11月28

少年とお姉さん


 昼時を過ぎた駅前の雑踏。
 日曜日と言うこともあって、駅前の繁華街はそれなりに人で賑わっている。
 その中に、人待ち顔の少年が立っていた。

「もうそろそろかなぁ…」
 今日は友人との待ち合わせ。とは言え、実は相手の容姿も年齢も分からない。
 何しろ待っている相手は、ゲーム機のオンライン機能を使って、よく一緒に遊んでいるフレンド。
 実際に会うのは、今日が初めてだった。
(どんな人だろ…怖い感じじゃないと良いけど…)
 今日の相手は無二の相棒と言えるぐらいの仲で、実生活の相談をし合う程だ。
 優しくて大人しい印象の人物だが、いざ実際に会うとなると少し勇気がいる。
 ケータイの時計をチラリと見ると、待ち合わせの時間まで後10分。
「あの、もしかして…アランさん…ですか?」
 背後から聞こえる、儚い雰囲気を漂わせた細い声。
 アラン…ゲーム機上での少年のアカウント名、AーLAN073の呼び名だ。
「は、はいっ…」
(来たっ……!)
 心臓を高鳴らせながら振り向くと、そこにいたのは…
 
 ──おっとりとした、少し垂れ気味だが優しそうな目
 ──自分より数歳年上の、落ち着いた雰囲気
 ──少年と同じ高さから目線を送る、小柄な身長
 ──服装もケバケバしさのない、大人しめの装い
 
 ここまでは想像したのに近かったが、しかし。
「は、始めまして……エイミィです」
 服の上からでも分かる、ボリューム感ある胸部の隆起。
 
 目の前の『相棒』は、女性だった。

 出会いから数分後、駅前の喫茶店の一席に、二人の姿はあった。
「…やっぱり…驚きました?」
 目の前の相棒…アカウント名EIMY3535。
(まさか…女の人だったのか…)
 女性のようなアカウント名だが、プロフィール情報は男となっていた為、意表を突かれてしまった。
(やっぱり、そういう人もいるんだなぁ…)
 ゲーム用のオンライン上でも、ナンパや援助交際のような事は行われている。
 そう言う目的の相手を警戒して、性別情報を男や非公開に設定している女性もいるという話は、何度か聞いたことがあった。
「正直に言うと…ビックリしました」
 ストレートに心中を吐露しながら、改めて彼女を見る。
 ふんわりとボリューム感ある、ウェーブのかかったセミロングの黒髪が縁取る、薄化粧の丸っこい顔。
 こぢんまりした鼻にちょこんと乗った、レンズの大きなフレームレスの眼鏡。
 そして小さめだが肉感的な唇が、全体的に柔和な雰囲気を作っていた。
 
「ごめんなさい、嘘をついてしまって……年上の女じゃ、ちょっと話しにくいよね…?」
 テーブルに置かれたホットティーを見つめながら、申し訳無さそうに話す彼女の声。
「そんなこと無いですっ!全然話しやすい感じだし、それに…」
 少年自身、年上だけど可愛らしい印象の彼女には、少し好感を持っていた。
「それに…性別年齢とか関係なく、エイミィさんは相棒だと思ってますっ」
 なにより彼女は、数々の死線を共に乗り越えてきた『相棒』なのだから。
「えっ…」
 少年の明瞭な返答に、しかし彼女の顔が茹で上がったように赤くなる。
 染まりゆく顔色を見て、自分が随分と大胆な台詞を言ったことに、やっと気づいたようだ。
(な、なんか恥ずかしいこと言っちゃった…) 
 同じように頬を染める少年。自然とこんな言葉が出るあたり、彼も天然系っぽいところがあるらしい。
「…あっ、あの…」
 何か喋ろうと必死に言葉を紡ごうとするが、しどろもどろの口はなかなか意味ある言葉を喋れなかった。
 
「…ふふっ…」
 二昔前の中学生のような恥ずかしい空間から、先に立ち直ったのは彼女の方だった。
「ごめんなさいアランさん、今更だよね…毎日のようにお喋りしてたのに」
 少年の必死な言い様と初々しい反応に、かえって落ち着きを取り戻したようだ。
 すまなそうな顔にも、柔らかい微笑が浮かぶ。
「いえ…それに、呼び方も呼び捨てで良いです」
「それじゃあ…アラン君でいい?」
「はい、エイミィさん」
「じゃあ私もエイミィって日常で使うと、ちょっと恥ずかしいし…」
 アランという呼び名も大概だが、エイミィも一般的な日本人の名前ではない。
「……省略して、エミならどう?」
 エミなら、日本人名で済む範疇かもしれない。
「ええ、それだったら…エミさんで」

