06月8

ダンディなおじ様

先々週日曜日、彼女をデートに誘うと用事があるからと断られ、暇を持て余した俺は
来週にせまる彼女の誕生日プレゼントを物色しに、一人で出かける事にした。
指輪かネックレス、服がいいかとあれこれウィンドウショッピングを楽しんでいると、
ガラス越しに彼女の笑顔が。一声掛けようと店内に向かう途中で、
その隣にいるのがスーツを纏ったダンディなおじ様が彼女の腰に手をまわしているのが見えた。
こいつぁあスクープか!?と思い、俺はスパイにでもなったつもりで二人を尾行。
ホテル街へ寄り添って向かう二人。ホテルへ入る二人を目の当たりにして、軽くショックを受ける俺。
あのおじ様は、きっと彼女の叔父様なんだと思いこもうとしてたけれど、浮気確定。
俺は彼女のプレゼントにあてるつもりだった金で、カメラのキタムラで、
念願の一眼レフデジカメと望遠レンズを購入。カメラとレンズを入れるバッグはおまけで貰えたw

向いのホテルへ向かい、現場の見える部屋を物色。
一人でホテルへ入り、窓を少し開け、カメラを構えひたすら時間が過ぎるのを待つ。
途中、何枚か自分のチンコを試し撮り。

そして待つこと2時間。二人は出てきた。
彼女の方からおじ様へ抱きつき、熱いキス。
外でそんなことできる子じゃなかったと思ったのに…
つか、俺が外で冗談で乳触ったらすげー激怒してきた彼女なのに、おじ様にはキスを許すなんてと、大いに嫉妬。
キスシーンも抱きついてるシーンもしっかりとデジカメに収めましたよ。
すかさずチェック。ばっちり。しっかりドアップで二人が特定できるほど写ってる。
チンコで試し撮りしたのがよかったのだろう。
その後俺はホテルのテレビでエロ番組見てひとりでオナニーして、大人のお城を出た。
そして俺は、念願のカメラを手に入れた嬉しさから、いろいろな写真を撮ろうと、
近くの公園に向かった。接写モードで花を撮ってみたかったんだ。
花や小鳥、風景を撮りまくって、写り具合を確かめると彼女のキスシーンが。
少しへこみながらも花を拙者しまくってたら、後ろから子供の声が。
「おじちゃん、なにしてるの?」と。おいおい、俺はまだ21だぜ?
とつっこみたくなったが、普通に写真を撮ってるんだよと女の子に答える。
すぐ後ろにいまどき見たことない白のワンピースを纏う素敵な女性が。
ひと昔前のセレブなお嬢様って感じの人。
女の子の母親らしい彼女は、お兄さんの邪魔しちゃいけませんよと微笑みかけている。
女の子は「はーい」と、とてもいい返事をして、母の元へたたたと駆けていった。
母は子供に「もうすぐパパが来てくれますからね? 一緒にお昼しましょうね」と言っていた。
この時点で、時間は3時過ぎ。ずいぶん遅い昼食だなと思っていたら、
オーイと渋い声で寄ってくる男性が。俺固まる。彼女の不倫相手のおじ様ではないか!

仲睦まじい親子の後姿をひっそりとカメラに収めてみた。
今日で一番いい写真が撮れてしまった事に自己嫌悪。

その後、俺は親子をストーキング。男は大きなビルに入って行き、母子は、「お父さんがんばって」と、別れた。
俺はストーキングターゲットを親子へ変更。
一度顔を見られてるから、もしかしたら通報されるかもというドキドキ感がたまらなく気持ちよかった。
彼女は俺と出会った公園に戻り、近くのパーキングへ向かった。
やっべ、車での移動だ! 見失うとあせった俺は、すぐタクシーを捕まえ、
公園Pの出口付近で先回りして待機。そして後悔。
親子の乗る車が何なのか見てなかったので、遠くから見てるだけじゃ特定できない!
ツメの甘さを痛感しながら、とりあえず一番最初に出てきた車を追ってと運転手さんに言った。
怪訝な顔をし、やっかい事に巻き込まないでくださいよと言いながらも、
目が一瞬ワクワクの輝きを放ったのを俺は見逃さなかった。
出てきた車を追い、信号待ちで横に並んでもらう。ビンゴ! 親子の車だ。
俺は運転手さんに「気づかれないようにね!」って念を押した。
運転手さんは「浮気の調査ですか?」とか興味深々に聞いてきたけれど、
守秘義務ですので言えないんです、すみませんと言うと
少し興奮ぎみに「まかせてください!」と。俺もちょっとなりきってて楽しかったw

