「聡美、やっぱり止めようよぉ」
長い髪を三つ編みにしたブレザー姿の少女が、同じくブレザー姿の同級生の後ろ
から声をかける。
「近道なんてしないで明るい道で行こっ。ねっ?」
小走りで駆けながら、哀願するような口調で頼み込む。
「いい加減すごく遅くなってるのよ。これ以上のんびりしてられないわ」
シャギーにした髪を揺らせて走りながら、硬質な美貌を持つ少女がやんわりと
答えた。なにしろ田舎のローカル線で、一本逃すと30分は待たされるのだ。
「でもでも、ものすごく暗いよ?」
明日香は進行方向にある階段を見上げながら、怯えた表情でつぶやいた。 こ
の階段を200メートルほど上ればJRの駅につくのだが、街灯の数が少ない
のでかなり暗い。駅に着けば充分明るいのだが──木が茂っているので
ここまで光が届かないのだ。
「ううー」
明日香は怖くなって自分で自分の体を抱きしめた。そうすると、もともと豊か
な胸がさらに強調される。
「近道するわ。いいわね」
ちらりと明日香を振り返った聡美は、少し不機嫌な口調で一方的に決めつけた。
聡美は細身で長身なのだが胸はそれほど豊かではなく、女性らしい体つき
の明日香に少々コンプレックスを持っていた。
「でも……」
「い・い・わ・ね?」
「聡美怖い……」
「ああもうっ! 明日香だって今日は早めに帰ってドラマを見たいと言っていた
でしょう! お気に入りの俳優が出ているのじゃないの?」
「あっ」
明日香は自分の両手を打ち合わせた。毎週楽しみにしていたのだが、今日は
朝から晩まで学校祭の準備で追われてつい忘れていたのだ。
「た、たいへん! 急いで帰らないと」
明日香は一気にスピードをあげ、聡美を抜き去る。そんな友人を横目で見て、
聡美は軽くため息をついた。
「まったく現金なんだから」
聡美も後を追うが、明日香は全力で駆けているらしくなかなか距離が縮まらな
い。
「そこらへんは暗いんだから、あんまり急がないの!」
「だってぇ……えっ?」
そのとき、明日香は気づいた──。
暗闇の仲で何かが動いた気がしたのだ。ちょうど近くの街灯が壊れており、
道のすぐそばなのに全く見えない。
「だれかいるの?」
明日香は足を止め、じっと目をこらした。
徐々に闇に目が慣れてくると、いくつもの人影がもつれ合っているのが見え
てきた。
「明日香?」
聡美も明日香の隣で足を止める。
「あのー。もしよかったら119番しましょうか?」
明日香の目には、地面に倒れた人影を、数人がかりで介抱しているように見え
ていた。
だが──。
「こいつはラッキー。カモが二匹もネギしょってやって来てくれるとはねぇ」
人影が立ち上がり、明日香と聡美に近づいてくる。
そのとき、ずっと消えていた街灯がいきなり光を取り戻した。
「貴子ちゃん?」
「!」
そこにあったのは、親切な人達に介抱されている明日香の後輩の姿ではなかっ
た。
「あなた達っ!」
力ずくで押さえつけられ、男達の欲望をその小さな体にぶつけている貴子の
姿だった。
「駄目、聡美!」
男達に詰め寄ろうとした聡美を、明日香は必死で押しとどめた。
「逃げるの、早く!」
聡美を強引に引っ張って階段を下りていく。数秒の間男達に憎悪の視線を
向けていた聡美だが、明日香の意図に気づいて自分も全力で駆けだした。
男達は少なくとも3人はいる。ここは逃げて助けを呼ぶしかない。
しかし、その数秒の判断の遅れが命取りだった。
「学校行って……用務員さんに……」
必死に走る。後ろから足音が聞こえるが、明日香達より足が遅いらしく近づい
ては来ない。
「しゃべらないで……走り……」
ようやく階段の終わりまで来たとき、彼女たちの真横から黒い影が飛び出し
た。
「やっ」
「きゃぁっ」