「そんな状態でオンドラだったから、ビックリしちゃって」
「そこまでやって、実はお助け黒だったんだ。その後はどうなったの?」
 ゲームを通して知り合った二人だけあって、やはりゲーム談義に花が咲く。
 自己紹介の後は、一時間ほど続く会話の半分を、オンラインでの体験談に費やしていた。
 彼女…エミは大学二年生で、少年の町から電車で数駅の町で一人暮らしをしているらしい。
「…そろそろ、場所変えよっか?いつまでも飲み物だけじゃ…」
 丸々一時間ドリンクサービスだけで粘ったせいか、店員の目が少し険しい。
「ですね…とりあえず出ときましょっか」
 ぎくしゃくした空気も今は無く、すっかり打ち解けたようだ。
 少年が伝票を取ろうと手を伸ばすと、同じく取ろうとしたエミの手に重なるように触れる。
「!!」
 だが、触れた瞬間電撃が走ったように、勢いよく手を引っ込めてしまう。
 いくら何でも過剰反応では…そう思って彼女の顔を見ると、少し蒼白になった表情が怯えるように少年を見つめていた。

       ・
       ・

「…さっきは、ごめんなさい」
 先ほどの出来事から始めて聞く声は、暗く落ち込んでいた。
 結局会計は彼女が一括で払ってしまい、店を出た後あてどなく街中を二人で歩いていた。
「いえ、大丈夫です…」
 そう答える少年の声も、少し気まずい雰囲気だ。
「でもさっきは、あの……どうしたんですか…?」
 聞くべきかどうが迷うが、聞かない訳にはいかない…言葉を選びながら慎重に問いかける。
「………私…軽い男性恐怖症なの」
 長い沈黙の後、ポツリと漏れた返答は、ある程度予想していた答えだった。

「ちょっと早すぎたかな…?」
 始めて会った日から、幾らか日が経った頃。今日もエミとの待ち合わせだった。
 初日はギクシャクした雰囲気で終わってしまったが、その後も何度か会って、今では打ち解けた関係に戻っている。
『喋るのは我慢すればできるのだけど、身体が触れるのは…』
『でもアラン君と喋ってるときは、我慢しなくても自然と楽しく話せたから、もしかしたらと思ったの。けど……』
 自分の男性恐怖症の事を話す、エミの言葉を思い出す。
(要は触らなければいいんだ、なら大丈夫)
 少年の方にも下心が無かった訳ではないが、男性恐怖症の女性に無理なアタックをかけるような事はできない。
 なによりも、年上の可愛い『相棒』とのデートのような行為が楽しかった。
 この関係を崩したくない…それが少年の偽らざる本心だった。

 少年の目に、遠くから走ってくる一台の軽自動車が見える。
(あれかな…?)
 パステルグリーンのニュービートル。事前に教えてもらっていた彼女の車に違いない。
 やがてエンジンを絞りながら、丸っこい車体が少年の前に止まる。
 窓越しに見える運転手はエミだった。軽く手を振り、ドアを開けて車内に滑り込む。
「…ご、ごめんねアッ君。遅くなっちゃって…」
 アッ君と言うのは、彼のアカウント名の省略形で、最近はこの呼び方を使っていた。
「いえ、僕もさっき来たばっかで………っ」
 待ち合わせに於けるお決まりの辞令が、途中で止まる。
 凍りついたように固まった少年の表情。その視線の先には、今までとはかなり趣の異なる格好の彼女がいた。
 
 上半身にフィットした黒の半袖は、想像以上に豊かな胸と合わさって、柔らかなラインを描いている。
 下は生足にカーキのホットパンツで、太腿の付け根をギリギリまで曝け出していた。
 髪型や化粧に変化は無いが、こころなしか普段より気合が入っているような気がする。
(ど、どうしたんだろ…)
 今までは、身体のラインや肌の露出が少ない服装ばかりだったので、この急変には少年も戸惑いを隠せない。
(男性恐怖症が治った…って訳じゃないよね)
 さりとてこれが普段着の一つではない事は、彼女の不自然なまでにそわそわした態度からも明らかだ。
 扇情的な格好の真意を測りかねたまま、車が動き出してドライブが始まった。
 
