとおす
3.とりあえず走って逃げる
4.喧嘩する

1はあり得ない。俺はそんなにヘタレじゃないし、後から絶対に後悔する。
2を選択しても結局繰り返しだろうが答えは2以外にない。
3もあり得ない。次におっさんに合う時が微妙すぎる。
やはり4しかないか?
たいして喧嘩は強くないが負ける気はしない。
とりあえず2の姿勢で4の構えだと決めた。

ここまで啖呵切った以上、もうおっさんは引けないだろう。
俺も貸さないと言った以上、もちろん引くつもりはない。

お「もういいわお前。とりあえず車に乗れよコラ。事務所行こうか」
おっさんが俺の腕を掴んで引っ張ってきた。

俺「触れんなコラ」
こっちもぶちきれで思いっきり振りほどいた。
俺「お前コラ貴様。負けてかつあげかおい」
俺「事務所?車乗れだ?どこの腐れやくざよカス」

勢いよく吠えた以上、もう俺もあとには引けない。

もちろん予想通りおっさんは俺に掴み掛かって来た。
お「何よぉ?この礼儀知らずの糞ガキがぁ」

おっさんのパンチが俺の顔面に思いっきりヒットした。
そのまま俺は倒されて馬乗りになられた。

あれ?wちょwwオレ弱すぎだろw

おっさんは170?くらいで身長は俺と変わらないが、ガタイは俺の1.5倍くらいあった。
全然マウントを返せない。
今でも覚えてるが馬乗りのまま4発殴られた。

おっさんが立ち上がって踏み潰すように蹴ってくる。
そこでやっと起き上がって思いっきり腹を蹴った。
これがびっくりするほどクリーンヒット!

おっさんの体が前のめりになった所で顔面にケリ。
おっさんがよろけたトコで髪を掴んで膝蹴りの連打。

ここでおっさん急に態度を変えた。
お「待て!悪かった。もうやめよう」
俺はすっぱりと蹴るのをやめた。

おっさんは肩で息をしてた。
顔面から血も出てて俺のズボンも結構血まみれになってた。
お「兄ちゃん大丈夫か?」
俺も口の中切ってて道路に倒されたから体中が痛い。

俺「とりあえず大丈夫です。でもおじさんが悪いんですよ」
お「あぁ俺がおかしかったな。悪い」
お「根性あるなお前。今度仲直りに飲みに行こう」

変な展開だが収まったのでホッとした。
俺「もうこんなならないならいいですよ」
お「はっはっは。もうしないよ。電話番号交換しようか」

そこで携帯番号を交換してすんなり別れた。
しかしこの番号交換が罠だった。

時間は8時30分になってた。

雀荘に電話しようと思ったが説明が長くなるからやめた。
血まみれの服で行くわけには行かないので一度着替えてまた出掛けた。

雀荘に着いたのは9時を過ぎていた。
俺「遅くなりすみません!」
謝りながらドアをあけた。

オーナーはもちろん怒ってただろうが、俺の顔を見てすぐどうしたのよ?って聞いてきた。
俺は一部始終をオーナーと常連の客に話した。

俺の話しを聞きながら周りは爆笑してた。
オーナーと常連はそのおっさんがドコの組で名前は何かを聞いてきた。
俺は携帯に登録した名前を言ったが知らなかったようだ。

オーナーと常連が「そいつと仲良くするのは構わんけど、変な絡まれかたしたら即教えろな」
といってきた。
笑いながら話しを聞いて貰って、俺もやっと終わったんだと妙に安心した。

そのまま俺も卓に入って、その日はいつも以上にみんな笑いながら麻雀打ってた。
深夜0時を越えた頃に、例のおっさんから電話が鳴った。

今から飲みの誘いかな?と思いながらも少し不安だったが周りは打つのをやめて俺に注目する。
みんなにケタケタ笑いながら早く出ろといわれて電話にでた。

俺「はい」
相手「あー○○君?」
俺「はい」
相手「おっさんの代わりに電話を掛けたんやけど喧嘩したんやって?」
相手「おっさん病院にいったんやけど、全治3ヶ月で入院せないかんくなったのよ」
俺「・・・・・・・」

考えもしない展開だった。

俺の様子が変わった事に周りが気付いた。
一度切れと周りに言われたが相手が話し続ける。

相「今から少し時間ないかな?」
俺「今仕事中なんでちょっと無理なんですよ」
相「いや、それは困るわ。自分のした事わかっとるの?」
相「迎えに行くから今日は早退してな」
俺「いえ、3時まではちょっと出れないです」

ここでオーナーが「全部はいと言って電話を切れ」と耳打ちしてきた。
ひとまず俺は早退すると言い、近くの目印を教えた。
30分後に迎えに来ることになった。
全身から血の気が引くというか真っ白になった。

俺が最近勝ってる事
今日21万勝ってる事を相手は知っている。

電話を切って電話の内容をオーナーと常連にそのまま伝えた。
以外な事に周りは笑ってる。

オーナ「まぁまぁ俺に任さんか」
常連「あー今日は色々おもしれーなー」
俺とは対照的にノリノリだ。
なんとも心強く感じた。
待ち合わせ場所に俺とオーナーと常連の一人と3人で行くことになった。

