『公開処刑』
見せしめなどの為に公開で行われる処刑。
これが本来の意味だろう。
だが、この街の不良達の間では、全く違う意味で使われていた・・・
その意味を、不良とは縁のない俺も知ることになった。
品のない音楽が、せわしなく流れている。
50人は入れるだろう店の中には
街の主だった不良達が一同に会していた。
「今日は凄いな」
不良の一人が周囲を見回しながら言った。
何が凄いのか?初めて来た俺にだって分かる。
不良達に混ざって真面目な中高生までが多く居るのだ。
皆一様に、部屋の真ん中に拵えられたステージをそわそわしながら見つめている。
今まで、どれだけの女性が、そこで屈辱の涙を流したのか、俺には分からない。
だが、次に誰がそこで涙を流すのかは、分かっていた。
昨日、ドレスを見せられた時、すぐに『似合わない』と思った。
ボディラインがはっきり窺えるドレス・・中学のOBである大久保の趣味だという。
思わず憎らし気に大久保の横顔をちらっと見た。
たったそれだけで、俺はぶるっと怖さで震えてしまった。
不良どうしの喧嘩で、相手に大怪我をさせて少年院に入っていた大久保。
この野蛮な先輩の名は中学校でも有名だった。
「大久保先輩が呼んでいる」そう言われれば、
この街で「嫌だ」と言える中学生など居るはずもない。
俺が大久保のバイクを壊したというのが奴らのシナリオだった。
「お前も、俺に恩を売っておいて損はないだろ?
それとも、俺のこと舐めてんのか?」
びびってちびりそうになりながら返事を渋る俺に、
大久保はそう凄んで見せた。
「別に、無理やり突っ込んでも、いいんだけどよお
あれだけの美女に怪我でもさせたら可哀想だろ?」
「そ、そんな・・」
「はっきり返事をしろや!
育ての親の方もなかなか綺麗らしいじゃん
なあ、村松ぅ」
「はい、授業参観で見たことありますが、相当な美人ですよ」
「仲間内じゃ、年増好きも居るからなぁ
なんなら、そっちも攫ってきて輪姦してやってもいいんだぞ!」
俺は嫌な記憶を振り払おうと必死に頭を左右に振った。
そこへ村松が勢い良く入ってきて大声を上げた。
「大久保さん、お待たせしました!」
大久保は強面を崩して喜色満面で、立ち上がった。
他の不良達は、黙って入口の方へ顔を向けただけだ。
だが、それもほんの一瞬だった。
村松に続いて入ってきた紗季を見て、面白いように
その場の全員が一斉に立ち上がった。
「すげえ綺麗なお姉さんじゃん」
「顔ちいせえ、マジで美人だよ」
「噂以上だな、まじすげえ、俺こんだけ綺麗な女、初めて見たかも」
「さすが、大久保さんが目を付けただけのことはあるな」
「むしろ大久保さんが、すげえw」
先輩達の喜び様に
村松は小鼻を膨らませて得意そうに胸を張った。
「顔も綺麗ですが、こっちの方もなかなか」
言いながら、村松は紗季の上着の前を思い切り広げた。
「おおっ!ウエストがあんなに細いのに、胸がでけえ!」
「すげえな、おえ、清楚な顔に騙されちゃいかんなw」
男たちは、色めきたった。紗季は、一応上着を羽織ってはいるが、前のボタンは全て外れており
その下には、予想通り、あのドレスを着せられていた。
身体にピッチリとフィットした真っ赤なドレスは
さらに言えば、胸やら脚の部分に大胆なスリットがいくつか入っていて
男たちの露骨な視線が集中していた。
普段大人しめな服しか着ない紗季には、明らかに合わなかったが
不良達には大受けの様だ。
大久保はいそいそと紗季の傍へ行くと
不良仲間に見せつけるように我が物顔で肩に腕を回した。
そして何事か囁く。
紗季は一瞬、何を言われたのか分からない、という風に瞬きした後、
俺の方へ視線を向けた。
「ど、どうして?」
唇が明らかにそう動いた。
驚いて目を見張る紗季の耳元で大久保はまた何事か囁く。
紗季ははっきりと表情を強張らせた。
そして、なんと!
おもむろに上着をバサッと脱いだ。
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