小学生の頃ってさ、よく大きなゴミが捨ててあるような所に友達と秘密基地みたいなの作らなかった?んで、ご多分にもれず雨だか何だかに濡れたエロ本も捨ててあるから、親の目に触れない基地は絶好の隠し場所にもなるんだよ。
ある日、友達よりも先に基地に行ったら、誰かがすでに基地にいるんだよ。
クラスは違うけど同じ学園の子が真剣にエロ本見てた。驚かせようと大声出して入っちゃったら、もうガタガタ震えて泣きはじめた。そういう自分も内心混乱してんだけど、とっちめてやろうかと踏み込んだ手前上、何か罰を与えなきゃいけない。
「ま・・・ママにいわないでぇ・・・」気が付いたら「ど、泥棒検査だ!ふ、服脱げよ!」・・・そしたら、ぶるぶる震える手でワンピースを脱ぎ始めた。・・・公衆浴場で見てる裸とは違う、凄く悪いことしてるみたいな気がしたけど、結局全裸にして両手を頭におかせて立たせちゃったんだ・・
基地内じゃ懐中電灯しかない。でも、それに照らされて浮かび上がる女の子のガリガリの白い裸身に異常に興奮したのを覚えている。
結局、友達に見つかりたくなかったから、慌てて乳首に吸い付いたり、ぴっちり閉じた筋に木の枝をあてがったり、お尻の穴に小石を入れてみたりして、そのままその日は帰らせた。この事をばらしたらエロ本読んでた事ばらすって確認をとる事と、必ず次の日に来るように下着を預かる事をして・・・
後で友達が来て一緒に来たんだけど、もうさっきのこの事で頭が一杯だった。
でも次第に怖くなってきた。女の子がばらすんじゃないか、ばれたら女の子に恥ずかしい事をした事、この基地が見つかって壊される事、何よりも友達に黙ってそんな事をしたってばれてしまう事が。
だから、女の子に駄目押しをしておこうと思い、すぐに家に帰って住所録を調べた。名前はわかってた。預かった下着に名前が書いてあったからだ。
夢中でコールしたけどその時気付いた。考えてみれば、女の子の家に電話するなんて始めてだったんだ。やばい!でもすでに電話は繋がってしまった。
「・・・もしもし?」
「ろ、610だ・・・わ、わかるよな?!」
「あっ・・・」あの子だ。
「に、逃げようと思っても無駄だぞ」
「逃げないよ・・・」
「今ここでお前のおばさんに変わって、さっきの事言ってもいいんだぞ」
「やぁっ・・!」
もう心臓バクバク。ばれたらまずいのはこっちだって。でも上手いこと女の子を追い詰められた事は判ってホッとした。
「明日、お前早くこいよな!」
「で、でもお掃除が・・・」
「何だよ、いいのか?ばらしても」
「・・・?っ」
サイコーの気分だった。俺の中ですら絶対の存在だった学校すら、彼女の中では俺以下の優先順位なんだから。
その日は眠れなかった。今日の事を思いだす事。そして、今日無我夢中で出来なかった事を明日どうやっていこうか考えるのに夢中だったから。気が付いたら、いつも親に隠れてやってる秘密の行為・・・ヒヤッとした布団の中でズボンもパンツも脱いで、布団にあそこを押し付けるのをやってた。なぜか気持ちよかったから。でもそれ以上は何もできず悶々としていた。
次の日、息を切らせて基地に向かったら、ちゃんと泣きながらもあの子はいた。
命令どうりの時間、そして・・・命令どうりの全裸の格好で。
梅雨の明けた時期。基地内はジリジリと暑く、しっとり汗ばんだ彼女の肌と少し乳臭い空気でむんむんしていたように思う。
「ひぃっ・・・」怯えた顔を向ける彼女。でも、俺とわかってホッとして、すぐにまた怯えた顔になる。「もう、許してぇ・・・」ぞくっとした。
初めての感覚。いじめっ子でもいじめられっ子でも無かった俺は、初めていじめっ子の気持ちがわかったような気になって有頂天だった。
「立てよ」
ぴちゃんっ。遠慮なくお尻を叩いてもじもじ立たせる。まだ女っていう存在はエロ本で憧れただけで、同級生には何も感じないと思ってた年だったから。
・・・だめだ。長くなってしまいそうだ。だらだらしてごめん。
邪魔になっても何だから、今後はリク次第で。
ちなみに彼女は可愛くもブスでもない感じ。千と千尋の千尋に体格もこまっしゃくれてるとこも似てるので、今後は千尋って仮称します。この後はちょっと出てくる人も増えるから・・・。
基地の中で立たせ、今度は休めの姿勢で立たせた。前日に考えてた中で一番やりたかった事・・・あそことお尻をなめてみることを実行に移すためだ。
筋張った腕と脇に手を入れ、無理やり立たせる。上半身はともかく、触れた段階での千尋の下半身はがりがりなんかではなく、とても触れてて柔らかかった。
「・・・何するのぅ・・・?」びくびくして聞いてくる千尋。
「いいから、ちゃんと足開け!」しゃがんだオレの目の前で震えながら開いていく。
おしっこ・うんちに関する事って、子供心にやたら興味あるじゃない?