なんとも情けないが、こうなればオレは常連とオーナーに任せるしかない。
待ち合わせ場所にはすでに白いベンツが止まってた。
間違いなくあの車だろう。
息が苦しくなって足が震えてふらふらと歩いて車に向かった。

信号を渡れば待ち合わせ場所に着く。
そこで常連とオーナーが早歩きしだした。

オーナ「お前はそこで待っとけな」
俺が言葉を返す前に常連に向かって「よーし行こうか」と言いながらスタスタと道路を渡っていった。

オーナーが車の窓をノックしているのが見える。
運転席の窓が開いたが例のおっさんではなかった。
初めて見る顔だがどうみてもヤクザだ。
正直怖い。
俺はオーナーが心配なのと何とかして欲しい気持ちでいっぱいだった。

オーナーが運転席の人に一言二言話しかけてる間に、常連は助手席の人間と話してた。
そこからが信じられない光景だった。

常連が助手席のヤツの髪を掴んで車から引きずり出した。
窓からずり落とされたヤツは常連に蹴られながら正座している。

運転席のヤツは降りてきてオーナーに頭を下げてる。
後ろの席から例のおっさんが包帯ぐるぐる巻きで降りてきた。
おっさんは運転席のヤツの後ろに立って、身振り手振りで何か話してる。
おっさんはたぶん喧嘩のことを説明してるのだろう。
オーナーは腕組みをしながらたまに頷き、一言もしゃべらず話しを聞いている。
助手席の人は立ち上がり、おっさんの横に立っている。

そのまま10分くらい話してたと思う。
俺の姿におっさん達は気付いてなかったと思う。

そしてオーナーは運転席に座り、常連が助手席に座った。
後ろにおっさん達三人が座って、そのままどこかに車で走っていってしまった。

俺はどうしていいのか分からず、ひとまず雀荘に戻った。
戻ったら雀荘に残ってた常連客がwktkしながらどうなったか聞いてきた。

待ち合わせ場所でのことを、店に残ってた常連達に細かく話した。
常連達はケタケタと笑ってた。
心配せんでも大丈夫だからなと皆声を掛けてくれた。
なんだかいっぱいいっぱいで俺は泣いてしまった。
それを見てまた常連達は爆笑してた。

それからずいぶん時間のたった深夜2時ごろに、常連客の一人に電話が掛かって来た。
それはオーナーからで、今から帰るとの事だったらしい。
俺はまた一気に緊張した。
しばらくしてオーナーと常連が帰ってきた。
また一気に雀荘が賑やかになった。

オーナ「もう大丈夫だからな」
常連「いやーお前よくやってくれたわ」

2人とも凄く明るい。
オーナ「今日はもう帰っていいぞ」
オーナ「ゆっくり寝て、明日起きたら病院行って診断書を取って来いな」
常連「もう心配しなくていいぞ」
2人にそう言われ、色々と聞きたかったがその日はそのまま家に帰った。

翌日病院に行き、全治一ヶ月との診断を貰った。
雀荘に行きオーナーに診断書を渡した。
オーナ「よし、これでいい。お前に治療費と慰謝料が出るからな」
俺「え?まじですか?」
オーナ「ケガさせられて恐喝までされたんだから当たり前やんけ」
そう言われるとそんな気がしてくる。

結局1週間後に慰謝料と治療費合わせて約50万貰った。
オーナーに皆でなんか食べましょうと言ったが、俺はお前より金貰ってるから好きに使えと言われた。
助けてくれた常連も俺より金を貰ったらしい。

後日談

どうして金を貰える事になったのかをちょくちょく聞いた。
しかしオーナーも常連も詳しくは教えてくれなかった。

ケガさせられて恐喝されたんだから貰って当たり前としか言われなかった。
例のおっさんは、あのパチ屋に行かないという約束をしたらしい。
だから安心して好きなパチ屋に行って来いと。
もし今回の件で絡まれたらすぐに電話しろとの事だった。

オーナーと常連がいなかったらどうなってたことか想像が付かない。
どういう流れで解決したのかは今でも分からない。

雀荘のバイト料は時給2000円だったから破格だったが、貯金が目標額溜まったのでその3ヵ月後にやめた。
そしてその雀荘は去年なくなった。

あまり詳しく書けば特定されるから書けないが、今はその金で店をしてる。
深夜5時まで仕事。
もちろん今も仕事中だ。

あれから3年後の現在、例のおっさんには会ってない。
助けてくれた常連は黒の右翼バスに乗ってるのをたまに見かける。
スピーカーから元気な声が聞こえてくる。

オーナーとは2年くらい会ってない。
そして今は何をしてるのかも知らない。
当時の常連の人達に聞きたいが、雀荘をやめたらなぜか近づきにくくなってしまった。
不思議なくらい交流はない。
だから会っても挨拶して世間話をするくらいで、遊んだり飲んだりすることはない。
なんだか寂しいが変に気を使ってくれてるんだと思う。

今自分の店で雇ってる子がいるけど、もしその子が同じトラブルにあったらと考える事がある。
俺はきっと何も出来ないだろう。
だけどあの時オーナーに助けてもらったように
俺も出来るだけの事をしようと心に決めてる。

おわり

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