聡美と明日香は黒い影に突き飛ばされ、階段を数段転がり落ちてからアスファル
トの上に倒れた。
「残念だったねぇ」
黒い影が彼女たちにのしかかり、腕をひねりあげる。
「痛っ」
「この程度で痛がってると後がきついよぉ?」
黒い影……小太りの男は笑みを含んだ声で言った。
関西に本拠地を持つ球団のトレーナーと帽子を着込んでおり、とても
体力があるようには見えない。だが聡美がふりほどこうとしてもびくともしな
かった。
「このっ、離しなさい!」
「離すと思っているのかい?」
男は心底不思議そうな顔でこたえた。そして、聡美と明日香の腕に鳥肌が立つほ
ど嫌らしい声で笑う。
「うふふふ。おうちには帰してあげるけど、それは僕らがたっぷり楽しんでか
らだからねぇ」
2、3人、階段を駆け下りてくる足音が響く。
「僕の順番が来るまで、壊れないでねぇ」
小太りの男が彼女たちの手を離す。
「っ!」
聡美は手の痛みを無視して立ち上がり、うずくまっている明日香を引っ張り起こ
して逃げようとする。
だがそのときには、周囲を男達に囲まれていた。
「やぁっ!」
大柄の男に力任せに腕をつかまれた明日香が悲鳴をあげる。
「離し……うむぅっ」
聡美は口を大きな手のひらでふさがれ、そのまま抱え上げられた。
「やだやだやだ、おかぁさぁんっ!」
うめき声と悲鳴をあげながら、彼女たちは闇の中に運ばれていく。
男達は階段をのぼり、道から外れて10メートルほど進んだ。
そこには、所有者からも忘れられた古ぼけた小屋があった。
「ほーい、スイッチオン」
小太りの男が懐中電灯をつけると、小屋の中が薄ぼんやり見えてくる。
男達の数は5人。4人はがっちりとした体型で、薄いシャツとジーパンの上から
でも分厚い筋肉がついているのが分かる。
残るひとりは、あの薄気味悪い小太りの男だ。
「もう離していいよ。ここなら騒がれても道路のところまで聞こえないからねぇ」
小太りの男が言うと、明日香と聡美は床に放り出された。
何年分かの埃が舞い、これまでしみ一つ無かったふたりのブレザーを汚す。
「僕はこの子で楽しませてもらうから、君らはその子達で楽しんでねぇ」
ここまでずっと担いできた、見事なまでに幼児体型の体を撫で回しながら告げ
る。汗と精液でどろどろになった幼い顔に、ほうけたような表情が浮かんでいた。
「いっ、いいんスか兄貴? 俺たちが最初にやっちゃっても?」
男達は頑健な肉体とは対照的に卑屈で、どこか狂的なものがある目つきで
小太りの男を見ていた。
「いいよぉ。君たちも僕の趣味は知ってるだろぉ?」
小太りの男は中指を立て、無造作に貴子のアナルに突き立てた。
「ひぃぁっ」
虚ろだった貴子の瞳に、光が戻る。
「おねがいですなんでもしますから、なんでもしますからひどいことしない
でぇっ!」
大粒の涙を流しながら哀願する。
「うーん。いじめているつもりはないんだけどねぇ」
根本まで入った中指を動かせながらのんびりと言う。
指が動くたびに貴子が悲鳴をあげるが、そのたびに男はうっとりと目を細め
ていた。
「やはりロリっ子をいじめるのは楽しいよねぇ」
心底楽しげにつぶやく男を、明日香と聡美は恐怖と嫌悪の入り交じった視線でに
らみつけていた。
「このっ……デブ。あなた最低よ」
聡美は恐怖に萎えそうになる気持ちを抑えつけ、彼女にとって最大限の侮蔑
の言葉を投げつけた。
それに対し小太りの男は一言。
「やっちゃえ」
そう言って、男達をけしかけた。
「ひゃっほうっ!」
「こっちのお嬢様っぽいのは俺ンだ!」
逃げ場のない小屋の中ではどうすることもできず、聡美はあっという間に3人の
男に組み伏せられた。
・・・続く
祖先:
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