03月30

左曲がり

 久しぶりにユウくんを見かけたから、声を掛けてみたんだけど、ユウくんったら「あ、久しぶり…」って引きつった笑顔見せて、帰ろうとすんのね。1回した仲のくせに。
 まあ、避けてる理由は分かってるんだけど、長くなるから割愛。
 早い話が、ユウくんの彼女が前の彼と会ってるとか、私がユウくんを誘ってシちゃったりしたこととか、全部ぶちまける機会があって、その原因の一端が私にあるからなんだけどね。
 もちろん反省はしていない。

 別れるのも惜しいので、とりあえず「彼女とうまくいってる?」って訊いたら、
「ダメかもしれないねぇ」と遠い目をして答えた。
 そういや、会ったときからこの人こんな感じだったな。人のせいにすることができなくて、すぐ自分を責めちゃうようなタイプ。
 なんとなく、いとおしくなって「じゃあ、彼女とうまくいく方法考えようか」って言って、部屋へ連れてきた。

「ベッドしかないけど、そこ座ってビールでも飲んでてよ、つまみ作るから」
「いいよ、悪いよ」
 ユウくんはキッチンまで来ようとしたけれど、私は強引に座らせた。
 ジャケットを脱いで、チューブトップだけになって、下も短パンに着替えて(もちろん洗面所で)、普段はしないけれど、エプロンまでしてみた。
 この格好、前から見ると裸エプロンみたいに見えるのね。
 でも私、胸ないから谷間は見えないけど。

 ちゃっちゃかちゃっちゃか料理を作り、ちっちゃいテーブルに、エノキとシメジのホイル焼き、ナスと豚肉の辛みそ炒め、豆腐のミョウガ添え(コレは手抜き)を並べて、
「すごいね」
 と褒められつつ(まいったかコノヤロ)
「でも、和洋中ごちゃ混ぜのところが、おかあちゃんの夕食みたいだね」
 とか言われつつ(ほっとけコノヤロ)
 ユウくんの隣に腰を掛けて、ビールで乾杯して、とりあえず雑談なんかしてみた。
 なるべくユウくんの方に体を向けて、裸エプロンに見えるようにしながら。

 雑談の内容で、ユウくんはまだ彼女のことが好きなことが分かった。でも「彼女が元彼と寄りを戻して幸せになるならそれでもいい」とも言った。ただ最後まで見届けたいらしい。
 というか、ちっとも裸エプロン(仮性)に食いついてこないのはどういうわけだ。チラ見もしないし。
「みんな仲良くできるといいのにね」
 と私はオバカな振りして言ったら、鼻で笑いやがった。
「あ、なんで笑うの? そのほうがいいじゃん」
「いや、無理だよ」
 ユウくんは力なく笑う。
「え、なんで?なんで?できるよ」
 と私は天然を装って言ってみたけれど、ユウくんは何も答えなかった。
 そりゃ、みんな仲良くなるのは無理だ。私にも分かる。なるにしても時間がまだ足りない。
 体だけなら簡単なんだけど、心は簡単にひとつにならない。
 相変わらず普通の会話は苦手だ。

「ねえ、ゆうくんは他の人としたいと思わないの?」
「いや、もうそういうのはしない」
 あ、つまんねぇ。食いついてこないのか。この格好じゃだめなのか。それとも何か、やっぱ谷間か。谷間がないからか。男はやっぱおっぱい好きか。おっぱいがすべてか。このおっぱい星人めが!
「じゃあオレそろそろ――」
「あ、食器洗ってくるね」
「あ、オレ洗うよ」
「いいから、座ってて」
 ユウくんが帰ろうとするので、強引に座らせ、私は食器を持ってキッチンに向かった。

 食器を洗いながら、このあとどうしようか考えた。
 最初はからかうだけのつもりだったけど、やっぱやっちゃおう、うん。
 私、前ユウくんとやったときを思い出して、すごく興奮してた。たぶん今日会ったときから。
 だから私、食器を片付け終わったら、着てる服を全部脱いだ。

 裸なって、駆け足で部屋に戻って、ユウくんの前でバンザイの格好で立ちふさがる。
「マンコマンとーじょー!!」
 …あれ?
 ゆうくん何も言わない。
 きょとんとしてる。
 クスリともしない。
 やべぇ、すべったか? 
 見詰め合う私とゆうくん。
 沈黙が広がる。
 ホントにやばい、恥ずかしくなってきた。
 顔が赤くなるのが分かる。