汚いと思いながらも、どうしても興味と興奮が上まって、ぴっちり閉まった割れ目からお尻をむちいって開いてみた。・・・知識なんかないから、あそこが傷口みたいに見えて、なんか触れたら痛そうだ。後、おしっこの穴とうんちを出す穴は認識してた。でも当時はクリとかヒダなんか知らないから、なんかぴらぴらしてんだなって印象以外なにも無かった。
かなり無理に割れ目を開いたもんだから、千尋が泣きひきつりながらかろうじて声に出す。
「汚いよっ・・・痛いよ・・・」
普通なら絶対に触らないところに、この時はむしゃぶりついた。
「やぁぁぁっ・・」
がたがた地震みたいに震える千尋の腰を抑えて、オレは夢中で割れ目に顔と口を押し付けてめちゃくちゃなめた。
さっきの生暖かいミルク臭だけ覚えてる。あととにかく柔らかい。
「気持ち悪いよ・・・離れてっ・・・」
軽く頭に拒否する手が感じられたけど払いのけて夢中で顔と口をこすりつけた。そんな時だ。
足音と土を踏む音と友達の声が聞こえたのは。もう何をすることも出来ずにいきなりボロ布の仕切りが開けられてしまった・・・!
「な・・・何してんだよ!」
「だ、だれ?その子!」
基地仲間でエロ雑誌集め仲間のタカちゃんとシンちゃんだ。慌てて千尋を突き放した。
「・・ゃっ・・」
男だけの約束だった基地の中に違和感のある女の子の声がもれる。もう駄目だって思った。両親もこの友達も、そして千尋って言う玩具も・・・。
冗談で済ませたり、素直に誤るっていう器用な選択肢なんか無いガキの頃。その時の事を考えると今でも嫌悪感がある。でもオレは自分のガキの頃のささやかな立場を守る
ために、千尋を利用したんだ。
「こ・・・こいつ勝手に基地に入ってエロ本みてたスパイなんだ!捕まえて奴隷にしたんだよ!」
学研の科学・学習って今でもあるのかな?あれの教材の中に図鑑があって、そこで見た「奴隷」の項目に妙に引き付けられてた頃。特にガキの頃って、お互いの順番っていうか、身分とか強さの立場にこだわるじゃない。だから、ここぞとばかりにその事を持ち出して見せたんだ。
自分の心の中の引け目を気付かれないよう必死になって。
でも、その心配は無用だった。ひきつるように固まった全裸の千尋に、タカちゃんとシンちゃんの視線がやっぱり固まったように固定してたから。
ここぞとばかりに目の前でやってみせて、奴らにも同じようにさせた。
本当に怖いと、人間って泣くとき声も上げなくなる。
「ひっ・・・はっ・・・」
しゃくりあげるようにタカちゃんやシンちゃんのまさぐられてる時だけ声を上げ、千尋はがたがた震えてるだけだった。
オレは視線を感じるといたたまれなくなってそっぽを向いてた。
目と口を食いしばって、ただされるがままの千尋。
・・・でも、お尻と割れ目にタカちゃんとシンちゃんが指を入れようとした時、
なぜかおしっこをもらして皆で大いに馬鹿にした。・・・今思えば怖かったんだろう。俺達は心を隠すように大げさにはやしたてた。
ちょろっ・・ちょろろっ・・・・しゃぁゃあぁぁぁっ・・・
とても遠慮がちに、彼女の消え入りたいっていう切実な恥じ入りのような音。この静寂と音に飲まれたら、絶対にまずいって思った。良心が咎めるのは、子供心に一番つらい事だから。だから、ひきつりにも似たいやいやする動作すら、俺たちははやしたてたんだ。基地には子供ながらに精一杯集めた物で一杯だったから、使い捨てカメラでばしゃばしゃその姿をとった。現像なんかできゃしない。でも、一枚とる度に崩れていく千尋の泣き顔と力の抜けていく声。あぁ・・ゃ・・・って。
太陽も傾きかけた頃、下半身をうずかせることに飽きた俺たちは、いつも通り並んで連れションしてた。夏の温度だった部屋内には千尋の匂いが充満してしまって、とてもいれたもんじゃなかった。千尋に昨日の下着を渡し、今日の下着とで中を汚水を拭かせた。学校の掃除をサボった罰だなんていって、廊下をふくみたいな四つんばいの格好で、全裸で。
拭いて終わったあと、その下着を着けさせて先に千尋を帰らせてた。タカちゃんもシンちゃんもオレも一切しゃべらない。秘密を共用したときの変テコな俺たちなりの確認作業・決まり事みたいなもんなんだ。
その日から数日は、千尋を呼ばずに基地の改装に夢中になった。変なテンションの高さがあったけど、千尋の話題にはあえて触れない・・・いや出さなかったんだ。皆それぞれ千尋を気にしてた。でもお互いを見張りあうようにツルんでいて、その時間をとれなかったんだ。習い事や塾みたいなのもあるしね。
何度か電話してみようとも思ったけど、前よりも抵抗感が強くて出来なかった。妙な話だけど、タカちゃんとシンちゃんには大事な玩具を取られたみたいな小さな不満を感じてた。変だよな、自分の保身のために千尋をあてがったくせに・・・。
だから学校じゃ、無意識のうちに千尋を目で追うようになっていた。
別クラスでも同じ学年だったから、朝礼や休み時間・掃除の時間なんか視線の片隅で彼女を追ってる。千尋の方も意識してた。目線が会うとすぐに外すくせに、後で恐る恐るオレの視線を伺う。口パクで”言うぞ”っていうと、いつも”ヤダヤダ”ってして、友達に”どうしたの?”って聞かれて無理やり笑顔で取り繕う千尋を見るのが、新たな千尋を発見するようで、しかもその子の秘密を握ってるっていう事実が無性に面白かった。
ほんの数日で、千尋は絵や音楽が得意な子なんだって事はわかった。そういう意味ではよく目立つ子だったんだ・・・。
