ポリ袋で売買される「母乳」、金持ちの男に吸われる「乳母」…中国揺るがす第2次粉ミルクショック
2013.8.2607:00(1/4ページ)[大阪から世界を読む]
北京市内のスーパーマーケットで乳製品を選ぶ子連れの女性=2013年8月5日(AP)
2008年に国産粉ミルクの化学物質汚染事件が起きた中国で第2次粉ミルクショックが起きている。国産品への不信から、中国では乳製品の輸入市場が拡大しているが、今年8月、ニュージーランド大手乳業の一部製品に細菌が混入していたことが発覚。中国の消費者に再び不安が広がっているためだ。そんな中で、中国らしい“商売”も出ている。母乳をポリ袋に入れて闇市場で売買したり、「大人の栄養源」として、スタッフの女性の胸から直接、成人に吸わせる事業を始めたり…。騒動は思わぬ方向に展開している。
(木村成宏)
海外製は管理ミス 中国製は「故意殺人」
現地メディアなどによると、中国の国家品質監督検査検疫総局は8月4日、ニュージーランドの乳業大手、フォンテラの製品からボツリヌス菌が検出された発表。中国国内の4社が汚染の疑いがある製品を輸入していとして、製品を原材料にした商品を回収。当局は、ニュージーランド産の乳製品の輸入を一時的に停止した。
一方、国家発展改革委員会は、乳製品の最低販売価格を指示するなどしていたとして、フォンテラや米国のミード・ジョンソン、フランスのダノンなど外資系5社を含む6社に対して独占禁止法違反で計6億7千万元(約107億円)の罰金を命じた。
当局の動きなかで、政府系メディアは「ボツリヌス菌は致命的な菌。それが海外の物から発見されるのは驚くべき事態」「粉ミルクは国産、輸入で品質を決め込むのは間違いだ」などとするネットユーザーらの声を紹介し、国産品の消費拡大を訴えている。
しかし、少なくとも6人の乳幼児が死亡した2008年の国産粉ミルクの化学物質汚染事件では、メーカーが乳製品のタンパク質の比率を水増しするために、有害物質、メラミン樹脂を故意に混入していた。
このため、ネット上では「海外では問題の製品は事前にリコールされるが、中国では人が死んで初めてメディアに出る」「海外のミルクは管理ミスによる過失。中国のミルクは故意殺人」などと、国産品に冷ややかだ。
ポリ袋で売られ、成人男性に吸われる母乳…
中国で粉ミルクの需要が高い理由の一つとして、母乳育児率の低さがあげられる。生後6カ月まで母親が母乳で育児する割合は世界平均では40%とされているのに対して中国全土では28%。都市部に限れば16%まで落ち込むという。
中国では共働き家庭が多い一方で、母親の育児休暇が短かったり、外出先で授乳施設が整備されていないことなどから、母乳で育児をする母親は少ないとされている。
だが、粉ミルク騒動が加熱するなか、母乳をポリ袋に詰めて数十元で、母乳が出ない母親向けに販売するケースも。これには、感染症にかかっている女性の母乳だと、母乳を介して感染症が子供に移る危険が指摘されている。
また、中国の一部地域では古来、「母乳は消化がよく手軽な栄養源」とされてきたことから、裕福なビジネマンらの間では、疲労回復や栄養補給のために乳母を自宅に雇うことがはやっているという。
中国紙によると、深●(=土へんに川)の人材派遣会社は、母乳が出ない母親を持つ新生児だけでなく、栄養価の高い「乳製品」を求める富裕層向けに女性スタッフを派遣している。
派遣会社の社長は「大人でも、スタッフの胸から直接、母乳を飲むことができる」と説明。女性スタッフの収入は1カ月約1万5千元(約24万円)で、農村部の平均年収の約2倍にあたる。「健康で美人」なら、さらに収入は高くなるという。
乳母として派遣されるのは、四川省や黒竜江省などの貧しい家庭の出身。生活費などを稼ぐため、出産直後の子供を親に預けて出稼ぎにきているとされる。
中国では、貧しい家庭の赤ちゃんは、化学物質や細菌の混入などの汚染が疑われる国産粉ミルクを飲み、金持ちの大人が代わって、赤ちゃんの母親の乳房を吸って栄養をつけている。
大阪観光の中国人がミルクを買い占め?!
ところで、中国政府は輸入ミルクには高い関税をかける一方、メーカーの統廃合を促すなどして、規模拡大で安全性や信頼性の確保を目指している。
しかし、中国全土の国産品のシェアは50%以下で、特に都市部では20%と低い状態。国連機関の統計によると、02年に10億ドルだった乳製品の輸入額は13年には90億ドル、15年は130億ドルに達する見込みだという。
今回のニュージーランド産の一部乳製品からの細菌検出後も、国産品の売れ行きに大きな変化はなく、ドイツ製や、東日本大震災の風評被害を一時受けた日本製などに代替需要が向かっているという。
高い需要を見込んで海外で粉ミルクを買いあさり、手荷物で中国へ持ち込んで高値で転売するビジネスが横行。粉ミルク不足となった香港やオーストラリアや欧州の各国では販売を制限する事態となっていることから、大阪・心斎橋などでも粉ミルクを大量に買いあさる中国人観光客を見る機会が増えそうだ。
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