 たまらず私は、電気を消して、ユウくんをベッドに押し倒した。
「えっ、ちょっと――んっ」
 何か言おうとするユウくんの口を強引に塞ぎ、舌を捻じ込む。
 ぷはっと息継ぎをするとシャツのボタンを急いで外しにかかる。
 上から順番にボタンを外して、一番下のボタンを外し終わっ…
 たかと思うと、ユウくん上から順番にまた付け始めてる。
 ちょっと何やってんのユウくん!!
 私は、ユウくんの両腕を取ってバンザイの格好で押し付けた。
「ミオちゃん、やめよ。ねえ、ほらオレ彼女いるし…」
 もう男の人ってめんどくさい、とりあえずセックスする大義名分が欲しいのね。えっと、どうしよう、考えろ私。
「マンコマンはオチンチンを食べないと死んでしまうのだ!!」
 違うね、うん。
 何言ってんだ私。
 ごまかすために私はユウくんのシャツを捲り上げて、乳首に吸い付く。
「あふっ」
 何だか知らないけど、ユウくんの抵抗がなくなった。ええ!?あのセリフが効いたの?
 わかんないけど、今のうちに、シャツのボタンを外して前をはだけさせ、ついでにズボンのベルトとボタンを外し、下着の上からペニスを触る。
 「ユウくん勃起してるよ」
 私は必殺上目遣いでユウ君を見る。
「ミオちゃん…目がおっさんになってるよ」
 なんだと!ゴラァ!
 おっさんと思うならおっさんで結構!
 私はへっへっと下卑た笑いを装いながら、強引にユウくんのズボンを下着と一緒に剥ぎ取る。
 勃起したペニスが飛び出した。
 片手で握り、擦り始める。
 どんどん隆起していく。
「ユウくん、どんどん硬くなってるよ。興奮してんじゃないの?」
「べっ別に興奮してるわけじゃ…ただの生理現象なんだから」
 なんです?そのツンデレなセリフは?ワザと?
 私はなんだかハイになっちゃって、ユウくんに跨り、ペニスを頬張る。(要はただのシックスナインなんだから!)
 私は亀頭を舌で絡めたり、カリ首のところをなぞってみたり、深く咥えたりして、ペニスを弄り倒す。ユウくんは吐息を漏らして、私の足首を握る手に力が入る。かわいいな。ユウくんは。
 ペニスの先から、明らかに私の唾液じゃない汁が出てきている。
 おしっこ?
 そんなわけないよね、うん。
「ユウくん、何か出てきたよ、何かなぁコレ」
 私は亀頭の先をつんつんして、そのねばねばした液体を指先で伸ばしてみる。
 そのとき、ぐいっと太腿が引っ張られた。
 ずりっと私の体がユウくんの上をすべり、目の前のペニスが遠ざかる。
 えっ?
 私のアソコに何かが触れる。
「ひゃん!」
 ユウくんが、私のを舐めた。
 舌が私の敏感な突起に触れて、思わず体がびくっとなる。
「ちょっと待って、ユウくん、ちょっと、やっ」
 私、ハイになって忘れてたんだけど、そういや、舐めるの好きでも、舐められるの苦手だった。
 いや、アレは気持ちがいいんだけど、もうちょっとお互いが慣れてからっていうか、少なくとも、セックス2回目でやるもんじゃないっていうか、そういうのがあって、私、セックスに対してはリベラルな方だと思うんだけど(リベラルの使い方合ってる?)、なんかそれだけは、つまり分かりやすく言うと、
 恥ずかしい。
 やめて、ユウくん。
 ごめん。
「マジで、んっ、やめて、ユウくん、やだっ、あっ」
 両手でお尻をぐいっと広げられて、小刻みに舌で刺激される。やだ気持ちいい。自分でもどんどん溢れてくるのが分かる。ユウくん苦しくないのかな。
「やんっ、ユウ、くんっ、私ので、窒息、はんっ、しちゃうよ」
 何馬鹿なこと言ってんだろ。
 ユウくんは私の体を持ち上げると這い出てきて、うつ伏せの私のお尻を高く持ち上げた。
 私は肘を突いた四這いの格好で再び攻められる。指で敏感な突起を弄繰り回されたかと思うと、膣をかき回される。時には繊細に、時には乱暴に。私のアソコはユウくんの指を求めてヒクついて纏わりつく。このコこんなテク持ってたの?
「あぁ、そこは違う穴だよぉ」
 指はクリトリスを刺激しながら、舌がアナルに触れる。ちょ、マジやめて、恥ずかしい。
 耳の先が熱くなってるのが分かる。
 でも、熱いのは恥ずかしいだけじゃない。
「やぁぁぁん、気持ち、いいよぉ」
 もう、なんでもいい。好きにして。
 私の体はびくんびくんと振るえ、指先まで力が入り、貧血の時のようにくらくらとして、もう、ユウくん!ユウくん!いっちゃうんだからぁぁぁぁ!