(やっぱり、おかしい…)
 会話もどこか上の空の彼女を横目にしながら、少年の方も平常どおりにはいかなかった。
 普段とは全く異なる露出過多な格好に、丸っこい顔に見合った肉付きのよい肢体。
 ムチムチの身体を締め付けて、ボディラインを強調する装いは、少年には目に毒だ。
(…エミさんって、意外とスタイルが……)
 お陰で本日の牡器官は、常に勃ちっぱなしの状態だ。
 しかもそれを知ってか知らずか、時々隣から少年の股間へ視線を送りながら、露出した肌を仄かに紅色で染める。
 足を微妙に組み替えたりして何とか誤魔化すが、スラックスでは如何にも厳しい。

 ウウゥゥ…ンン……
 ふと、エンジン音が徐々に小さくなり、車体の振動も少なくなっていく。
(止まるのかな…?)
 外の景色が移り変わる速度が落ちていき、やがて完全に停止して動かなくなる。
 そこは郊外の田園地帯の農道脇で、周りには車どころか人も見当たらない場所だった。
 少年が考え事に耽っている間に、随分と寂れた場所に来てしまったようだ。
 
「……ねぇ、アッ君」
 相棒の静かな呼びかけに、少年の心臓が高まる。
(来たっ……)
 エミのどこか硬い口調の声。少年も、この状況で何も無いと思う程鈍感ではない。
 彼女の目を見つめ、聞く用意ができていることを知らせる。
「あのね……正直に、言って欲しいの……」
 何が来ても驚かないよう、心の準備をする。
「私を見て……エッチな気分に、なっちゃってる?」
 探りも何もあったものではない、ストレートすぎる問いかけ。
「!!」
 直球の言葉は少年の心構えを簡単にぶち抜き、またたく間にその顔を紅色に染める。
 問うた彼女自身も恥ずかしいのか、途切れ途切れの言葉が終わると、頬をさらに赤らめた。
(や、やっぱりバレてた…!)
 流石にこんな質問は想定していなかったのか、恥ずかしさに俯き言葉も出せない。
(どどうしよ、えっ、えっと……)
「変なこと聞いちゃって、ごめんなさいっ、あの……それに、こんな格好だし…」
「い、いえ…でも、どうして…」
「あのね…先生に聞いたんだけど…」
 混乱で鈍る口から何とか言葉を搾り出す少年に、たどたどしい答えが返ってきた。

       ・
       ・

「…なるほど……」
 要は、彼女の恐怖症は異性との接触と、男性器への拒否感が特に強いらしい。
 それを克服するためのリハビリの一環とのことだが…
(なんで、こんな格好を…?)
 聞いた限りでは、男性からの視線恐怖症のようなものは無いようだ。
 現に少年の視線に対しても、恥ずかしがってはいたが極端な拒否反応は無かった。
「そ、それでね…あの、アッ君の…オ、オ…」
 緊張にどもりながらも、必死に言葉を繋ごうとするエミ。
 モジモジと絡み合いながら蠢く両手指が、彼女の内心を表しているようだ。
(オ?……ま、まさか、おっきくなったオチンチンを、見せてって……!)
 そして、羞恥のせいか、視線を落としながらの彼女の頼みは。
 
 
「アッ君の…オ、オナニーを見せて欲しいのっ…!」
 少年の予想に、ダブルスコアの点差をつけるような内容だった。

「…えっ……ぇえ!?…オ、オナ…!?」
 エミの突拍子も無い提案に、少年も思わず裏返った奇声を上げる。
「……う、うん…私って、本物の…を見たのって、小さい頃に父のを見たのが最後で…」
「それに、見せてもらえるなら、色々見てみたいなぁ…って……」
 尻窄みになる声とは対照的に、随分と大胆な考えだ。
「そ、それじゃその格好って、もしかして…」
「男の子って、その…一人でするときに、エっ…エッチな本とか、見るんだよね……?」
 どうやら自分自身をオカズにしてくれという事らしい。
(それで、僕の股間を見てたのか…)
 自分の身体で興奮するか、確かめたという事だろう。なかなか用意周到と言うべきか。

