~途中で切れてたので・の続きー
ある日、担当医が
「○○さん、ラッキーですよ!!系列のクリニックに行ってた病棟の元エース看護師が『また病棟で働きたい』って。明後日からなんですが、辞令が明日からなので、明日一日同行させられます。急な話ですが、どうしますか?」
もちろん返答は
「お願いします」
ただし
「病状の急変や、動けないくらいのひどい痛みが出たら即中止して救急車を呼びます」
と。
黒縁メガネを掛けた女性の看護師さんにレンタカーを借りてもらい、行きたい場所を伝えて運転してもらう。僕は後部座席に乗る。助手席にはモルヒネや各種の薬品や注射器の入ったバッグ、AEDまで用意していた。
村に入ったが記憶と一致するものは少なかった。住んでた家は更地になり、農協は建て替えられ、小学校も
「建物は残ってますが20年前に廃校になって今は市の施設になってます。中に入りますか?」
と看護師さんが言った。
僕は杖をつきながら中に入る。色々記憶が蘇ってくる。サチ、タケシ、マキは今はどうしてるだろうか?
「『初恋の人』でも居たんですか?」
それまで事務的な事しか喋らなかった看護師さんがいうので少し驚いたが、
「うん。『本当に好きだった』でも、あんな形でしか表せなかったからちょっとね(笑)両想いだったと思うけど、なぜかお互いに『好き』って言ってなかったな。『さよなら』も言えなくてね。本当に悪い事したなって・・・。」
ひとりごとのようにつぶやく。
「『さよなら』は言えますよ」
今の僕には『さよなら』はこの世との別れを指す。自分では判ってるが限りなく初対面の人に『お前はまもなく死ぬ』と言われてるみたいでムッとした。
「あんたに何が判るんだよ!!」
怒鳴り気味で振り返る。看護師さんが泣きながら眼鏡を外した。
「おかえり、ケータ・・・」
「サ・・・」
(完)