『お帰りなさい。今日もお疲れ様!』
弾けるような声で夫を出迎えるさとみ。35歳のさとみは、6歳の子供がいるようには見えないくらいに若々しい。
昔から体を動かすのが好きな彼女は、今もジムでのトレーニングを欠かさない。そのおかげもあり、学生時代の洋服はすべて着ることができる。
そして、少し厚ぼったい唇がセクシーな彼女は、真っ黒な髪に少し太めの眉毛、そしてぱっちりとした二重まぶたの目は、いつも濡れたようにセクシーだ。
その見た目は、石原さとみに似ていると評されることがよくある。
夫を出迎える彼女は、白の清楚なブラウスに淡いグリーンのタイトスカートを穿いている。清楚な感じのするブラウスに対して、スカートは少し丈が短く、彼女のほどよく肉付いた美脚が強調されている。
いつもは、もっとラフで色気のない格好をする彼女だが、月に一度、金曜日の夜にはこんな姿になる。
そしてその日は、6歳になる可愛い息子を実家に預けるのが常だ。孫のことを溺愛する祖母と祖父の強いリクエストもあるのだが、さとみと夫にとっては別の理由もある。
「ただいま。今日も綺麗だね。弘樹は?」
夫は優しげな笑みを浮かべながら、さとみにカバンを渡す。さとみは、そのカバンを受け取りながら、
『もう預けました。どうします? 先に少し飲みますか?』
と、笑顔で答える。
「あぁ、そうだね。まだ30分くらいあるしね」
夫もそう答えて家に上がる。さとみはキッチンに、夫は着替えに行き、しばらくしてからリビングのテーブルにつく。
テーブルの上には、すでにいくつか料理が並んでいて、ビールを飲むためのコップも置かれている。
さとみは夫の対面に座ると、夫にビールをつぎ始める。
『お疲れ様』
笑顔で言うさとみ。夫は”ありがとう”と言った後、さとみにもビールを注ぐ。
そして、軽くグラスを合わせてから飲み始める二人。
夫の直之は、今年38歳になる。少し年齢差がある夫婦だが、直之は自営をしており、バリバリ働いているので若々しい。今でこそ、経営する不動産事務所も順調で、人並み以上の暮らしをできるようになった直之だが、3年前に大きなピンチがあった。当時、順調に業績を伸ばしていた直之は、市街化調整区域にある5000坪の土地の開発に際し、慢心から見切り発車をしてしまった。
農業振興地域にかかっていたその土地は、結局許認可が降りないという最悪な結末を迎えた。資金繰りが完全にショートした直之は、金融機関や両親、さとみの実家にまで頭を下げ金策に奔走したが、2500万円がどうしても工面できなかった。
そして、最終的にその危機を救ったのは、直之の親友の雅治だった。
雅治は、直之とは大学からの友人で、馬が合った二人はすぐに仲良くなり、学生時代のほとんどを一緒にすごした。雅治は背も高く、ルックスもよかったので、直之とは違って女の子によくモテた。
だが、雅治は彼女を作る事はなかった。雅治には、心に決めた女がいたからだ。そしてそれは、現在直之の妻のさとみだった。
もともと3人は、共通の趣味のフリークライミングを通しての知り合いだった。技術的にほぼ同じだった三人は、一緒にトレーニングをする仲になり、岩場へも3人でよく行くようになった。
3人の男女が長い時間を一緒にすごし、恋が芽生えるのは必然だった。だけど、さとみの心を射止めたのは、すべてにおいて勝っているように見える雅治ではなく、直之だった。
そんな事があり、ギクシャクするかと思われた3人の関係は、雅治の明るさのおかげもあり、結局何も変わらなかった。そしてその友情は、直之のピンチを救った。
雅治は、卒業後大手企業に就職したが、1年と経たずに退職し、ネットで色々とやり始めた。
今でこそ、ネット情報商材や、まとめサイトとかアフィリエイトという言葉も浸透しているが、まだその言葉が知られていない初期からそれを手がけていた雅治は、センスもあったのだと思うが、一山も二山も当てた。
その結果、あっという間にサラリーマンの生涯年収を稼ぎ出し、直之がピンチに陥った時にはすでに悠々自適の生活を送っていた。
そんな雅治は、3000万円という大金を直之に与えた。貸したのではなく、与えた。たった一つの条件と引き替えで……。