「……………」
「……………」
 車内に降りる静寂の帳。二人とも赤く火照らせた顔は下を向いたままだ。
 エミの手遊びの様な指の蠢きと、時折チラと相手を伺う目だけが、唯一の動きだった。
「………それで……どうかな?」
 暫しの沈黙の後、俯きながら答えを求めてくる。
「…あの…ぼ、僕でいいんですか?」
 とりあえず何か話さないと…混乱した頭を落ち着かせる為、時間稼ぎの質問を投げ返す。
「こんなこと頼める人、アッ君しかいないし……それに…」
 少し言葉を切ると、上目遣いの瞳がすがる様に少年を見つめてくる。
「…私も、アッ君なら…いいかなって…」
 躊躇いがちに放たれた言葉は、少年の心を揺り動かすのには十分な破壊力だった。
(うっ……可愛い……)
 年頃の童貞少年には卑怯すぎる熱視線と、可愛らしいお願い。
 結果的に時間稼ぎどころか、さらに自分を追い詰めることになってしまった。

(でも…どうしよう……)
 とはいえ思春期の青少年にとって、股間の勃起を見られるのは相当恥ずかしい。
 さらに一番恥ずかしい行為を見られるとなれば尚更だ。
(み、見られながら、オナニー…しちゃうなんて……)
 オナニスト憧れの見られながらの生オカズオナニーに、全く興味が無いわけではない。
 だが少年も、自ら進んで最も恥ずかしい行為を曝け出す程の変態ではなかった。
(…だけど……)
 尚も少年を見つめる潤んだ瞳。聞いた限りでは、男友達は彼以外にはいないらしい。
(こんな事頼める人、僕しかいないんだろうな…)
 自分しかいない…内容はともかく、親しい人に頼られるのは悪い気はしない。
 
「わ……分かりました…っ」
「…ほっ本当に…いいの?」
 こちらを窺う彼女から、安心半分不安半分の声が投げかけられる。
「…大丈夫……やります」
 どちらにしろ、既に梯子は外されているに等しい。自らに言い聞かせるように、勤めて冷静を装いながら承諾した。
 ここまで言ってしまっては、もう後には引けない…
 オナ見せ行為にちょっと興味があったというのも、ほんの少しだけ理由にあったが。
 
  
 続く

「…えっと、それじゃ……ここで、ですか?」
「う、うん…ここなら、誰も来ないと思うし…」
 車は田園地帯の農道脇、数本の木が並ぶ裏側に停めてある。
 周りは無人の野で遮蔽物もあり、万が一人が通りかかっても、近くに来なければ見られることは無いだろう。
「………」
 だが少年もOKを出したとは言え、なかなか次へ進むことができない。
 カーセックスならぬカーオナニー、オマケに親しい女性への公開オプション付き。
 このメニューでは、少年を責めるのは酷なことだろう。
「………」
 エミも、無茶な頼み事を聞いてもらっている手前、催促しにくい。

 二人分の羞恥と緊張が折り重なった空気が車内を漂う中…
「それじゃ…あっ」
「えっと……あっ」
 同時に喋りかける二人。互いの言葉が互いを遮ると、再び俯いて押し黙ってしまう。
 普段は突拍子も無いオナニーを嗜む少年も、こう言う時には緊張してしまうのだろうか。
 だが暫しの沈黙の後、先に動いたのは少年の方だった。
 ガクッ、ガタンッ
 シート横のレバーに手を伸ばすと、席を後ろに倒す。
(もう……やるって言っちゃったし、やるしか…!)
 踏ん切りをつけて状況を打開しようと、行動を起こして自分の尻を叩く。
 狭いニュービートルの車内でも、助手席に膝立ちでなら何とかできそうだ。
「あの……上半身は…」
「上は大丈夫…うん、大丈夫。下だけ。下だけ……お願い」
 最後のお願い、と言う部分は何とか聞き取れるぐらいの、小さな声だった。
 
 カチャカチャッ…
 スラックスのベルトを外す。それだけの事なのに、なかなかうまくいかない。
 苦労してベルトの留め金を外すと、次はズボンの留め具に手を掛ける。
 ボタン外しはスムーズに出来、その勢いのままファスナーを下ろした。
 全ての留め具を外された腰元を握り、後はズボンを下ろすだけ…下ろす、だけ。
(これからホントに、オチンチン…見せちゃうんだ……)
 だが、ここに来て少年の動きにブレーキが掛かる。
 何とか勢いだけでここまで持って来たが、一度手を止めると途端に動けなくなってしまう。
 ズボンを見ていた目線を上げ、助けを求めるようにエミを見るが…
「…っ……」
 緊張と困惑、そして若干の好奇を湛えた、申し訳なさそうな瞳が彼を見つめるだけだった。
(…ええいっ!)
 再び下を向いて目を瞑ると、勇気を振り絞って下着ごとズボンを一気に下ろした。