 私はぐったりして、うつ伏せのままベッドに倒れこんだ。
 気がつくと、ユウくんは立ち上がってベッドから降り、パンツを履こうとしていた。
 ちょっと待って、やめちゃうの?
 私は足を通したパンツに手を伸ばしてユウくんの動作をとめる。
「ちょっと、どこ行くの?」
「いや、帰るよ。もういいでしょ」
「まだしてない」
「1回逝ったでしょ、もうしたことでいいじゃん」
「まだ入ってない、ユウくん逝ってない」
「別に挿入だけがセックスじゃないし、男が逝く回数でシた回数を決めなくてもいいでしょ、ミオちゃんには自由なセックス感を持って欲しいな」
 なんなの、そのフェミニズムぶったセリフ。
「私まだ逝ってない。あんなの演技なんだからね」
 嘘だけど。
「やっぱ、まずいよこういうの」
 この後におよんで、まだそんなこと言うか。
「私そんなに魅力ない?胸のない子は嫌い?」
「そんなことないよ」
「絶対そうだよ。ユウくんの彼女、巨乳さんだもん、ユウくん巨乳好きでしょ」
 ユウくんは私から目を逸らした。
「…違うよ」
 なにその間、今一瞬考えましたね。
「じゃあ、しなくていいから、ぎゅっとして」
 私はベッドの上でちょこんと座り、両手を広げてユウくんに向かい合う。ユウくんは困った顔をして動こうとしない。シャツがはだけたまま、パンツも膝まで下ろした格好で。けっこう間抜けな格好だ。それを見て、私はおかしくなって笑い出す。
 急に笑い出したものだから、ユウくんはきょとんとして見返してる。
「何?何なの?」
 ユウくんは苦笑いして訊き返す。
「だって、その格好――」
 ユウくんはやっと気がついたのか「ああ」と笑いながらパンツを上げた。
 やべえ、服着られちゃう。
「ねえ、しなくていいから、ちょとだけ側にいて、私ユウくんといるとほっとする」
 ユウくんはベッドに座りなおす。私は彼にしなだれかかる。シャツのごわごわした感触が頬に当たる。やっぱ服がじゃまだ。私はユウくんのシャツを脱がしにかかる。
「ねえ、なんで脱がすの?」
「裸で、ぎゅっとされたいから」
 ユウくんのシャツを脱がし終わると、私はユウくんをそっと押し倒し、腕を取って頭を下にした。

 腕枕されたまま、私はユウくんのもう片腕をとって、浮き上がってる血管をなぞったり、意外と太い鎖骨を摘んだり、胸にあるほくろを数えたりした。
 こうやって、男の子の腕の中で安らぐのって、久しぶりだった。いっつも、終わったら寝るか帰るかだったし。たまにはこうゆうのもいいかもしれない。
 もう今日はしなくてもいいかも。
「ねえ、ぎゅっとして」
 ユウくんは私の言うとおり、背中に手を回してきて、そっと抱き寄せてくれる。
 あったかい。私の手もユウくんの背中に回り、肩甲骨や筋肉をなぞる。
 私は「ぎゅうして」とか「ちゅうして」とか「頭撫でてて」とかさんざん甘える。
 太腿に、ユウくんパンツの感触がある。やっぱ服がじゃま。
 私はユウくんのパンツをそっと下げて、膝までずらす。
「ねえ、なんで脱がすの?」
「もっと裸で、ぎゅっとされたいから」
 私はパンツを足の指で挟んで、完全に脱がした。
 ペニスが太腿に当たる。勃起していて、すごく熱い。私はそれをそっと握る。ユウくんのお尻がぴくっとする。
「ねえ、なんであそこ握ってんの?」
「こうしてると落ち着くから」
 ペニスが脈打ってるのが分かる。私はそっと擦りだす。だめだ、やっぱりコレが欲しい。

