07月20

木村クン戦記

大学の仲間10人くらいが集まり、おれの部屋で昼下がりから呑み会になった。

日本酒一升瓶2本、泡盛900ml、缶ビールは数知れず。
みんなでへべれけになった。
女の子3人は夕方には帰した。
残った野郎達も終電を気にして帰って行った。

あまり親しくはない木村という男が一人残った。
学科が違うので、普段接点は少ない。
家が千葉県で、帰る気力が無くなったから泊めてくれとのこと。
二人でダラダラ呑みながらしゃべった。

童貞かどうか、木村がネチネチと探りを入れてきた。
おれは面倒くさくなって、手短かに答えた。

中2の時に済ました。初体験は5つ年上の人で、生で中出しさせてもらった。それから1年半くらい可愛がってもらった。
高校では、後輩の子に告られて付き合い、抱き合うくらいはしたがエッチはしてない。
大学に入って、OLと付き合ったがフラれ、
最近、他の大学の彼女ができたが、エッチはまだ数回だけ、等々。
で、生涯のエッチ回数は今のところ果てしなく少ない。

そうしたら木村が「僕は、は、は、は、はたどーなんだ」とドモリながらつぶやいた。
おれ「はたどーって何?」
木村「ハタチで童貞ってこと」
おれ「20歳だったら、童貞でもまだ普通じゃん?」
木村「それはイヤだ。かっこわるいよ。それで、ハタドーにならないようにいろいろ頑張ったけど、出会い系は怖いからやめた方がいいよ」
おれ「見ず知らずの人といきなり一対一で関わるんだろ?嫌だよ。おれは絶対やんない」
と、首をブルブル振りながら笑った。

それから木村クンの出会い系体験談が始まった。

・初めて会う約束までこぎつけた。待ち合わせの場所に20分早く着いて待ったが来ない。
結局3時間待ったが来ない。連絡も取れなくなった。
(なんか切ないな。。)

・別の女と初めて会えた!すごいブスだった。
高級中華料理屋に誘われておごり。
貧乏学生にはちょっとつらいが、ひょっとしたら初彼女ゲットかもしれないしと喜んだ。
しかし、どうも会話がうまくいかない。話題を見つけられない。
呑みに行った。聞き役になろうとしたが、女は段々機嫌が悪くなってきた感じで、しゃべらなくなった。
会計して、次はひょっとしてラブホ? ハタドーから脱出だぁー!
しかし、呑み屋を出たら女は誰かと電話。用事が出来たから帰るとのことで解散。
その後、メールは繋がらず、電話もブロックされた感じでサヨウナラ。

・次は風俗嬢っぽい女。やはりブス。茶髪の髪が傷みまくり。かなり年上っぽい。
食べて呑んで、やはり会話が合わず駄目っぽい。
しかし!ラブホへ!!おおおおおお!!!
すげえすげえ!やったやった!!と、世界がグルグル回るような気分になったそうだ。
先に浴びててと言われ、喜び勇んでシャワーへ。
終わって出て来たら女はいない。
財布の金や銀行のカードなどが抜かれていた。もちろん連絡は取れない。
カードは停止にして作り直す羽目になった。その分の金もかかった。
(怖ぇ?。。)

・しばらく会える相手無し。そして、なななななんとJCが会ってくれることになった!!!
(しかし、よく懲りないね、木村クンってば…)
待ち合わせの場所に行ったら、いたーーー!!
背が低く、小太り気味。ちょいブス。
でも確かに若い!幼い! 見ようによってはカワイイかもしれない。
喫茶店に入ったが、やはり話は上手く出来ない。JCはうつむいて携帯をピコピコいじっている。
店を出て、渋谷の街をJCの行くままタラタラ歩く。
ラブホが多いところに来た。おおお!これは!!!

ラブホの入り口で、男3人に囲まれた。
ガテン系で金髪のでかい兄ちゃん。
小男だが目つきが凶悪な奴。
中学生くらいだが明らかに悪そうな奴。
金髪が携帯でこっちをカシャカシャ撮りだした。
何が起こったのか急にはわからなかった。
JCが、わあわあ叫んで、3人の側に走った!!
小男「俺の妹に何してんだよ!?」
悪そうな中学生「俺の彼女だ。てめえ殺すぞ!」
JC「無理矢理連れ込まれそうになった!」わあわあ泣く。
金髪「兄ちゃん、淫行だなw 警察行くか?」

逃げようとしたが捕まって、人気の無い公園の暗がりに連れて行かれる。
殴る蹴るのワンサイドゲーム。ボコボコにされて、有り金全部を取られた。
前回の教訓でカード類を持って来なくて良かったが、出せ出せと脅され殴られた。
写真を撮られているし、怖いから泣き寝入り。

それから出会い系はやっていないとのことだった。
ボコボコにされた時の傷が残っていた。

風俗で脱童しておけば良かった。その方が安上がりだったと、ブチブチと愚痴り続ける木村クンだった。

あのさ…普通の彼女を作れよ。大学には女の子がいっぱいいるし…

酒が不味くなった。もう寝よう…

木村クンは深酒し過ぎてトイレへ。ゲロ吐きの音がする。
それから2時間くらい立てこもった。寝てるのか?
ゲロで汚して現実逃避してやがるな、きっと。
頼むから出てくれ、後はなんとかするからと再三お願いする。
ようやくドアを開けた。中はゲロの地獄絵だった。。
泥酔野郎には、この掃除は無理だろう。
だからって立てこもるなよ。
おれは、ゲロの臭いにむせ、吐きそうになりながら掃除した。

すると、木村クンが風呂の排水口に向かってゲロを吐き出した。
ロクに噛んでいない大きなハンペンの塊やらいろいろ。
取れる限り除去したが、しばらくは排水がつまり気味になってしまった。

木村クンはようやく寝てくれた。
朝起きたら、木村クンは仰向けのままゲロを吐き、
枕代わりにしていた座布団にはゲロが積もっていた。。
座布団は捨てた。

おれはバイトに行かねばならないので、木村クンにも部屋を出るように促した。
木村クン「えぇ!? 気分悪いよ。こんな体調なのに外に出すの? しばらく居させてよ」
(やだよ!!!!!!)

駅で別れ、おれはバイトへ。
帰ってきたら、なぜか部屋の前にゲロがしてあった。

木村クンとはなるべく関わらない方が良さそうだ。
彼は相変わらず仲間達の中に混じって呑み、遠い千葉県には帰らずに、誰かのアパートに泊まっていこうとする。
アパート住まいのみんなも、帰らずに残る木村クンが重荷になっているようだ。
おれは木村クン込みの呑み会の時は部屋を提供しないようにしている。

出会い系の話を聞く度に、あの夜のゲロ地獄の光景と臭いを思い出してしまう。



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