その後ピンチを脱した直之の会社は完全に危機を脱し、借金も2年と経たずに完済できた。そして今では、直之に与えられた3000万円以上の年収を得るまでになっていた。
直之は、何度も雅治に3000万円を返却しようとしたが、それは叶わなかった。”たった一つの条件”のために……。
『今日ね、これ、すっごく安くなってたんだよ! ケースで買っちゃった!』
さとみは、注いだビールの缶を見せながら言う。ビールと言っても、いわゆる発泡酒だ。そして、安くなったと言っても、たかが数十円という話しだと思う。今の年収なら、そんな事は気にせず、発泡酒ではなくビールでもなんでも買えると思う。
でも、さとみはそんな事を嬉々と話してくる。あの時のピンチ以来、さとみは慎ましい生活を守っている。贅沢もせず、なにかをおねだりすることもなく、発泡酒が安く買えたことに喜びを感じるさとみ。
直之は、そんなさとみを本当に愛おしく思う。
「ありがとう……。でも、ビールとか買えば良いよ。もう、苦労かけることはないから」
直之は、申し訳なさそうに言う。
『そんな心配してませんよ。でも私、発泡酒の方が好きだから』
さとみは、真っ直ぐに直之の目を見ながら、にこやかに言う。その目には、信頼と愛情があふれ出ているようで、そんな目で見つめられると、直之はより胸が苦しくなる。
胸がいっぱいになった直之は、
「ゴメン……」
と絞り出すように言った。
『もう! 謝らない約束ですよ。それに、最近は私も、雅治さんとのこと楽しんでるんですから』
と、少しイタズラっぽく言うさとみ。
すると、インターホンが鳴った。
『あっ、雅治さんかな?』
さとみはそう言うと、玄関に走る。
すぐに、
「こんばんは〜。今日もさとちゃん綺麗だねぇ〜」
と、明るい雅治の声が聞こえる。
『もう! 口が上手いんだから! 何も出ませんよ〜』
さとみはそんな事を言いながらも、顔がにやけている。やはり、誉められて嫌な気はしないようだ。
「お疲れ! これ持ってきたぜ! 飲もうか?」
雅治は、高そうなワインを手にそんな事を言う。直之は、挨拶もそこそこに、
「いいね! さとみ、グラス持ってきてよ!」
と言う。
『いつもゴメンなさい。これ、高いんじゃないんですか?』
さとみはそんな風に言いながらも、すでにワインオープナーで開け始めている。そんな所も可愛らしいと思いながら、直之はさとみを見つめる。
そして、3人での楽しい食事の時間が始まる。話題は、ほとんどがクライミングの話だ。今度はどこの岩場に行こうかとか、誰それが一撃で落としたとか、そんな会話をしながらDVDも見たりする。
本当に楽しい時間で、直之はついつい飲み過ぎてしまう。
「じゃあ、そろそろいいかな?」
でも、雅治のその言葉で場の空気が一変する。
『……はい……』
少しためらいがちに返事をしたさとみは、椅子から立ち上がると、雅治の横に移動した。
直之は、その様子を黙って見ている。その直之の目の前で、さとみは雅治にキスをした。なんの躊躇もなく、夫の直之の目の前で雅治の口の中に舌を差し込み、濃厚な大人のキスをするさとみ。
さとみは濃厚なキスをしながら、時折直之の方に視線を送る。その目は、妖しく挑発でもするような光を放っていた。
——直之が3年前のピンチの時、雅治に頭を下げた時、出した条件は一つだった。
それは、月に一度、直之の目の前でさとみを抱くことだった。最初、直之は雅治が冗談を言っているのだと思った。だが、その後の雅治のカミングアウトは、直之にとって衝撃的だった。
雅治は、さとみと直之が結婚してもなお、さとみのことが好きだった。雅治がモテる身でありながら、誰とも交際をしなかったのは、単にさとみが心にいたからだ。その告白は、直之にとっては青天の霹靂だった。直之は、雅治がもうとっくにさとみを吹っ切っていると思っていた。いくらでも相手がいると思われる雅治なので、もう忘れていると思っていた。それだけに、雅治のカミングアウトを聞いて、直之はただ驚いていた。
雅治は3000万円と引き換えに、月に一度だけ思いを遂げさせて欲しい……と、逆に直之に頭を下げた。そして直之には、選択の余地はなかった……。
