09月5

立ち飲み屋のおばさん

いまでも高円寺にはいろいろな飲み屋がありますが、先輩とよくその界隈で飲んでいました。

もう30年以上前ですが、その日はあまり持ち合わせがなくて、先輩が安いところに行こうと言って、立ち飲み屋に連れて行ってくれました。
たとえばデンキブランが小さいグラスに一杯50円でした。

今はもうその店はありません。
だから書けるんですが、そこは50位のダメ親父の奥さんみたいな顔、別の言い方をすれば、鬼瓦みたいな顔のおばさんがカウンターに立って、お客の注文を聞いていました。

常連らしい職人風のおっさんが声を掛けました。
「ねえ、今度お花見に行かない?デートしようよ」

お客はほとんど男ばっかりで、おばさんは冷やかしに馴れているんでしょう。
ぶっきらぼうに答えました。
「馬鹿言ってんじゃないよッ」

おっさんの方を見もしないで、俯いたおばさんの顔は真っ赤でした。

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