04月29

リストカットした男

今まで恋愛やら修羅場やら結構あったんだけど
思い出すと一つ変わった修羅場があったので書いてみる。
面白くなかったらすまない。

当時俺は20代前半。
前の彼女と別れて少しへこんだ日が続いていました。
それでもバイトしながら、それなりに楽しい生活を送ってました。
そんな時に近所にあるカメラ屋のおっさんと親しくなりました。
バイクでどっかに出かけるたびに写真撮って帰って来たんで、現像を頻繁に出してて。
そのカメラ屋のおっさんの知り合いの人がパーティを開くので一緒に行かないか
と誘われ、暇だった俺は参加させてもらいました。
12月のクリスマスパーティという名目で行われたパーティでした。
流石におっさんの友達であるロンゲのおっさんが開いたパーティだけあって
若い子はそんなにいませんでした。
だけどロンゲのおっさんの嫁さんが、大学の講師をしていたので
4人ほど若い子が。
若いっていっても当時の俺と同じ歳だったので20代前半ですが。
周りに同年代が居ないせいか、相席になり一緒にダンスしたりゲームしたりしました。

暫くしてからその中の一人、S子と付き合うことになりました。
その子は関西の方からこっちに来ていて一人暮らしでした。
俺はバイトが家の近くだったこともあり、彼女の家に遊びには行きましたが
同棲とかはしませんでした。

そこから三ヶ月、順調に付き合っていました。
彼女は元気で明るく、やたらテンションが高い子でした。
カラオケ大好きで会えば必ず拉致られ連れて行かれました。

ある日、バイトで少し遠くに行ったあと、お土産を置きに彼女の家に遊びに行きました。
行く前に連絡を入れて、今から行く事を伝えると凄く喜んでくれました。
…が、家についてインターホンを押しても一向に返事がありません。
どうしたもんかと思っていると、アパートの入り口の駐車場から彼女の声が聞こえてきました。
「どっか行ってたのか?」と思い、そっちに向かってみると、どこかで見たような男がいました。
まあ友達だろう、と思って「おーい、土産ぇぇぇぇ!」とテンション高く挨拶。
しかし顔を伏せて「あちゃ?」とうなだれる彼女。

なんじゃらほい?と思いつつも近づくと、隣にいた男が俺に向かって一言。
「彼氏?」
俺「うん、ちょっとお土産を置きに」
といらんことまで喋る俺。
男「そっかー、彼氏いるんじゃしょうがないね?」
この状況がさっぱりわからない俺は男に向かって「友達?」っと聞いてみました。
男「あ、ごめん、自己紹介してなかったね。彼氏さん。彼氏2号です」
笑顔で答える2号君。
あまりの拍子抜けに何を思ったのか「あ、はじめまして」とつられる俺。
でもよく考えると笑顔で会話する内容じゃないことに気付く。
黙っていた彼女に「説明してくれる?」と言うと
「外じゃあれだから家に入ろう?」
という流れで三人で家の中に。

家の中に入り三人で何故か正座。
沈黙が続くのも嫌だったので正座したまま土産で買ってきた長崎のカステラを出す。
「ちょっと切るからみんなで食べながら話そうか。S子、お茶用意して」
と台所を借りてカステラを切る。
「ああ、お茶は俺が用意するよ。」と2号君。
彼女の家なのに台所で男2人並んで菓子とお茶を用意する。
その時顔をよく見たんだけど思い出した。
この人カラオケの店員さんだ。

テーブルにカステラとお茶を用意し、彼女に説明してくれる?と頼んでみる。
S子「ごめんなさい、二股してました。本当はねこんな風になる予定じゃなかったの。」
俺「うん、二股はわかってるけどさ、こんな風にって?ばれる予定じゃ無かったってこと?」
「・・・」
黙る彼女。
そこで2号君が説明し始める。
「だいたい流れはわかるから俺が説明するよ。」
俺「あ、じゃあお願いします。」
本当なら彼女に切れて怒るところなんだけど、どうも2号君が落ち着いていて怒るに怒れない。
2号君「多分付き合ったのは貴方が先だと思う。カラオケに一緒に来たのも覚えてるし。
さっき彼氏か確認したのは彼女が「あの人は友達」って言ったから。
それを聞いたから彼女に告白したらOK貰ったの。
んで付き合いだした、と。
まだ付き合って2週間だけどね。」
なるほど、普通に二股だわな、これ。

2号君の話が終ったところで、彼女も観念したのか謝りだす。
「本当にごめんなさい、二人共。」
これをずっと繰り返す。
しかしそれをずっと聞いてるのも可哀想になったので、この場を明るくしようとする俺。
あ、俺がこういう行動するのは沈黙やら低いテンションが嫌いだから。
俺「こいつはメチャ許せんよなぁぁぁ!」
2号君「JoJoだろ、それw俺も好きなんだよw」
わかった。なんで怒る気にならないのか。
俺と2号君ってなんか似てるんだ。