直之がさとみにその話をした時、さとみは何も言わずに首を縦に振った。何度も謝り、涙まで流す直之に、
『私は平気です。それに、雅治さんならイヤじゃないですから』
と、明るく笑いながら言ってくれた。でも、さとみは指が真っ白になるくらいに拳を握っていた。イヤじゃないはずがない……。
さとみは、すべてが夫の直之が初めての相手だった。デートも、キスも、セックスもすべてを直之に捧げた。
そして、一生直之以外の男を知ることなく、人生を終えるものだと思っていた。
約束の日に向けて、さとみはピルを飲み始めた。まだ小さい息子を育てながら、他の男に抱かれるためのピルを飲むさとみ。直之は、その姿を見て胸が破れそうだった。
そして、約束の日が訪れた。直之は、せめて自分がいない場所でさとみを抱いてくれと頼んだ。でも、雅治は同意しなかった。理由は教えてくれなかったが、雅治は直之の前で抱くことにこだわった。
そしてその日、雅治が家に来た。緊張で3人ともほとんど口をきかない中、息子を風呂に入れ、寝かしつけるさとみ。
雅治と直之は、二人きりになると、
「本当に、いいんだな」
と、雅治が短く聞いた。提案した雅治も、やはり緊張しているようだ。
「いいもなにも、もう金、使っちまったし」
直之は精一杯の虚勢を張って、笑いながら言ったが、脚は震えていた。いくら親友でも、妻は貸せない。貸せるはずがない。直之は、そんな当たり前の感情を持っていた。寝取られ性癖があるわけでも、さとみへの愛が醒めていたわけでもないからだ。
心の底から惚れた相手が、自分の失敗のせいで他人に抱かれてしまう……。それは、血の涙が出そうな程の、辛すぎる現実だった。
息子を寝かしつけたさとみが、バスタオルを巻いただけの状態でリビングに入ってきた。
『お待たせしました……』
うつむいて顔を真っ赤にしているさとみが、小声で言う。そして、黙って寝室に移動した。その後を追う雅治と直之。
寝室に入るとすでに間接照明だけになっており、薄暗い中、さとみはダブルベッドに寝ていた。そしてダブルベッドの奥には、ベビーベッドに眠る息子が見える。
それを見て、直之の後悔は限界を超えるほど大きくなった。大声を上げて、二人を止めようとした瞬間、直之はさとみの視線に気がついた。タオルを巻いた状態で、ベッドの上から直之の目を見つめるさとみの目は、”大丈夫”と語っていた。
それを見て、腰が抜けたようにへたり込む直之。心の中で何度も愛する妻に謝罪を繰り返していた。
そして夫の直之が見ている中、雅治がベッドの横に立ち、服を脱ぎ始める。それを見つめるさとみは、緊張で顔がこわばっていた。あっという間にパンツ一枚になると、雅治はベッドの上に上がった。
「そんなに緊張しないで。本当にイヤなら、今日は止めるから」
さとみは、戸惑っていた。今、この状況でもまだ現実として受け止め切れていなかった。さとみにとって雅治は、クライミング仲間であり、仲の良い友人だ。
それが今、お金と引き換えにさとみを抱こうとしている。さとみは、冗談だと思いたかった。でも、最後の一枚のパンツを脱ぎ、自分に近づいてくる雅治を見て、さとみは現実だと理解した。
『平気です……』
さとみは、小さな声で答えた。それが合図だったように、雅治はさとみを抱きしめキスをした。
唇と唇が触れた瞬間、さとみは直之を見た。そして、直之もさとみを見た。
さとみは、泣きそうな目で直之を見つめ、直之は実際に涙を流しながらさとみを見つめた。
雅治は、それに気がつかないように、里美の口の中に舌を差し込む。そして、舌を絡めるキスをする。その動きは優しく滑らかで、雅治が女性に慣れているのがわかる。
雅治の中には、ずっとさとみがいたために、特定の彼女は作ることがなかった。だが、排泄行為のような感覚で、たくさんの女性と関係を持った。願いが叶えられない哀しみを、たくさんの女性を抱くことで消そうとしているかのように、感情もない相手とも関係を持った。
そんな雅治の願いが、長い時間を経て、歪な形ではあるがかなえられようとしている。雅治は、本当に慈しむようにキスをする。さとみとキス出来るのが、嬉しくて仕方ないのが伝わってくる。