学校じゃ、人目が多すぎて実際に何かをさせる事は難しかった。裏庭でスカートをめくらせるくらい。その格好のまま、色々活躍してるらしいじゃん?って話したら、脅されてると思ったらしくて何故か謝ってくる。・・・何か様子がおかしい。「
タカちゃんやシンちゃんとは・・・会ったのかよ?」「・・・」
「答えろってば!」
「やっ・・・こうしてただけ!こうしてただけだよぅ!」
ショックだった。オレは手出してないのに、あいつらはオレに内緒で、各々が千尋を呼び出して同じことをしてたっていう。いや、千尋が言わないだけで、もっと何かしてたかもしれない・・・。でも、この事はお互い触れちゃいけない事。確認したいけど出来ない。・・・今思えば意識した初めてのジレンマと嫉妬だったと思う。
今はだいぶ印象が変わったけど、子供の頃 浮浪者って凄く怖くなかった?
何されるかわからない、何言ってるかわからない。怖い者見たさでよくからかっては逃げてたけど、小中学で何人かは実被害にあってた。
それでも、行動力があるタカちゃんと、気弱だけど気のいいシンちゃんとの関係は大切だったから、その日もオレは基地に向かったんだ。まだ誰もいなかった。千尋を呼んでおけば良かったって思ったら、無性におしっこがしたくなって、短パンおろして立ちションを始めたんだ。
そしたら、後ろからいきなり誰かに羽交い絞めにされて、おちんちんを強く掴まれた。スレ違いだから詳しくは書かないけど、もう夢中になって臭くて汚い男の手を逃れて、近くのタカちゃんの家に駆け込んだんだ。
「ゲンゴが出た!」って。ゲンゴってのは、家の学区内をうろついてた浮浪者で、よく子供相手に問題をおこしていた。時々からかってたけど、まさか基地に来るなんて思わなかったんだ。次の日、タカちゃんとシンちゃんは自転車&バットというフル装備で基地に踏み込んだ!オレだけ自転車無かったから走っていったら、そこにはただのガレキだけで基地はもうなかったんだ。
もちろん色んな道具と一緒に、千尋を撮ったあのカメラも・・・
今思えば、大型ごみ置き場だから誰も来なかったわけで、小銭を稼ぐために定期的にくず鉄や中古品を拾いに来てた人たちの中にゲンゴが居たんだろう。基地の中のエロ本もラジカセも何もかも無くなってしまった。
なら次を造ればいい。ここはもう来れないけど、こういう候補地は幾つかあったんだ。その時ハッと閃いた。タカちゃんとシンちゃんに千尋は誰の物かを知らしめ、自らの欲をも満たす方法が。
頭の中に浮かんだのは、図鑑に載ってた、全裸で労働奉仕する奴隷たちの絵・・・そう、今こそ千尋を使うんだ。
「お前・・・ここは俺たちだけの基地だろ?!」
「そ、そうだよ・・・やめた方がいいって・・・」
タカちゃんは本気で引いてたし、シンちゃんはビクビクしてた。でも、最後には渋々了解することは分ってたんだ。もともと親に見つからない楽しい自由な遊び(悪さ)をするために皆で基地を造ってた。第一オレに隠れて千尋にあんな事してんだもん。オレの心みたいに、全裸で手伝わさせるっていう征服心とか女の子の体への興味とか、共犯意識への罪悪感とか色んな欲求が二人とも織り交ざってるのは、手に取るように解ってたから。ずっと一緒の幼馴染だもん。今度は子供心ながらの言いだしっぺの特権って奴を振りかざして、千尋への指示優先権をも押し通した。
子供の頃だったから、Hな雑誌を眺めてる感覚で意味なんかちっとも解ってなかったんだ。知ったかぶりしてたって、雑誌の中でなんで縛ってるのかなんて何が楽しいか全然解ってない。ましてや、あそことあそこを入れあうなんていう肝心な情報は、モザイクと文章規制の影で経験の少ない子供の頭の理解を完全に超えていた。ただ見てると悶々とした感覚だけが浮き上がってくる。本当はいけない事なんだっていう背徳感と抗えない快感への道。でも精通を知らないから、絶対に解決なんかしやしない。どうにも出来ない感覚をもてあまし、千尋への要求はこんな具合にエスカレートしていったんだ。
忘れもしない。夏休み前の学校から早く帰れる日に千尋を呼び出した。
怖いのは通信簿だけで、夏休み前のこの時期は妙な興奮と開放感に妙にテンションが高まってる。その勢いを借りることで呼び出したんだ。
「な・・・なんですか?」
まずスカートめくって、パンツずらすように命令した。「み、見つかっちゃうよぅ」
「バカ。もう皆帰ってるだろ」
しばらく期間が経ってたから、これはオレの中でまだ千尋への力が働いてるか確認するための大事な儀式だったんだ。でもそれは無用の心配だった。キョロキョロ周りを見回しながらそうした千尋は「・・・はい」って、むしろ出来たっていう報告の態度まで取ってみせたんだ。
そうされると、逆にドギマギしてしまうオレ。・・・そうだったんだ。
躍起になって目で追ってってしまったため、千尋もオレもお互いに意識し合ってしまって、いつのまにか「H心を満足させる玩具」から「同じ学年の子」っていう人として認識しはじめてたんだ。「同じ学年の子」がカタカタ震えながらも、じっとオレを見上げてる。キュッと閉まったあそこが、凄く見ちゃいけない物の様な感じがして、でも目を離す事なんか出来なかった。
「・・・今度、また新しい基地を造るんだ。お前、ちゃんと手伝えよな」
「え?わ、わたしが・・・?」
「あ、当たり前だろ?!お前は・・・」
オレの奴隷なんだって言いそうになって慌てて止めた。・・・なんで?