「…っ!」
 彼女の、息を呑む気配。膝まで下ろされたズボンとトランクス。
 車内の緊張した空気に、素肌の下肢を曝け出した。
 少年の若茎は、色素の薄い包皮が先端を覆い隠しており、
 子猫の様にプニプニと柔らかそうな姿は、ツルツルの玉袋と合わせて可愛らしい。
 彼女の刺激的な格好に硬くなっていたペニスも、今は驚きと緊張に縮こまっていた。
(…見せ…ちゃった………!)
 初めて家族以外の異性に、オチンチンを見られた…その事実に、心臓が激しい鼓動を刻む。
 速いビートを打ち鳴らす胸は、その振動で胸部の筋肉が揺さぶられるほどだった。
 
 エミは驚愕に目を見開いたまま、少年の股間を見つめてくる。
 まるでレーザー光線のように、見られている箇所に実体を伴った感触を感じてしまう。
 それが錯覚なのは少年も分かっているが、股間に湧くむず痒い感覚は中々収まらなかった。
 だがそれ以上に、彼女もむず痒い思いをしているようだ。
 驚きと羞恥を張り付かせた顔に、無意識の中でモジモジと指遊びを繰り返す両手。
 恥ずかしい思いをしながら、陰部を曝す少年以上に動揺する様子は、可哀想なくらいだ。
「…あの、大丈夫…ですか…?」
 自分よりも驚きを見せる彼女に、少年も若干落ち着きを取り戻す。
「う、うん…大丈夫。ちょっとビックリしちゃっただけ…大丈夫」
 まだ固さを残した口調だが、口ぶりは先程よりも確かな感じだ。
 顔色も少し赤みを増してきて、彼女の内心を言葉以上に教えてくれる。
 そこには、初めて会った日、手を触れてしまった際に見せた蒼白は見当たらなかった。

「………」
 息を詰め、子供のような熱心さで股間を観察するエミ。
 暫しの時間が二人の緊張を解したようで、徐々に張り詰めた雰囲気が消えていく。
 少し余裕が出来ると、今度は自分の秘密を観察する彼女が気になり、逆に観察をし始めた。
(なんか、小さい女の子みたいだな…)
 緊張の代わりに、好奇心が前に出てきた彼女の表情。
 ひたむきな瞳が、自らの若茎を舐めるようになぞる様子は、くすぐったくて、そして…
 ムクムクッ…
 少年の、いけない興奮を呼び起こしてしまう。

 
 遂に膨張を始めた年若いペニス。
 少し皺の寄った、まだ余裕のある包皮がどんどん膨らみ、やがて張り詰めるまでになる。
 柔らかそうな睾丸の袋をクッションにして寝そべっていたのは最初だけ、
 大きくなるにつれてどんどん上向く若茎は、最後には少年の腹を突かんばかりの急角度になった。
 10秒にも満たない間に、何倍も大きくなった少年の持ち物に、エミは感動に近い驚きを感じていた。
(あんなに大きくなっちゃった……)
 弛んでいた表面が瞬く間に硬くなる様子は、SF映画を見ているような気分だ。
(少しの間で、ムクムク大きくなって…)
 最初は少年の萎びた白いオチンチンとマシュマロタマタマに、愛玩動物のような可愛らしさすら感じていた。
 だが一度膨張を始めると、愛らしさは驚愕に、好奇心は畏れに取って代わった。
 知識では知っていたが、実際に見たことのなかった勃起現象を目の当たりにして、
 彼女が感じたのは『恐れ』ではなく『畏れ』。ある種の神々しささえ感じてしまう。
(オチンチンって…凄い)
 彼女の人生で初めて、本物の『牡』に接した瞬間だった。

(顔を見てただけなのに…オチンチンおっきくしちゃった…)
 エミの可愛らしい表情を見ながら、自分を見つめる視線に興奮して勃起させてしまう。
 露出度の高い彼女の格好で興奮するよりも、恥ずかしい事に思えてならなかった。
「はぁ…っ……」
 今までよりも熱の篭った、色気すら感じる吐息が、少年の高まりを撫でる。
 湿ったそよ風のような感触も、だがそれが女性のものとなれば話は別だ。
 ムクゥッ…
 辛うじて皮を被ったままの七割勃起が、燃料を得てさらに膨張を始めた。
 