 私はユウくんの上に跨り、ペニスを裂け目にあてがった。
 そっと体重を掛けてユウくんの飲み込んでいく。
「ねえ、なんで入れてんの?」
 したいからに決まってんだろ!
 私はユウくんの唇を塞いで、腰を動かす。ユウくんも私のリズムに合わせて、ゆっくりと動かしている。貫いたペニスが私の全てをかき混ぜているような気がする。私のアソコからはどんどん溢れてきて、ペニスが簡単に抜けちゃいそうになって、私は注意しながら動いたりしてたんだけど、ユウくんの腰の動きは、私と合わさり、心臓の音や呼吸の回数まで合ってるような気がして、快感が広がり、体がとろけ、腰は勝手に動いちゃってて、気がついたらアンアン言ってて、震えるぞハート!燃え尽きるほどヒート!刻むぜ波紋のビート!やっぱそうだ、このコ、私と体の相性がいいんだ。
 うれしくなって、またユウくんに抱きついた。
「なに、どうしたの?」
 もう、つまんないこと訊かないで。私はユウくんの頭をもって、ちゅっちゅっと顔中にキスをして、そしたらユウくんは私のお尻を掴んで、激しく突いた。
「んっ!やっ!あんっ!あ、ぁぁあああーーーー」
 突然の激しい振動に翻弄され、私は必死になってユウくんにしがみつく。敏感な部分が擦れ、繋がった性器の境目が液体になったようにとろけて、ユウくんすごい!世界が暗転する!遠くに連れてって!
 意識が遠のきそうになったそのときにユウくんの動きはゆっくりになる。
 あれ、なんで?もっと動いて。私は快感を求めて腰を動かす。ユウくんの激しく熱い呼吸が耳に当たる。私の唇はユウくんの舌を求めて吸い付く。
 ユウくん苦しそうに肩で息している。上気したユウくんの額に汗が浮かんでいる。疲れちゃったのね、ゴメン。いいよ、ゆっくりシよ。