20分も車を走らせてると、閑静な住宅街に。車通りも極端に少なくなり、
これは尾行が気付かれるかも…と、心配したけれど、心配は要らなかった。
親子は特に寄り道をすることもなく、家の前に車を止めた。
運転手さんには怪しまれない様、通過してくださいとお願いし、
少し行った所で止めてもらい、1万渡して、しばらく待機してもらうように頼んだ。
なんとなく家の周りに塀がずっと続くほどの豪邸かと勝手に思い込んでたので、
意外と普通の家で拍子ぬけ。土地にして30?35坪ってとこだろうか…
まぁ、普通の中流階級ちょい上ってとこだな。
下流の中あたりにいる俺からしたら、それでもうらやましいが…
とりあえず住所を写真に収め、今日は帰る事に。
家に帰ってPCに取り込み、写真をプリントアウト。
あと、接写した花を壁にぺたぺたしてみた。
彼女からメールが来てた。暇なら今夜会わない?と。
俺は今日カメラ買って、いろいろ遊びたいからゴメンと遅い返事を送った。
彼女は、私にも見せてよ!と言い、
今から行くから!とメールで返事をよこし、こっちへ向かっているようだった。
俺はPCから彼女と、あの家族の関連写真を消し、
カメラからメモリを抜き取って、新品のメモリを差し込んだ。
やがて彼女が来て、壁にはってる写真を見て、
わぁ、すごい!と感嘆の声をもらしていた。
やっぱコンデジと違うねぇと彼女。俺は俺の腕がいいんだよと冗談を言う。
いつもの楽しい時間。偽りなんだけど、俺にとっては本当に楽しい時間だった。

彼女はカメラを貸してくれと言った。俺は大事に扱えよと貸してやる。
「あれ? 何も映ってないじゃん」
「あぁ、PCに全部入れたからね。メモリは空にしたんだ」
「PC見せて!」

彼女は俺がどんな写真をとったのか気になったようで、
ビュワーを立ち上げ次々に見ていく。
風景写真が映った時、彼女が「ここって、○○らへん?」と尋ねてきた。

「そうだよ、よくわかったね」
「うん、なんとなくね。写真はこの辺しかとらなかったの?」
「うん、だいたいこのあたりだけだねぇ… 違う所も撮ったけど、消しちゃった」

なんとなくわかった。彼女が浮気した現場近くだったんで、
焦っているのだろうと。彼女の心が見えた気がして、ちょっと楽しかった。

晩飯にピザを頼んで、お腹いっぱいになった所で軽くいちゃいちゃ。
いつも俺から求めてたけど、拒否されたりで最近レスだった。
なのに、今日は彼女から求めてきた。やましい気持ちがあったからだろうか。
久し振りだったので燃えた。燃え尽きた。
いつもは彼女へ愛を囁きながらするんだけど、この時は俺は終始無言だった。
彼女はその事に気づいてたのだろうか。

彼女を家に送り、俺は上司に電話を入れた。
明日、遅れる、もしくは休みを取りたいと。
比較的まじめ君だった俺は、上司に許可をもらう事が出来た。
心配もされたけれど、言いたくなければ事情は言わなくていいと言われた。

俺は隠してたカメラのメモリをすべてPCにうつし、あの写真をプリントアウトした。
明日、この写真をもっておじ様のところへ行く為に。
そして、不倫をばらされたくなければ、彼女と別れてほしいと交渉するために。
脅迫罪なんて観念は全くこの時なかった。
次の日の朝。
俺はいつもより早く起き、びしっとスーツで身を固め、
交渉アイテムをカバンに詰めておじ様の家へタクシーで向かった。
車、持ってないんです…。

おじ様の家には母子が乗ってた車と、見慣れない車がもう一つ。
おそらくおじ様が通勤に使う車だろう。

7時半くらいだろうか。俺は勇気をふりしぼり、チャイムを鳴らした。
インターホンから女性の声。
俺は本名を名乗り、だんなさんを呼んでもらう様頼んだ。
今思えば、奥さんに出てこられたら俺顔知られてるからヤバかったかもしれない…

玄関から物音がし、ドアがあいて、ひょこりと男が顔を出した。
パジャマ姿だった。スーツすがたの「おじ様」という風貌は、まったく感じられず、
不精ひげをそのままにしたその姿は、どこにでもいる「おっさん」だった。
おっさんは、のそのそと出てきた。俺は自己紹介をした。
「はじめまして。○○とお付き合いさせていただいている××と申します」
おっさんのふ抜けた顔が引き締まった。不精ひげとパジャマはそのまま、おじ様になっていた。
おじ様は外に出てきて、玄関のドアをバタリと閉めた。
おじ様は無言だった。
俺は直に言った。「彼女と別れてください」
そして写真を取り出し、おじ様に見せた。
おじ様の顔はこわばり、小さく唸るような声で「わかった」と言ってくれた。
俺はそのまま立ち去ろうとした。するとおじ様は俺を呼びとめた。
「妻へは…」
この人も自分の保身が大事なんだなと思った。
俺は彼女に近づくなとクギをさせれば、それでよかったのだが。
おじ様のこの言葉で、俺、ちょっといじわる根性が芽生える。