「えっ…!」
 視界の中の高まりが、さらに大きくなっていくのに驚き、思わず声を出す。
(あれだけ大きくなったのに、これ以上大きくなるの…?)
 そして限界まで張った包茎の先端が、牡幹の膨張に押されて綻びを見せる。
(えっ、先が…あれがオチンチンの皮だよね…)
 グングン広がっていく隙間。遂には圧力に耐え切れずに、その中身を露にする。
 中から現れたのは、綺麗な赤色の生亀頭。濡らついた表面はとても敏感そうだ。
 小学生の時、性教育ビデオで見たのと同じ光景だが、本物の迫力は映像を遥かに凌駕した。
 普段の彼女なら恐怖すら感じる、剥き上がった肉棒…
(でも、アッ君のだったら…大丈夫かも)
 生っ白い滑らかな竿部分と、触れただけで爆ぜそうな先端。
 ビクンビクンとおののく様子は、牝を狙う肉食動物というより臆病な小犬のようだ。
 そんな印象を持ったのも、勃起前の小さなオチンチンを知っているからかもしれない。
 もしも最初から勃起していたら、ここまですんなり受け入れることはできなかっただろう。
 顔を上げ、いじらしい高まりの持ち主の顔を盗み見ると、
 そこには戸惑いと僅かな興奮を隠し切れない、自分を見つめる瞳があった。
 ……トクンッ……トクン……
 少しだけ、胸の鼓動が気になった。

 屋外の車中、親しい人に自らの性的興奮を観察されるのにも、少し慣れてきた少年。
 緊張を押し退けて、弾けそうな昂ぶりが取って代わり、年若い牡幹も戦闘態勢を整える。
 不意にエミが顔を上げ、ついと少年を仰ぎ見てきた。
 ドキッ!
「…オ、オチンチン、大きくなったね…」
 コクン
 言葉にするのは恥ずかしい…自分を見つめる瞳に押されながら、肯定の頷きで返事をした。
「…………」
「…………」
 話が続かないが、もう言葉を紡ぐ必要は無い。次にやるべき事は、分かっているのだから。
 
 股間の熱源へと伸びる右手。その先の硬く屹立した肉棒に、指が絡みつく。
「…ん、ふっ…」
「……!」
 エミからは息を呑む気配、そして少年の口からは、僅かな喜悦に反応した声が聞こえた。
 異性の見守る中で感じた、初めての性感。竿部分を添えるように掴む感触も、普段とは違ったものに感じる。
 もう一度、キョロキョロと周りを見回す。車の周りには人っ子一人、他の自動車や野良犬すら見当たらない、二人だけの世界。
(見つめ合いながらだと、は、恥ずかしいな…)
 顔を下に向けてエミから目線を逸らすと、自然と自分の勃起を見つめる形になる。
(これから……しちゃうんだよね…)
 欠片程の躊躇いは残るが、最初ほど抵抗は感じない。緊張や恥ずかしさも、大分薄らいでいる…もう、大丈夫。
 根元を掴む手が、握りはそのままに先端の方へと動き、遂に始まる快楽遊戯。
 思春期の男の子にとっての最重要機密が、一人の女性の前に曝される。

 
 シュッ、シュッ、シュッ…
 牡幹にそって、手を機械的に上下に扱く。毎日のように自室でしているお馴染みの行為。
 だが今日は違う。目の前には、自分の恥ずかしい行為を見つめる、親しい女性がいる。
(…見られ、ちゃってる……)
 未だに残る緊張と羞恥のせいで、せっかく用意された生オカズに目を向ける余裕も無い。
 今まで、オナニーを人に見て欲しいと思う事はあったが、いざそれが実現するとなると、
 まだまだ年も経験も若い少年が、素直に変態的興奮を享受するのは難しかった。
「…は、っ……ん……」
 俯いたまま黙々と、高まりを見せる勃起に指を這わす。
 だが、内心とは無関係に送られてくる肉悦は、少しずつ少年の心を蕩かせていく。
 お馴染みの性感が肉欲を呼び起こして緊張を解し、少年の精神を徐々に弛緩させていった。
「んっ、うんっ…はぁ……っ…」
 興奮を含む火照った吐息。だんだんと行為にも熱が入ってきたようだ。
 そして少年の目も、チラチラと盗み見るように彼女の方へと向き始める。
 ピンクスパイラルのパターンに入った一人遊びは、確実に静けさを失いつつあった。