こんなに言いずらくて気まずくなるんじゃないかって気を使う必要がある?
急に腹が立って「うるさい!とにかくちゃんと言うこと聞けよな!おばさんにばらすぞ!」って言ったら「・・・やぁっ!やめてよぅ・・・」周りに聞こえたらって事と、とにかく両親に知られることを恐れてるみたいだった。用件は済んだからそのまま帰ろうとすると、まだ出しっぱなしにして目をつぶってる。
「・・・早く戻せよ、バカッ!」ってその場を走りさった。
今度の基地は、住宅街を眺めることの出来る高台の大型廃物置き場だった。
基本となる大型の木箱を中心にして、かなり大型の物を作る予定だった。
皆モクモクと機材を拾ってきていた。でも気もそぞろだった。千尋が来る約束の時間が迫ってきていたからだ。
千尋は律儀に時間通りやってきた。俺たちを交互に下目で見ながらやっぱりおどおどしてる。気まずい瞬間だけど、言いだしっぺを買って出た以上言わなきゃいけない。オレは千尋にいった。
「ふ・・・服を脱げよ!」
びくっとなる千尋。でも来る途中で十分に誰も居ないのが解ったせいか、おずおずと、でも丁寧に背中に背負うかばんを下敷きにして服をたたんで置いていく。
「ごくっ・・・」思いっきり唾を飲み込む音が出て凄く恥ずかしかった。
でも、それぞれの作業をしてる振りをしてちらちら横目で見た千尋の裸は凄くHに見えた。同級生だって事は皆痛いくらいわかってることだから。
でも靴とソックスも脱ごうとしたので慌てて止めさせた。
「あ、ああっ・・・はいっ」大声にびっくりしたのか、なぜかさっきまで手で隠してた
お腹とアソコを、気を付けしてしまうことで陽光の下に晒してしまう。
「・・・ゃっ・・・」一瞬ビクッと手を戻そうとするも、大声を出されると怖いせいか、オレの方を見ておずおずと手を伸ばして気をつけの姿勢で目をつぶってしまった。
「目つぶってちゃ運べないだろ?ほら、ここの物を基地まで運ぶんだ!」
ついぶっきらぼうに言ってしまうオレ。乱暴に指差した基地の元になる箱を見て理解したのか、おずおずと歩き出す千尋。
「あ、あの・・・お洋服はきちゃ駄目なの?」最後の方はもうほとんど涙声。凄く胸が詰まってタカちゃんとシンちゃんの方を見ると、かわいそう半分期待半分っていう顔
をしてる。「オレのせいかよ」っていう理不尽な怒りにかまけて大声でただ一言「ダメッ!」って言ったら、ぐすぐす泣きながら機材を運び始めた。
・・・セミの鳴き始める草の匂いに、風にのって千尋の牛乳みたいな匂いが流れてきてた・・・。
「・・・ふらふらするなよっ、ちゃんと持てってば!」
ぴちゃんっ。
「あっ・・・痛いよ・・・」
最初のうちは木の枝や手で皆で叩いて運ばせていたけど、次第に本来の目的の基地つくりに皆没頭し始めた。
それでも、わざと千尋を呼んで、わざと一緒に物を運ばせて持ち方を指示する。脇や股を開かせて歩かせたり、胸や股間に押し当てるように運ばせたり。とにかく閉じてる物を開かせる行為に異様に俺たちは興奮してた。その興奮にまかせて基地造りは大いにはかどった。千尋のやや日焼けした所としてない所にじっとり汗をかいてるのを見てドキドキしながら、そんな千尋にいい所を見せようと夢中になっていくうちに、不思議と皆して千尋が裸だって事も忘れて作業に没頭してたんだ。
「・・・やった」
「5代目基地の完成だ!」
夕焼けも迫る頃、基地はシルエットになって俺たちの前に浮かび上がっていた。オレ達は歓声を上げてたけど、ふとその時千尋の方を見たら・・・。
都合よく見えてるなって言われるかもしれない。オレ達から開放されるっていう事でそうだっただけかも知れない。でも確かにその時、彼女は・・笑って軽く手を叩いていたんだ。
笑顔も裸身も割れ目も、夕日に赤く染めて・・・ドキッとした。だって、凄く可愛い顔で笑うんだぜ・・・?