「僕はすごく辛い思いをしました。慰謝料を請求したいのですが…」
おじ様は、やっぱりかといった感じで大きなため息をついた。
「いくらだ…」
いくらなんて考えてなかった…
とりあえず、まえ買った望遠レンズが5万だったんで、これくらいならと思い、
俺は無言で手の平を相手に見せた。
「わかった… 少し待っていてくれ」
この時通報されてたら俺タイホだったと今思うwww
おじ様が戻ってきて、封筒を俺に渡した。
5cmくらいあった。
中みて仰天。500万っすか…
別に婚約してたわけじゃないのに…
つか、家にそんな大金置いてるのが不思議。札束、帯までしてあったよ。
俺、怖くなって、封筒受け取ると逃げる様にその場を離れた。
おじ様、すまないって深く頭下げてたけど、どうでもよくなってたw

おじ様とはそれっきり。
きっと、家族3人で幸せに暮らしてる事でしょう。
公園で見たあの幸せオーラは、絶対壊しちゃだめだと今は勝手に思ってる。

んで、俺の彼女はというと…
おじ様が約束を守って別れをきりだしたかどうかは分からないけれど、
しばらくして、彼女がやたら甘えてくるようになった。
そして俺の心境にも変化が。
ぶっちゃけ、彼女の事がどうでもよくなってしまった。
最近、毎日の様に夜を求められて、最初の頃は嬉しかったんだけど、
今は俺の方から拒んでしまう。
なんとなく、昔彼女が俺を拒んだ理由がわかった気がした。
休憩所より 1/3
んじゃ、こっちにw

んで、このままじゃダメだと思って、思い切ってこないだ別れを告げたんだわ。
彼女の誕生日の前日に。
彼女は驚いた顔して、どうして!?と。
愛が冷めたって正直に言った。
彼女激怒。
「納得できない!」
「ごめん」
「ごめんじゃないよ!」
「うん…」
「私何か悪い事した!?」
「…(浮気したじゃんw)」
「何とか言ってよ!」

拉致あかないんで、卑怯な手を使った。
彼女を悪者にするw

「だって、お前浮気してたろ」
「するわけないじゃん、馬鹿じゃないの!? なに責任転嫁してんのよ!」
「嘘つくんだ?」
「してないって言ってるじゃない!」
「俺の誘い断ってデートしたろ」
「何言ってんの!?」
「俺がカメラ買った日」
「…あの日は用事で…!」
「ラヴホで用事ねぇ」
「そんな所行ってないっていってるでしょ!」

ここまで言っても白状しないのね…
2/3

ちょっとまっててと言い残し、クローゼットへ。
PCのデータそのまま見せてもよかったんだけど、逆上されて壊されたら困るんで、
おじ様の時につかった写真、処分しわすれて置いてたのを彼女の目の前にポンと置いた。

「……!!」
「仲好さそうだよねぇ。△△さんと」
「……!!」←名前まで知ってるので驚いてる様だw
「俺、なにも知らないと思ってた?」
「………ごめん」
「心のもやもやが取れないんよね…」
「ゆるして…」
「まぁ、今まで見ないふりして付き合ってたのは俺も悪いけどさ…」
「別れたくない…」
「やっぱ、どっか無理してたんだよね」
「××の事が好きなの…」
「うん、その言葉は信じるよ。ここ数日の○○は本当に俺の事想ってくれてるみたいに見えたから」
「じゃあ…!」
「でも、ごめんw いつ浮気されるかと思うとさ…w」
「……二度としないから…」

彼女号泣。
俺、胸につっかえてたものが取れてすがすがしい気持ちw
3/3
でも、泣かれるのはウザイんで、彼女追い出す事にw

「取りあえず明日また話そうか?」
「明日も会ってくれるの…?」←うれしそうな顔になる
「いいよw でも、合鍵は返してw」
「……!」ここでまた号泣w

追い出して、カメラいじって遊んでるとメールがw
謝罪とやり直したいって、言葉がつづられてる。
俺、丁寧に返信w

俺も○○の事、好きだったよ。
でも、今は信じられないんだ…
○○はかわいいんだし、すぐ新しい彼がみつかるよw

こんな感じの事を送ってるw

そして今も彼女からの復帰を願うメールや電話は頻繁にくる。
俺は着信拒否するでもなく、毎回丁寧に「好きだったけど…」と返してるw
家に来ても拒まずあげて、彼女が頭を下げる姿を見ては、妙な心地よさが
心の奥からにじみでるのを楽しんでいるw

もうしばらくはこの関係が続きそうだけど、復帰はどうだろ?
元には戻れないだろうなぁ。
願わくば、彼女が自暴自棄になって、おじ様一家に凸してぶちこわさないで欲しいと思う…

修羅場としては微妙かもしれないけれど、俺にとってはいろんな意味で
価値観を変えられた出来事でした。

おわりw
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