覚悟していたとはいえ、目の前で妻が自分以外の男とキスをする姿を見て、直之は歯を食いしばるようにして拳を握っていた。悔しさ……。そして、自分自身へのふがいなさで、涙が止まらない。
さとみは、ただ人形のように雅治のキスを受け止めている。自分から舌を絡めるようなこともなく、ただ、じっと耐えるようにキスを受け続ける。
そして雅治は、キスをしながらさとみのタオルをはだけさせ、胸に手を伸ばした。クライミングが趣味なので、体脂肪が少ないさとみは、胸も小ぶりだった。でも、白く美しいその胸は、乳首も乳輪も薄いピンク色で、どちらも小ぶりだった。
もちろん、夫の直之以外に触れられた事のない胸だが、今まさに雅治の手が触れようとしている。さとみは身を固くしながら、不安そうな顔で夫の直之を見つめる。
直之は、そのさとみの視線から逃れるように、うつむいてしまった。もう見ていられなくなってしまった直之は、うつむいたまま心の中でさとみに詫び続けた。
うつむく直之の横で、雅治はさとみの胸を揉み続ける。その動きも慣れたもので、身を固くしていたさとみは、かすかに感じる快感に戸惑っていた。
夫しか知らない上に、少女のような幻想を持っているさとみは、愛する人以外に触れられても感じるはずがないと信じていた。
雅治は、しばらくするとさとみの胸に口を近づけた。そして、そのままピンクの小さな乳首に舌を這わせる。その瞬間、さとみはビクッと身体を震わせ、
『あっ』
と、小さな声をあげた。その声につられるように直之は頭を上げた。夫婦のベッドの上で、雅治に乳首を舐められている愛する妻を見て、やっと直之は雅治が本気なのだと理解した。
さとみは夫以外の男に乳首を舐められ、どうしていいのかわからず、不安そうな顔で直之を見つめている。本当は、泣き出したい気持ちを持っているのに、夫のためにグッとこらえるさとみ。
ただ、こんな状況にも関わらず、さとみの頭の中は、夫を裏切ってしまう事への罪悪感があった。けっしてさとみが望んでこの状況になった訳でもないのに、夫への操を守れない事を気にするさとみ……。
直之は、絶望的な状況の中、今さらこれでよかったのだろうか? と思い始めていた。たかが金だ……。用意できなくても、命までは取られなかったはずだ。周りには多大な迷惑をかけることになったかもしれないが、いっそバンザイして、裸一貫に戻るべきだったのではないか? さとみを差し出してまで、会社を守る必要があったのだろうか?
直之は、今さらこの事に気がついた。金策に奔走していた時は、夜中に何度も目が覚めるほどに追い詰められていた。冷静さを失っていたのだと思う。
金策が終わり、ある程度気持ちに余裕が出来た今なので気がついたのかもしれないが、もう手遅れだ。本当は、今すぐ止めればいいだけの話かもしれない。でも、直之も、自分が綺麗事を言っているだけで、実際会社を救えた今、それを捨てることなど出来ないとわかっていた。
そんな葛藤をする直之の前で、雅治はさとみの綺麗な淡いピンクの乳首を舐め続ける。長年の夢がかない、雅治は童貞の少年のように心が躍っていた。
『ンッ! ンンッ! ン……』
さとみは、声を出さないように意識しているのに、雅治の舌が焦らすようにさとみの乳首を舐めるたびに、思わず吐息を漏らしてしまう。少しも感じないはずが、雅治の舌が触れた場所を中心に、甘く痺れたような感覚が広がっていく。さとみは、自分が快感を感じていることに、自己嫌悪を感じていた。
すると、雅治はさとみの股の間に身体を滑り込ませ、お腹のあたりをさとみのアソコに密着させた。さとみは乳首を舐められながら、アソコをお腹で圧迫されて、はっきりと快感を感じてしまった。
さとみは顔を真っ赤にしながら、直之から視線を外した。感じてしまったことを、直之に気がつかれたくない一心で……。
直之はそんなさとみの様子を見て、急に不安になっていた。さっきまで緊張で不安そうだったさとみが、頬を赤らめ、イタズラが見つかった子供のような顔になっている。
もしかして、感じているのでは? 直之の頭の中に、急速に疑念が広がる。そんなはずがない……でももしかしたら……直之は、ループに陥っていく。
次の体験談を読む