どうしても許せなかった。
俺は嫁の制止を振り払って、清水に電話した。
会って話したいと。
意外にも清水はあっさり了承した。
すぐにでも奴の横っ面に一発食らわせたい気持だったが
さすがに夜遅かったので、翌日、仕事が終わってから待ち合わせた。
居酒屋でする話でもないので、何処か落ち着ける場所が良いと言うと
清水から横浜のホテルを提案された。
横浜だったら新幹線や特急を使えば、そんなに掛らずに着く、
俺は不覚にも、思わず「ありがとう」などと言ってしまい激しく後悔した。
翌朝、不安そうに俺を見つめる嫁の顔を見るのが辛かった。
昨晩ずっと泣いていたのを知っている。
真っ赤な目をして心配そうに俺の顔を覗いてくる。
「お願いだから、危ないことはやめてね」
「ああ、分かってるよ。1発だ、1発だけ殴る。それで終わらせる。」
「馬鹿なことはやめて!アナタが怪我でもしたらどうするの!」
「大丈夫だよ(笑)馬鹿だな」
俺は嫁の顔を見ているのが辛くて、逃げるように家を出た。
仕事は思うようにはかどらなかったが、定時に支店を出て新幹線に乗り込んだ。
新幹線に乗っていると、計ったかのように嫁からメールが来た。
(危ないことは絶対にしないでね! それから、ホテルを出たら電話してね。)
(分かった)
(絶対よ)
それには返信せずに、なんとなく携帯に入っている写真を眺めた。
嫁の写真が何枚もあった。
なぜだか写真に写った白い横顔が妙に遠く感じられ、
自分の妻であるのに他人のように客観的に嫁の写真を見ていた。
綺麗だなと思った。
どの写真の嫁も薄化粧なのに、透き通るように肌が白い。
眉はくっきりとしていて、長く濃い睫毛の下から現れた瞳は大きく黒目がちで
それとは対照的に鼻と唇は上品で奥ゆかしく小作りだ。
『非常階段でしゃぶらせて我慢したよw」』
『肌なんかも真っ白すべすべでさぁ。最高に気持ちいいぞ由佳の泡踊り』
ふいに清水の下品な言葉が頭に浮かんだ。
同時に、嫁が唇をすぼめて清水の股間に顔を埋める姿や
身体を泡まみれにして清水に奉仕する姿が次々に浮かんできた。
改めて、許せないと思った。
嫁を力づくで犯しておきながら、元彼、気取りで同期達に嫁の痴態を話しやがって。
ホテルに着くと、昼間メールで指定された部屋に直接上がっていった。
階数から高そうな部屋だなと思ったが構いやしない。
約束では着いたら電話することになっていたが、下手に迎えになど来てもらって
人前で殴ってしまいでもしたら、大事になってしまう。
俺はそれほど、怒りで震えていた。
部屋の前でチャイムを押すと、すぐにドアが開かれた。
清水のふてぶてしい顔を見た瞬間、俺は我を忘れて殴りかかった。
顔面に一発見舞ってやると、清水は顔を抑えながら部屋の中へ逃げていった。
すぐに追いかけて、襟首を掴んで自分の方に引き寄せてから腹に一発入れた。
どうにも止まらず3発目を行こうとした瞬間、背後から手首を掴まれ、そのまま、捩じり上げられた。
物凄い力だった。なにより相手の腕の太さに驚いた。
うかつだった、清水以外にも人がいたのだ。
「いってぇ・・・一発は予想してたけど、2発目は予定外だった。」
「放せ、放せよ!俺はまだ気が済まない!放せ!」
俺は清水を睨みつけながら暴れた。
しかし、背後の男の力が半端なく強くて、どうにもならなかった。
そのうち、捩じり上げられた手首に金属の輪がガチャリと嵌められ、
あっという間にもう片方の腕も後ろに回され、ガチャリと嵌められた。
手錠か?もしかして、こいつ刑事か?現行犯逮捕?
