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俺はヒデ男。フツーの会社員やってる。
別に愛煙家じゃないけど、いわゆるコミュニケーションって言うのか……職業上の交際ン中で使う時があるから、小さなバッグに喫煙グッズをつめて持ち歩いてる。
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夏のお盆の頃、親類が法要で小さな会館を借りきって集まった。
ちょっと時間が空いたから、会館の廊下の片隅でスマホを使おうとカバンを開けていたら、
「これって『加熱タバコ』ってヤツ?」という声がした。
俺が顔をあげると、姉の娘であるS4の姪っ子シオリが俺の横にいて、俺が窓辺の台に置いた喫煙グッズをながめていたんだ。
俺は間髪を入れず言った。
「吸ってみる?」
シオリは可愛い目を見開いて黙ってしまった。俺はかまわずに加熱タバコを本体にセットすると、シオリを非常階段の中に引っ張った。
「ほら。」
俺が加熱タバコを手渡すと、シオリは、
「……言ってみただけなの。加熱タバコだって私、まだ吸っちゃいけないでしょ。」
と首を振った。三つあみの髪が揺れた。俺はそんなシオリの唇に加熱タバコを挿しいれた。
す~っ……
シオリはくわえていた吸い口をはなすと、つぼみのような唇から白い煙を吹きだした。
「いかがでした、初めてのスモーキングは。」
俺が聞くとシオリは、自分から吸い口に唇を寄せて、白い煙を吹き出して言った。
「何か……いいかも。」
それからシオリは加熱タバコを本体ごと手にして、非常階段の壁につけてある鏡の前で ポーズをとりながら煙を吹き出す。
法要ということもあって、正装してるシオリがタバコを味わう姿は不思議なギャップを感じさせた。
「おい、シオリ!」
俺は少し声を荒げて、シオリの手から加熱タバコを取り上げた。
「ごめんなさい……調子に乗っちゃって……」
と、戸惑う表情のシオリをヨソに、俺は新しいタバコをセットするとシオリに渡した。
シオリは、ますます戸惑った表情になった。
「シオリ、もったいない事しないで、その煙を俺の顔に吹きかけてくれよ。」
俺は階段に腰をおろした。戸惑っていたシオリは俺の言葉の意味を察して、俺の隣に腰をおろすと、加熱タバコをくわえては俺の顔に白い煙を吹きかけはじめた。
いい香りがする。俺はうっとりその煙を浴びていた。
シオリの方は、相変わらず鏡にうつる自分の喫煙姿が気になるようだった。
(シオリが加熱タバコを吸う 動画を撮ってあげたらよかったかな……)
そんな事を考えてると、シオリはポツリと笑顔でつぶやいた。
「ヒデ男さん、ヘンタイさんだ……」
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シオリとの一件以後、俺は自分のそばに女の子がいると、何気に加熱タバコを出して見るようになった。
別に吸うわけでなく、ただ女の子の気を引きたいだけだった。
ある平日の昼下がり、俺はバス停のベンチでカバンの中を整理するフリをして加熱タバコを出してみると、
「え、それって加熱タバコでしょ?」
と誰かが声をかけてきた。見上げると私立のS学校の制服を着た女の子が、ベンチの隣から俺の手元を見ていた。
女の子は6年生くらいだろうか。短い髪にメガネをかけた、マジメタイプだった。
俺は彼女のその問いに答えたって体で、
「吸ってみる?」
と言った。すると女の子は、
「……え、吸わせてくれるの?」
なんて言うんだ。俺がうなずくと、女の子は、
「じゃ、おじさん。ちょっとこっちに来て。」
と言うとベンチを立った。俺は女の子のあとについていった。
バス停の近くの古い団地のハズレに俺は連れて来られた。
(今どき、こんな所見られたら住民に通報されるぞ……)
なんて思いながら女の子のあとをついていくと、女の子は三方を植え込みに囲まれたちいさな空き地に入った。
「ほら、早いうちに吸ってみてよ。」
俺が女の子に加熱タバコを手渡すと、女の子は吸い口をくわえて白い煙を吹き出した。
だけど、女の子はひと口吸うたびに首をかしげるんだ。俺は女の子に聞いた。
「どうしたの?」
「う~ん…… こんなものなのかなぁ。友達ン家で最新の加熱タバコ吸わせてもらったんだけど、何か物足りなくて。
それでおじさんが持ってる『元祖』の加熱タバコならどうかな、と思ったんだけど、どっちにしろ『ないよりマシ』って感じなのね。」
俺は女の子のおでこを指先でつついた。
「こら、何にくらべて『ないよりマシ』なの?」
女の子は加熱タバコの煙を唇からこぼしながら言った。
「決まってるでしょ。『ホンモノ』のタバコよ……」
俺は例のバッグから、ホンモノのタバコを出した。
「じゃあ、これはいかが?」
女の子は目を輝かせた。
「……吸っていいの?」
「俺はいいけど、キミ 親とかにバレるなよ。」
「うん、わかってる。」
女の子は俺からタバコとライターを受けとると、タバコをくわえて火をつけた。
唇から煙を吹き出す女の子は、穏やかに満たされた表情をしていた。
「いかがですか?」
俺が聞くと女の子は、
「やっぱ違う…… 加熱タバコと違って、燃えた草の煙はリアルだわ~」
と生意気な事を言った。
おとなしい制服を着て、紺色のランドセルを背負った女の子が、慣れた手つきで扱うタバコ。
それは俺を性的に興奮させるほどの強いギャップのある光景だった。
「ねえ」
俺は女の子の前にしゃがんだ。
「なあに?」
「あのさ…… キミのタバコの煙を、俺の顔に吹きかけてくれないかな……」
女の子はタバコをくわえて言った。
タバコをくわえているのに、女の子の言う事はハッキリ聞こえた。
「おじさん、それだけでいいの?
フェラチオは無理だけど、手で抜くんならしてもいいよ。」