 金属のように硬くなった肉棒を、軽く握った右手が緩やかに扱き上げる。
 たったそれだけの事を続ける単調な行為。だがそれを見守るエミの心中は大騒ぎだった。
(男の人の、マスターベーション……オナニー…)
 手の動きに合わせて、柔らかそうな包皮が亀頭を半ばまで隠したと思うと、今度は剥き下ろしてカリの出っ張りを露出させる。
「んっ……っう、ん……」
 一見すると簡単な動きだが、込み上げる何かを堪えるような少年の声は、彼が快感を感じていることを教えてくれた。
 若茎も触る前より大きく、張り艶も良くなった気がする。
「あっ…」
 亀頭の先端、縦長のスジからトクトクと、少年の快楽の証である我慢汁が溢れ出てきた。
(あれって、気持ちよくなったら出る…カウパー…だっけ)
 次々に湧き出る透明な液体が滴り垂れて、敏感な表面に湿りを加える。
 包皮に攪拌された先走りは、クチュクチュと音を立てながら先端に塗り広げられた。

(こう言う事してる時って、どんな顔してるのかな…)
 少年の恥ずかしい行為を目に焼き付けようと、凝らしていた目が彼の顔に向く。
 俯き加減ながら何とか見える表情。赤く染まった顔は、特に頬と耳の先が真っ赤だ。
 目は涙が溢れそうな程潤み、口も薄く開いて、熱い吐息と小さな喘ぎ声をひり出していた。
(…なんだか………っ…)
 思わず抱きしめてあげたくなる様な健気さを感じさせる、切なそうな表情。
 男性にこんな感情を抱くのは、彼女の人生の中でも初めての事。
 …トクンッ…トクンッ…
 だんだんと早くなる胸の高鳴りを、彼女は確かに感じていた。

 一方、調子の出てきた少年は、普段とは違った興奮を感じていた。
「はぁ…っ、くっ…!」
 親しい女性に、一番恥ずかしい指戯を見られる、公開生オナニー。
 妄想に思うことはあっても、叶うことは無いと思っていた事が、今現実に起こっている…
 時間が経つにつれて羞恥は鳴りを潜め、エミに自慰行為を見せつける快感に酔いしれた。
(オチンチン見られて…オナニーまで…っ!)
 更に自分の為だけに用意された生オカズが、少年をより昂ぶらせた。
 軽くDカップを越えそうな豊満な乳房は、呼吸と共に上下し、僅かな身じろぎにも揺れ弾んで、
 パッドには無い天然の柔らかさを少年に見せつける。
 さらに太腿を大胆に曝け出した、生足ホットパンツが下肢を飾り、
 ムッチリとした触り心地重視の脚線美が、少年の自慰活動を助けた。
「ぁ…んっ……っ…!」
 彼女の魅力的なボディをオカズに快感を貪る最中、ふと何気なく顔を上げる。
 そこで自分の顔を見つめるエミの視線と、正面からぶつかった。

 互いに視線を絡ませ、自分を見つめる相手へ同じく視線を送る。
 少年は、快感に歪む自分の顔を、まじまじと観察するエミを。
 エミは、必死に自分の若茎から性感を引き出す少年を。
(エッチな顔を、じっと見られちゃってる…)
(エッチな事しながら、私のことを見てる…)
 動きを止め、じっと見つめ合う二人。少年の右手と吐息だけが、唯一の活動源だった。

 チュッ、プチュ…クチュッ……
 先走りの粘質音が徐々に大きくなり、溢れる汁の量が増えてきたことを伝える。
「んっ…!…っ…あっ…!」
 潜めたよがり声も、だんだんと大きく、ピッチの短い急いた感じを滲ませ始める。
 少年の絶頂は、すぐそこにまで迫っていた。
(もう来る、来てるっ…これ以上我慢、んっ、できない…!)
 腰の奥に感じる、煮えたぎるマグマの圧迫感は、経験から言って回避の困難な『本命』。
 見られながらのオナニーが呼び起こした興奮は、少年をいつもより遥かに早く肉欲の頂点に追い込んだ。
(このままじゃ、出ちゃう……ほんとに見られながら、目の前でイっちゃう…)
 一度は覚悟した事だが、実際に射精するとなると、羞恥心が再び頭をもたげ始める。
 だが一方で、一番恥ずかしい瞬間を見て欲しいと言う気持ちが、確かにあった。
 射精の勢いを、牡の法悦に緩む顔を、必死に精液をひり出すオチンチンを、見て欲しい…
 そうしたら、どんな反応をするだろう。驚くだろうか、喜ぶだろうか、それとも…
 結局、飛び出た羞恥の頭を快感と興奮が押し返し、少年の右手がスパートを掛けた。