冷や汗が流れた。
「お前ら、絶対に手は出すなよ。あ!足もダメだぞ」
「はい、分かってます」
「清水さん、痛そうw 木島、そいつ暴れてるから足もふさいじゃないよ」
もう一人いる?き、木島?誰?
?だらけの俺に、清水がやっと気付いた。
「ああ、こいつら俺の部下。刑事とかじゃないから心配すんな」
「ただ、一般人でも逮捕できるって知ってるよな? ああ怖かった殺されるかと思ったよw」
言いながら、清水は俺のジャケットの内ポケットを探った。
「あった、あった」
清水が取り出したのは俺の携帯だった。
「じゃべると痛え、口の中切れてるわ」
言いながら清水が電話をかけ始めた
「残念w、俺だよ」
「ああ、ここに居るよ。ほら」
言いながら携帯が耳に押し付けられた
「もしもし、アナタ!アナタなの?」
それは紛れもない嫁の声だった
「ああ、俺だよ。」
「良かった、無事なのね!」
「ああ。」
「はいここまで」
耳から携帯が離され、
木島と呼ばれる男がガムテープを持ってきて
突然、口をふさがれた。
「こいつに、いきなり殴られてさあ、逮捕したんだよね。」
「一般人でも逮捕できるんだぜ?知ってた?」
「まあまあ、落ち着いて話を聞きなよ。」
「警察に渡してもいいし、痛めつけても良いんだけどさあ」
「一応同期だしね、許してやろうと思うから、迎えにきてよ」
「そう。横浜。近くに来たら、こいつの携帯に電話して」
「うん、じゃあ。まあ急がなくていいから、気を付けて来てくれ」
清水は電話を切ると他の二人にニヤけた顔を向けた。
「来るってさw」
「おお!まじっすか」
「こいつは、どうします?」
「向こうの部屋に転がしとけ」
この部屋は、ふたま続きになっていたのだ。
俺は木島と呼ばれる大男ともう一人、佐藤と呼ばれる小男によって隣室に運ばれた。
床に転がされて、芋虫のように動いていると。
「このままじゃ、ちょっとヤバいかな」
「そこに座らせよう」
いったん床に転がされたと思ったら、今度は一人掛けのソファに座らされた。
後ろ手に手錠を掛けられているため、体重がもろに腕に掛って痛かった。
身を捩って暴れていると、ソファの周囲を囲むようにグルグルとガムテープが巻かれ固定されてしまった。
作業が終わったのを見計らったように清水が現れた。
清水を目の前にすると、どうしようもなく胸がかき乱され、俺は暴れた。
「ん????ん????!」
「いいね。ここなら、向こうの部屋の様子も分かりやすいだろ」
「清水さん、やっさしい」
「まあな。」
言いながら清水が俺の耳元に顔を寄せてきた。
ヤ二臭い息がかかり鳥肌がたった。
「殴られた分は、奥さんに、たっぷり償ってもらうから、安心しなw」
「ん????ん????!」
な、なんだと!
俺は夢中になって暴れた。
腕一本動かすことはできなかったが、なんとかしようと必死で暴れた。
しかし、時間は虚しく過ぎて行った。
隣の部屋からはAV女優の喘ぎ声が艶めかしく聞こえていた。
ちょうど2作品目のAVが佳境に入った頃
聞き覚えのある着メロが男優の下品なセリフを打ち消すように鳴り響いた。
すぐに佐藤が品のない顔を覗かせた
「奥さん横浜に到着したど?♪」
「あんたも暇だったろう?清水さんに言われたから、仕方ない。貸してやるよ」
言いながら目の前にノートPCが置かれた。
「AV見るか?」
俺は佐藤を睨みつけてやった。それくらいしかできる抵抗はなかった。
それから少しして
清水が嫁を伴って隣の部屋に入ってきた。
ほぼ同時に、ノートPCに映像が映った。
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