何だかぐーーっと込み上げてくる物があった。何なんだろう?この気持ちって。もう、千尋をどうにかしようなんて気持ちはすっ飛んでしまってた。
シンちゃんもタカちゃんも、そしてオレも、千尋も笑顔。なのに、それなのに!
・・・今思うと、いや、当時だってよく考えれば、彼女にとっては屈辱にしかならないような行為なんだ。でも、本当にその時のオレ達は、無意識の内に千尋を、仲間とはいわないまでも、一緒に同じ気分のいい雰囲気を味わいたいって思ってただけなんだ。・・・そう、仲間同士の秘密を共有した時の「あの行為」に彼女も一緒にやろうと思い立ってしまったのだ。
基地は結構しっかりした造りだったから、オレは無言でその上に立って、短パンのジッパーを下ろした。タカちゃんもシンちゃんも解ってるから、すぐに隣に並んで立って同じようにする。
「きゃっ・・・」下から見上げる形でいきなり3人のチンチンを見せ付けられる形になり、びっくりする千尋。でも何かを感じたのか解らないけど、真っ赤な顔で何とか俺たちの下半身に自然と目がいきそうなのを抑えて、オレ達の顔を見ようとする。「・・・んっ!」顎をしゃくって同じように並んで立つよう命令する。これはしゃべっちゃいけないんだ。
他の二人も同じように命令する。おろおろしながらも、よっこいしょっと上がってくる千尋。足を屋根にかけた時、無防備な割れ目が眼前に晒され、オレ達はなぜか立っちゃいそうになるチンチンを抑えるのに必死だった。
おろおろしながら並んで立つ千尋。それを待ってたかのように、立ちションを始めるオレ達。
「え?・・・え?・・・え?」泣きそうな顔でオレを見る千尋。また顎をしゃくるオレ。無言でプレッシャーをかけるタカちゃんとシンちゃん。目を堅く閉じて、しゃがんで、また立って、またしゃがんで・・・・ゆっくりと立ち上がりながら、千尋も恐る恐るおしっこを垂れ流し始めた。
「ちょろ・・しゃわ・しゃああ・・・」
割れ目から結構勢いよく出てくるもんだなって思った。うまく立ってできないため、ふとももを伝って落ちてくる。それを見てオレ達も続きを始めたんだけど、ちんちんが立ってしまって、俺たちもうまくおしっこ出来なかった事は、目をつぶってた千尋には内緒だ。
おしっこしておわってから、オレ達は誰ともなく基地完成を祝う歓声を上げた。その場でしゃがんでぐずりながらハンカチでおしっこを拭いてる千尋も、に・にこぉぅっ・・・って感じで泣き笑いみたいな顔になった。その時始めて気が付いたんだ。良かれと思ってやった事が千尋にとっては凄く恥ずかしかったんじゃないかって。・・・セミの鳴く夕焼けに皆何となく言葉を失って、その日はそのまま帰り支度を整え、皆で山を降りたんだ・・・。
基地は完成したから、次の日に千尋を呼んでるつもりは無かった。けど、なぜか彼女は誰よりも早く基地に来て待ってた。あの泣き笑いみたいな顔ででも「にこおっ」って感じの笑顔で出迎えてくれたんだ。それからは別に何をするまでも無く一緒に基地で鬼ごっこをしたり、本を読んだり、お菓子を食べたりした。
もう千尋を裸にしたり、スカートめくったりって気にはとてもならなかった。千尋も二日目からは、手造りのクッキーやケーキを持ってきてくれるようになった。そんなこんなで、夏休み初日までは瞬く間に過ぎた。でも、こんな良い日は続かない。終わりは突然に、台風のようにやってきたんだ・・・。
この日は皆でエロ本を呼んでいた。顔を真っ赤にしながら、それでもまじまじと覗き込む千尋。「興味あるんかあ?」「・・・」無言でこくりと頷く。
モザイク越の女性のアソコを見せて「ぜんぜんお前と違うよな?」っていったら、「え?そうなの・・かな?」といって、その場でパンティをずり下ろした。
びっくりした。でも本と真剣に見比べる千尋とオレ達。やがて、千尋が小声で遠慮がちにつぶやく。
「私も・・・見たいな?」・・・千尋への負い目もあったせいか、見上げるように言われちゃうとオレもなんか見せなきゃいけない気になって、短パンをずり下ろしてチンチンを千尋の前にさらしたんだ。
お互い下半身を晒してる子供二人に、エロ本もってまじまじ見てる子供二人。
基地の中だから出来るとても恥ずかしい事。でも、その瞬間「バァアンッ!!」
凄い勢いで扉が開かれて、いけない事をしてるオレ達を責めるように陽光が差し込んできた!!凄く大きな黒い影が、そんなオレ達を見下ろしてた。
「・・・こぉの、エロガキどもが・・・」臭くて汚くて凄くいやらしい笑いを浮かべ、あのゲンゴが立っていた。