で、お互い納得して別れて解散ってなら修羅場にはならなかった。
先にこの場の雰囲気を壊したのは2号君だった。
「んでどうする?正直俺も好きだったからまじで凹んでるんだけど。」
俺「そりゃあ俺だってな、裏切られたわけだし。」
S子「ごめんなさい・・・」
俺「S子はどうしたいの?どっちかを取るのか、それとも両方と別れるのか」
普通だったら浮気されたわけだし、問答無用で話を聞かないところだけど
2号君がどうも憎めない俺。
普通に性格も良さそうだし、もう少し話せばいい友達になれる感じの好青年。(俺より年上だけど)
2号君「そうだよな、どうすんの?S子」
俺「2号君はどうしたい?もしも2号君と付き合いたいって言ったら付き合える?」
2号君「え?1号君ってそういう趣味?!」
俺「違うってwS子とだよw」
駄目だ、どうも彼のペースに巻き込まれる。
2号君「まあショックだけどねー。それでもまた付き合えるなら付き合いたい。そのくらい好きだから」
うん、全く俺と同じ考え。俺もそのくらい彼女のこと好きだったから。

2号君「でもさ、やっぱりこのままで済ますのもまずいと思うんだよ。俺だって1号君だって裏切られたわけだし」
俺「そりゃそうだね。でも彼女は反省してるし、これ以上傷付けたくないよ、好きだから」
2号君「俺もそう思う。さっきから彼女泣きっぱなしだし、これ以上悲しませたくない。」
そう、さっきから返事をしない彼女はずっと泣いている。
惚れた者の弱みか、いまいち煮え切らない男2人。
2号君「それでさ、俺らでケジメつけない?彼女を傷つけることなく」
俺「どうやって?まさか三人で合意して付き合うとか?」
2号君「1号君とならそれもいいけどさ、そのうち独占欲が沸いてどっちかが苦しむよ。
それだったら今2人で同じ苦しみを味わおう。」
俺「わかった。どうやって?」

ここを見てる人は「こいつら頭おかしいんじゃない?」って思うかもしれない。
でもなんか2人して奇妙な連帯感みたいのが生まれてた。
修羅場なはずなのになんか和やかというか。

2号君「S子、カッターナイフある?」
ちょっと待て、何をする気だ?と正直思った。
泣きながらだけど素直にカッターナイフを出すS子。
2号君「S子が俺ら2人のどっちか、もしくは両方を好きならこれをやれば二度と浮気はしないはずだから」
と自信満々な2号君。
2号君「1号君、ちょっと腕出して?」
怖い事を言い出し、何をされるか検討のつかない俺。

でも何となく「彼は酷いことはしない」と思った。
腕を出した俺を見て「少し痛いけど我慢して」と俺の腕をカッターで切った。
これを見て俺よりあわてたのがS子。
「なにやってんの!やめて!」
と叫ぶ。
が、2号君が「黙ってろ!誰の為にこうなったと思ってんだ!」いきなり切れる。
それでも叫ぶS子。
「お願いだからやめて!」
2号君「動くな!動くと手元が狂うから!」
多分これにびびったS子は何も言わなくなった。
2号君「じゃあ次は俺ね、1号君さ、俺腕を同じように切って」
これはどんな意味があるんだろう、と真剣に思った。
でもノリで同じ事をした。
そしてお互い血を流しながら、腕に合計4本の傷が出来た。
ウォーズマンのベアクローで引っかいたみたいに。

っていうか床に血が滴り落ちててやばそうだった。
彼女は途中「もうやめて!本当に!」と言っていた。
動かなかったけど。

なんか儀式めいたものが終った後、改めて聞いてみた。
俺「で、どうする?どっちかにする?両方と別れる?」
2号君「俺らは俺ら、男同士でケジメをつけた。あとはお前の返事だけだ。」
今のがどういうケジメだったのかわからなかったが、喧嘩にならないならまあいいやと思った。

2号君「黙っているのはいいけど、俺らお前が決めるまで止血しないから」
ナンダッテー!?
そんなのは聞いてない。
でもとっとと結論出して欲しかった。
血の量は多いけど、お互い実はそこまで深く切れていない。
切った場所が多いので血は流れてるけど、多分あと10分もすれば血が固まる。
っていうか、とっとと結論出してくれないと深く切っていないことがばれるのでやばい。
まあ2号君がそこまで考えてたかわからないけど。

1分くらい間を空けて、やっとS子が喋ってくれた。
「2人は・・・」
俺「ん?」
「2人とも好きって言ったら怒る?」
ここまできてその結論が出ると思わなかった。
2号君「怒らない!俺らはケジメつけたからS子の結論がそれなら怒らない!」
おいおい、なに一人で決めてるんだよ。
俺「ちょっと待って、それって2人と付き合いたいって事?まじで?」
S子「だって今どうするかなんて決めれないよ、二人共止血しなきゃならないし・・・」
やばい、なんかこの結論はやばい気がする。
いっそ血のことは言った方がいいんじゃないか?
2号君「とりあえずS子が結論出してくれたから止血しよう。」
俺が色々考えてるうちに、どんどん話が進んでいく・・・。
なんとなく2人で風呂場を借りて血を洗い流す。
傷は思ったよりも深く切れていて、何年も経った今でも三本だけはっきりと傷が残っています。

この後、本当に三人で付き合うという奇妙な生活が三ヶ月続きました。
最後は本当の修羅場になり三人別れることになりましたが。
今回書いたのは修羅場というには緊張感が無いと思うんだけど
俺にしてみれば心境的に修羅場でした。
変な話でごめんね。

コピー