『ね、義姉さん』
襖の穴から覗き見る兄夫婦の夜の営み。
裸電球の薄暗がりの中で、兄は、義姉の秘唇を指で開いて見せた。
義姉は、あたかも義弟が覗き穴から凝視しているのをわかっているかのように襖に開いた穴を見つめていた。
蚊帳の中での一部始終は、祖父のひと夏の記憶として封印されるはずだった。
しかし、現実は祖父の兄にあたる人物は外地で急死してしまうのである。
「義姉さんは、まだ若くて美人だからすぐ再婚できますよ」
祖父がそういったかどうかは、わからないが、義姉の再婚の相手は、祖父だった。
「おじさん。お・じ・さ・ん」
「お、おおう」
「ぼんやりしないでよね」
着替えを終え、エレベーターでフロントへ。
「はい、くつすべり」
絨毯の上で正座して
「どうもありがとうございました」
深々とお辞儀をした。