 少年のような顔をしているけど、呼吸と共に蠢く喉はやっぱり男だ。ぐったりしたまま私はユウくんに体重を預ける。重なり合った互いの心臓の音が部屋中に響いている気がする。ユウくんは片手で私を支ええたまま体を反転させる。上下が入れ替わり、天井と共にユウくんの顔が見えた。目が合って思わず笑みがこぼれた。
 彼の耳の後ろに手をやると、汗で濡れた髪の毛が纏わりつき、ぬるま湯に浸したように心地よい。彼のごつごつした手の平が私の胸を刺激して、私はぴくぴくと体を振るわせる。舐めて欲しくて、頭を胸に引き寄せた。ユウくんは乳首を軽く噛んで、痺れが体を襲う。
 腰は再びゆっくりと動き出していて、ユウくんは上体を起こして私を突き上げる。腰を支えた彼の腕が私を宙に浮かせる。ふわふわとした快感の海に浸っていると、今度は足を持ち上げられて、体をくの字に曲げられ、ユウくんが深く入り込んできた。ユウくんの体を私の性器で支えているみたいで、子宮が押し上げられて、思わず痛みに顔が歪む。でもその痛みの先にあるものが知りたくて、私は神経を集中させる。
「痛い?」
 ユウくんが心配そうに尋ねる。
「んっ、大丈夫」
 私はユウくんの腕を掴む。湿った皮膚が手の平に吸い付き、硬い筋肉の動きが伝わる。ユウくんの動きがだんだんと早くなり、私の体の深いところまで、彼の細胞が侵入しているような気がする。
 彼は痙攣するように私を深く突いた。
「やっあぁぁぁあ!すっごぃぃ!いやあっ!ああーーー」
 私はベッドの上で弾み、踊り、首を左右に激しく振って絶叫する。自分が消えてなくなりそうで、恐怖に似た感情に襲われ、掴んだユウくんの腕に爪を食い込ませる。
 やだ、怖い。
 たまらず私はユウくんを引き寄せる。力の入った手の平がユウくんの体を登り、隆起した背中に腕を回す。私がユウくんに密着すると、ユウくんも私の背中に腕を回し抱き寄せてくれる。私は足を絡ませて、皮膚という皮膚すべてをユウくんと密着させる。のしかかるユウくんの体重に私はゆだね、腰は快感を求めて動いている。強く締め付け合い、唇を重ね、舌と舌が絡み合い、汗で滑る皮膚がお互いの境目をなくし、ユウくんの細胞が私に侵食して、意識は薄れ、まるでユウくんのペニスそのものになっちゃったみたいで、私が私でなくなりそうで、私死んじゃうかも、ユウくん、名前を呼んで、私の名前を呼んで。
 ミオ…
 私が喋ったかどうか分からない言葉に、ユウくんが答えたのか、彼の言葉が脳裏にこだまする。
「ミオ…」
 今度ははっきり聞こえた。
「ユウくん…」
「ミオ…」
「ユウくん…」
 私は隙間を埋めるように抱きしめてあなたの名前を呼ぶ。あなたのことが知りたくてあなたに何かを届けたくて、でも掛ける言葉が何も浮かばなくてただ名前を叫ぶ。
「ミオちゃん、逝っていい?」
 ユウくんの吐息が耳に当たる。私は頷く。
「いいよ…あはっ…ちょうだい…」
 ユウくんの動きが激しくなって、私は強くしがみつく。
「やっ、あっあっあぁぁーーー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 ・・・・・・・・・・・・音が止まる・・・・・・・・・・・・・・・・・・・すべてが・・・・・・・・スローモーションのように
 ユウくんが震えている。
 暴発した精液を子宮に感じる。
 熱い体温が伝わる。
 来てる。
 ユウくんは体全体で私を締め付ける。
 ただ強く締め付ける。
 ユウくんが私の中に来て、私の膣は精液の最後の一滴を搾り出すようにペニスに纏わりつく。私とユウくんの激しい呼吸音がこだまする。力の抜けたユウくんの体がのしかかり、私は小さな体でそれを受け止める。好きだよ。好き好き。私はユウくんの頭をもってキスした。チュチュッ好きだよチュチュゥ放さないんだから。ユウくんは私の髪を掻き上げて、優しくキスした。私は嬉しくなってまた抱きついた。

 互いの体液を始末し終えると、湿ったシーツを避けるように、私は隅っこで縮こまった。ベッドに腰を掛けたユウくんの横顔がカーテン越しの明かりに照らされて見えた。ユウくんは一点を見詰めたまま、じっとしていた。
 あーその表情、嫌になっちゃうな。後悔と罪悪感にさいなまれながらも、それを悟られまいとしたような、そんな表情。私、男の人のそんな表情を何回か見たことがあるけれど、正直、ユウくんにはそんな表情してほしくなかったな。
「またシちゃったね」
 私はわざと明るく言った。
「そうだね」
 ユウくんは呟いて、それっきり黙ってしまい、私は急に胸が押しつぶされそうになった。
 私はただセックスがしたかっただけなのに、こんな気持ちになるのは嫌だった。相手が私のすべてになって、翻弄されるのはまっぴらだ。
「ユウくん、彼女のこと考えてるでしょ」
 私はおどけて訊いてみた。
「え?」
 ユウくんは訊き返してきたけれど、私は答えないでじっとしている。そんなことないよって言ってほしかったのかな、自分でも分からない。ただそんなこと訊くべきじゃなかったことだけは分かる。
 勝手に涙が溢れてきた。私はユウくんにばれないように静かにしていたけれど、涙は頬を伝わり、シーツを濡らしていった。
「ミオちゃん泣いてるの?」
 その言葉が契機になって、私は肩を震わせた。
「ねえ、泣いてる?」
 そんなこと訊かないで。
「ニャア」
 私はふざけて、ネコのまねをして、彼にすがりついた。
「ニャアニャア」
 彼の胸が涙で濡れた。
 ユウくんは、私がなんで泣いてるのかなんてきっと分からないんだろうなと思う。私もよく分かってない。
 私のすがりつく反動で、ユウくんの体はベッドの中央に寝転んだ。
「わっ、冷たい」
 まだ湿っていたシーツがユウくんの体に触れた。
 私は笑った。涙を流した顔で私は笑いながら、ニャアニャア言い続けた。

 これが恋かどうかは分からないけれど、靖国問題と共に考えていきたいと思う。

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