(アッ君、もう……射精、しそうなの…?)
 僅かな性知識と少年の様子、そして牝として本能が、彼の絶頂が近いと教えた。
 視線を股間に移すと、色白の肉竿には薄く血管が浮き、力みきった姿を誇示している。
 カウパーの滴る亀頭も、濡らついた赤肉をヒクヒクさせて限界を訴えた。
「んうぅっ…もう…っ、出そう…っ!」
 そして切羽詰った少年の声が、自らの絶頂の訪れを彼女に教える。
(出る…これから精液が出ちゃう…)
 精液が出る…精子を含んだ白い体液が、おしっこの様に勢いよく出る…だが、どこへ?
(車内に飛び散っちゃう!?)
 今になって、射精に対する準備を全くしていないことに、ようやく気がついた。

 アッ君に伝えないと…だが突然の事態に混乱した頭は、言葉を出せない。
 それに、射精直前の一番快感が強まる時に、邪魔をしたくないという思いもあった。
(無理を聞いてもらってるんだから、せめてアッ君には…気持ちよく射精して欲しい)
 目は少年の高まりに張り付いたまま、手だけを辺りに這わせてティッシュの箱を探す。
「もう、出そう……イキそう…っ!」
 ティッシュを探す間にも、どんどん高まる少年の喘ぎ声。
 やがて、手の先に硬い紙箱の感触が触れると同時に、目の前の亀頭が一回り膨らむ。
(もう出ちゃう!?)
 素早くティッシュを束のまま引き抜くと、少年の勃起の前にかざそうとした。
 だが勢いよく突き出した手は、手前で止まるべき位置を通り過ぎて…
 ピトッ…
 若い牡幹の先端を、ティッシュ越しの右手が包み込んだ。

「んっ…!!っ、く…うぅっ!!」
 ドッビュウウゥッ!!
 一際大きな呻き声と同時に始まる、牡の絶頂。
 ティッシュを挟んで少年の肉棒を掴む手は、ビクンビクンとしゃくり上げる動きと、噴水のような吐精の勢いを感じていた。
(すごい勢い…それに射精の最中も、ビクビクと首を振ってる…!)
 絶頂の証が迸る寸前。亀頭が弾ける様に膨らみ、次の瞬間には白い大噴火が始まった光景。
 十枚近くの薄紙を間に挟んでさえも、牡の激しい生理が、文字通り手に取るように伝わる。
「んあっ…!…はっ…あぁっ!」
 射精中も激しい快感を感じているのだろう、発射の脈打ちに合わせて切なそうなイキ声が上がり、エミの耳をくすぐる。
(抑えてるけど必死な感じ…声を上げたくなるぐらい、凄く気持ちいいんだ…)
 自分の手の中で悶え続ける少年器官。
 ティッシュの束を介して触れる肉棒は、彼女の手を振りほどかんばかりにうねり、歓喜の放出を続ける亀頭を暴れさせる。
 牡幹を必死に彼女の手指に押し付ける様子は、まるで愛撫をせがんでいるようだ。
(見たい、射精するオチンチン見てみたい、けど…)
 まだ白濁液が漏れ続ける最中では、手を離すわけにはいかない。
 見ることの叶わぬ律動を、せめて隅々まで感じ取ろうと、手の内の感触に集中した。

 やがて手の中の脈動が、徐々に力強さを失い、蠢く間隔も長くなっていく。
 大きさも徐々に萎んでいき、ティッシュ越しの手ごたえも心持ち弱まった気がする。
「終わった……終わっちゃったの…?」
 少年を仰ぎ見ると、少し辛そうな、だけど余韻に浸っているような惚けた表情の赤い顔が、コクンと頷いた。
(終わっちゃったんだ……)
 それを見て少し残念に思っている自分に、軽い驚きを感じていた。

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