「親に言われたくねえだろ?オレが教えてやる・・・!!」何も考えられえず、皆してガタガタ震えだした。
基地中の道具をめちゃくちゃにしながら、凄い勢いで俺たちの方に襲い掛かってきたんだ。
基地の中は、オレ達子供が中座できる位の高さと、4人が正座して少し物が置ける位の広さ。だからゲンゴが入って来た時は入り口が防ぐ形で四つんばいになって入ってきた事になる。「きゃっ・・・」下ろした下着に足をとられ、コテンッとお尻をつく千尋。「つかまえたあっ!」ゲンゴが伸ばした手が真っ先に千尋の細い足首を片方掴み、下着を剥きそのまま高く引き上げる。そのままゴザの上に放りだされる形で千尋は仰向けに持ち上げられ、ワンピースが大きくめくれ、下半身から胸元までの白い裸身が露になる。その勢いでオレ達もバランスを崩しバタバタと転倒。覆いかぶさるようにゲンゴが来てオレを残った手で小脇にかかえるように持ち上げ、チンチンをなでまわすように股間を捕まえる。
「はんっ!」鼻息も荒くそのまま千尋の片足を上げたまま股間にむしゃぶりつくゲンゴ。だが「やああだあっ!!!」「はなせ、はなせってばーっ!!」オレ達4人がめちゃくちゃ暴れて前のめりにバランスを崩すゲンゴ。
「にげろーっ!」
ケンちゃん、シンちゃんが真っ先に隙間を見つけてゲンゴを乗り越えて出口に向かう。
「やぁっ!やぁああああっ!」ばしばしと倒れこんだゲンゴの頭あたりを千尋と一緒にめちゃくちゃに蹴飛ばし、手をかいくぐってオレ達もそれに続く。
「やぁっ、やぁっ!!」ゲンゴの服に足をとられまごつく千尋。
「はやくっ!」がつっと手を掴んで、半ば引っこ抜くように千尋と外に転がり出る。
目の端ではタカちゃんとシンちゃんがけっつまずきながら自転車で山を走り去る姿を確認。・・・き、きたねえっ!絶望感にほぼ等しい情けなさ・悔しさが心を満たす。そう思いつつも土をかきかき逃走。千尋を引っ張る腕が重い。
「おらあ!まちやがれえっ!」基地やゴミ捨て場から物を拾い、びゅんびゅん投げてくるゲンゴ。幾つかオレにも千尋にも当たるけどそんなことで足を止めやしない。
「はぁっはぁっ・・ひぃっ・ひぃっ・」息を切らせ涙を流しながら、もつれるように細い木陰の道を下町向かって転げ落ちるように下半身を剥きだしにして走る!
この時は気にしてなかったけど、後で、ゴミ捨て場に危険な物があったらやばかったろう。特に千尋が。ごみや木の枝でたくさんの擦り傷や切り傷を造りながら、大声を上げて迫ってくるゲンゴから少しでも離れようと必死に走る。時々手を掴まれたり上着を持たれたりしてもかみついて、ひっかいて少しでも細い道へ道へ!
ばきばきばきいいっ!!「ガキどもぉっ!!」飛び掛るように俺たちを抱えるように飛び込んでくるゲンゴ!やばい!やばい!やばい!オレと千尋は押し付けられるように抱きかかえられ、ごろごろと地面を転がされた。はむっ・・しゃぶるうっ・「うわああああっ!!」「やぁああああっ!!」俺と千尋は抱えられ、なめしゃぶられ、もまれ、もう何がなんだかわからなくなった。
正直この段階でフラッシュバックのようにイメージが残るだけで正確な時間経過がわからない。ばらばらにしたカードみたいなものだ。その時のイメージだけを書いてみる。順番は不明だ。
「乳首をかまれて“痛ぁいっ!”って叫ぶ千尋」
「臭い息と唾の口を押し付けられ嫌悪感で吐くオレ」
「お互いの体がぶつかりあうように離れる俺と千尋」
「人形みたいに千尋の足を掴んで股間にむしゃぶりつくゲンゴ」
「普段なら飛びおれない崖を転がり落ちるオレ」
「二手に別れたオレと千尋」
「木の枝をゲンゴに突き立てる千尋」
「腹ばいになった千尋のお尻にむしゃぶりつくゲンゴ」
「チンチンを捕まえれ痛いながら引き離す俺」
・・・気が付いた時、そこは異様なまでに静かだった・・・。
気が付いたら、俺は下町の道路に一人ぺたんと座り込んでいた。
チチチ・・・
さっきまでの喧騒が嘘のように、空は青く入道雲は白い。ゲンゴの気配も無い。
ふうぅぅぅっ・・・・と深く息をついたら、呼吸がおかしくなってひっくひっくと泣けてきた。泣けてきながら考えた。
どこでゲンゴを振り切ったんだ?
飛び降りたときか?転がったところか?二手に別れたところ・・・
ち、千尋は?!ばぁっ、と辺りを見回したけど、何の気配もない。やばい!・・
でもその時、俺の心の中で最も一番やばい事に気付いてしまった・・・。
―――なぜ、二手に別れた?
それはゲンゴから少しでも逃れる可能性を増やすため。
―――でも、それは誰のため?
・・・オレはガタガタ震えだした。
オレは、オレのためだけに千尋を一人ぼっちにしたんじゃないのか?
違う!・・・いや、正直、そんなこと考える暇なんてなかった。
いや、それどころか・・・
―――オレは、自分が助かるために、
ゲンゴの方に、服のめくれあがった千尋を押し出したんじゃないのか?
記憶が定かじゃない。でもそんな自分に自信が持てない。千尋を助けにいかなきゃいけないっていう、TVヒーローに埋め込まれた陳腐な正義心じゃ、本能的に逃げる心を抑えられない。そこまで失態を自ら演じてしまって、今更助けになんかいけやしない。いいや、それすらだって言い訳だ。・・・ああ、そうなんだ。オレは怖くて、オレよりも弱い千尋を助けに行く気さえも起きないんだ・・・そう思ったら、自分が情けなくてわんわん泣いた。「・・・―――っ!!!!」急にオレを呼ぶ声がした。
ゲンゴか?って思って心が震えた。そんなオレを真正面に見据えて、タカちゃんとシンちゃんがいきなり泣きながら謝ってきた。
「ごめんっ!」「ごめんっ!」「オレ達、逃げちゃったけど、これじゃあいけないって戻ってきたんだ!!」「千尋を助けに行こう!!」
泣けた。凄く。さっき裏切り者って思った自分が凄い恥ずかしかった。こいつらの方がえらいよ。だって千尋を助けに行こうっていうんだ・・・この時、始めて幼馴染じゃなくて、こいつらは親友だって思った。そう思ったら勇気が出てきて・・・ぐしっ・・ともらったタオルで涙を拭いて、タカちゃんが洗濯するために持ってた短パンを借りてフルチンを隠した。そのまま大急ぎで基地まで戻った。当たり前だけど誰もいない。
そのまま断片的な記憶を頼りに、荒れた下町までの道を追っていく。・・・いない。
また戻る。・・・いない。また辿る。・・・いない。さっきまでの騒ぎが嘘のように、ゲンゴも千尋もいなかった。基地に戻って自分たちの名前の入った物をすべて回収した。
証拠を残さないためだ。でも千尋の下着はなかった。あったのは、千尋の持ってきてくれたケーキやお菓子を入れてくる、名前入りの食器入れだけだった・・・。
もう夏休みに入っていたから、次の日学校で確認するってことは出来なかった。勇気をしてした電話はすべて留守電になっていた。3人で食器袋を届けにいっても、家には誰もいなかった。基地で千尋を待っていても、どんどんオレ達の心は重くなる。しだいにその空気に耐え切れなくなり、5日目には千尋を・・・その思いを振り切るかのように、オレはタカちゃんとシンちゃん同様に自転車を強引に手に入れ、補助輪無しで乗るように特訓した。この前できた擦り傷が癒える頃には、自転車で転んだ傷が出来、それがかさぶたになる頃にはオレ達の活動範囲は格段に広がった。もう基地造りなんていうガキの遊びなんかしなくてもどこにだって行ける。こうしてオレ達の低学年最後の夏休みは終わった。明日はいよいよ新学期・・・全校朝礼で千尋の事がわかる。
全校朝礼は、雨が降っていたため体育館で行われた。タカちゃんとシンちゃんとオレは、おなじクラスで並び順も近かったから、口真似とボディランゲージである程度なら静かに会話できる。千尋は、オレたちのやや斜め前に立っていて、じっと先生の話を聞いている。所々に絆創膏を張り、左手二の腕に軽く包帯を巻いていた。
朝礼も終わりになり、最後に校長先生から全校生徒への注意が発表された。
「あー、最近、学校の側に怪しい男がうろついているとの情報がありました。出来るだけ一人で行動せず、暗くならないうちにお家に戻るように」
ざわああっ・・・・ざわ・・・ざわ・・・・ひそひそ話がそこらでされる。
基本的にゲンゴの事だって皆わかってた。問題は今まで生徒や親の間で問題になったことはあっても、学校がそこに絡んでくることはなかったからだ。
つまりこれは、よっぽどの事が起きたんだってことになる。オレ達は素早く会話を交わした。(お前言ったのか?)(いうわけないじゃん!)(じゃあ・・・千尋が・・・)見ると千尋がうつむいている。髪の毛が邪魔で表情がわからない。・・・確かに当時の俺達はガキだ。セックスなんかしりゃしない。でもオレ達にも直感でとあるイメージに結びついてしまった。
・・・千尋はきっと、エロ本みたいな事をゲンゴにされたんだ。だから学校が・・・。それをされた子がどれだけ可愛そうで屈辱かは子供ゆえに特に肌身にしみる。その時、千尋がふと何かに気付いてはらっと髪の毛を落とした。そのままこっちを見ようとする・・・朝礼がおわったのを言い訳に、俺達は教室までダッシュした。今更どの面さげて千尋に会える?
低学年が終わり、中学年が終わった。俺達は未だに千尋とは顔も会わせていない。随分経つけど、この学校に居る限り常に根底に彼女を気にしてる自分がいる・・・。
・・・思えばあれから色んな事があった。自転車で行動範囲を増やし、隣学区の奴らとの抗争、スイミングスクールでの競い合い、塾で出来た他の学校との友達との交流・・・それぞれ面白いこと・Hな事はあったけど、それはまた別のお話。
タカちゃんとシンちゃんは相変わらず一緒で、おなじ悪さ・遊びをする悪友と化している。でも、あいつの話だけは一切しなかった。皆それぞれ心中に辛い思い出として残っていたからだ。
高学年になって、始めての秋。晴れた空の下で、俺達の学校では運動会が開かれていた。俺は中距離走で一番を取り、タカちゃんやシンちゃんとハイタッチして一番旗を放送受付に持っていく。旗と交換で、ノートやシャーペンがもらえるんだ。その旗を渡し、少し待つように言われたから、校舎によりかかるようにその場でしゃがんで一息ついた。
「ふうぅっ・・」
「お疲れ様、これ、景品ですよ?」
「あ、ありがとー」
ぶっきらぼうに顔も見ず受け取ってそのままうなだれる。オレは典型的なな思春期時「女なんて」派・・・硬派気取だった。あんな事もあったからね。
とすっ・・・ふと横に誰かの存在を感じた。甘い匂い。さっきの受付の子が校舎にもたれかかってるらしい。「・・・何だ?」ふと見上げると校庭の競技を見てる女の子の顔。「・・・い?!」思わずまじまじと見直した。匂いも昔とぜんぜん違うから解らなかった。そこに立ってたのは千尋だった。約二年ぶりの再会。でもこの体制じゃ逃げることもできゃしない。第一この状況で逃げたくも無い。あれからオレは、少し意地を張ることも覚えたんだ。
ただ黙って足をぷらつかせる千尋。何か言って欲しそうな、責めてるような・・・。ただ黙ってるのも何だから、オレは思い切って聞いてみる事にした。
でも今まで逃げ回っていたんだから簡単に長い言葉なんか出やしない。
振り絞るようにいった一言。それは・・・「大丈夫だったのかよ?」これだけだった。一瞬背筋を伸ばした千尋は、ゆっくりとオレの方を見下ろす。じっと目を見つめ返す千尋。照れくさくなってオレはそっぽを向いた。
「・・・気にして・・・たんだ・・・」ぼそっと言う千尋。
「そりゃあ・・・」お互いに言葉を無くす俺達。すると、ずるううっ・・と千尋はしゃがんで、体育座りで俺の横に腰を下ろした。
・・・なんなんだろう、この空気は。運動会の喧騒なんか全然聞こえなかった。ばくばくと心臓がなるのを抑えるだけ。でも様子がおかしかねえか?
当時は一言で言い表せなかったこの空気。今、この2ちゃんねるだから言える。すなわち、「まったり」。
こてんっ、と体育すわりした両腕に首をかしげるように頭を乗せ、口元を隠してじっと俺を見てる。腕に隠れた口元。なんだか笑っているようだ。
「心配・・・してくれたんだ?」「・・・あ、当たり前だろ?」
「・・・大丈夫だったよ?私・・・」ばっと慌てて千尋の方を見る。
「大丈夫」小さい声でもう一言。もうお互い大人の授業は済ませてる。
その事だって解ったら顔が急に熱くなってきた。
手をさすりながら千尋はこういっていた。オレが千尋と手を離した所は、林の中のくぼみの中だった。手を変についてしまったけど、ゲンゴはそのままオレを追いかけていったらしい。「傷、残っちゃったけど・・・」照れくさそうに笑う千尋。その後、じっとオレを見上げて次の言葉を待ってる。
・・・ちょっと待ってくれ、俺はそんなにいい奴じゃない。お前をいたずらして、保身にためにどんな酷いことをしてきたか。ゲンゴの時だって・・・今なら嘘をついたりも出来るかもしれない。逆に謝って誤解を解いているかもしれない。でもそんな知識や経験なんかまだ無い。だから出来る事は言葉も無く彼女を見ることだけだった。
「千尋ーーっ!!」「はぁーいっ!」すくっと千尋が立ち上がる。そのまま正面の子に今行くって手を振った後、後ろも見ずにこう言う。
「また・・・呼び出す?」「・・・ばか」思わず突っ込み返すオレ。
そのオレに振り返りながら「ふふっ」って笑って、とんとんとんっと戻っていく千尋。・・・オレは心から安心した。この学校で始めて味わった開放感・・・オレは千尋に救われたんだ・・・。
塾も始まって、クラブ活動もある。意外と高学年は忙しい。早い奴は人生を決めかけちゃう奴だっている。そんな忙しさにかまけて、また硬派気取りだったことも災いして、千尋と軽くあいさつする以外は話しする機会に恵まれなかった。2月14日には下駄箱に小さなチョコレートケーキが入ってた。基地で食べた奴の立派なやつ。タカちゃんとシンちゃんに隠れてもって帰るのが大変だった。それ以降、あまり彼女を見る事がなくなった。
おかしいと思って調べたのは学生服の詰襟きて出た卒業式の日。最終学年時には転校していったらしい。
タカちゃんとシンちゃんとで卒業式の後 彼女の家に行ってみた。それはあの基地のすぐ下の町・・・。すぐに家に逃げこんだんじゃんか、って言ってゲラゲラ笑いあった。
おしまい。
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