√家から3キロほど離れたところに国道が走っている。その国道添いに居住地域と道路を隔てる県営の大きな森林公園が横たわっている。
この国道は関東でも屈指の大動脈なので、騒音の緩衝地帯という位置づけだろうか。その周りは倉庫や工場が立ち並んでいる。
実はここも変態さん御用達スポットだという情報をキャッチした私。とはいえ情報源はあの変態さん出会いサイトだけど。
早速今晩出向くことにした。とはいえ、アウェーで初回なので服装は比較的重装備。公園までは普通にジョギング。20分ほどで到着する。
この程度では息も上がらなくなってきた。うれしい副産物。
公園の入り口に立つ。「けんみんの森」とウサギやたぬきが描いてある楽しげなロゴの看板。ファミリー向けなのだろう。
しかしそれは昼間の話。今はその向こうに真っ暗な林道が続いている。
さすがに躊躇う。街灯すら無い。本当に真っ暗な道。吸い込まれそうな闇。
周りを見回す。国道を走るドーっという車の音。目の前の道は全く車が通らない。工場と倉庫ばかりで人影ももちろんない。
その場で足踏みを続けていた私は、意を決して林道に一歩を踏み入れる。しばらくギュッと目をつぶり10歩ほど進む。
そこで足をとめ、目を開けて周りを見回す。
まだそんなに進んでない。看板のうらが目に入る「またきてねっ!」ウサギとタヌキが手を振っている。
なんだか、この落差に「ふふっ」と笑いが出てしまった。自分の声を聞くとなんだか力が抜けて、森の奥に進む気力がわいてくる。
いつもそうだ。暗闇は、入るのはエネルギーが必要だけど、入ってしまえば自分も闇の一部。なんてことはない。
どんどん奥に進むと急に開けた場所に出た。おおきい広場のようだ。ここは木もないので月明かりがまぶしいくらいだ。
月って明るいんだなぁ、と思いながらジョギングをやめ、きょろきょろ辺りを見回しながら歩いて広場に入る。
やはり人の気配はない。この広場の奥はアスレチックになっているようだ。
やっと人口の光を見つける。街灯。アスレチックの池の向こうに何の脈絡もなくぽつんと立っていた。
夜に来た人が落ちないようにかな、と進めていた歩をふと止める。池の反対岸に人がいる。街灯の下のベンチ。
白の半袖に紺のスカート…。グレーの襟のセーラー服のようだ。あまりの場違いさに心臓が飛び出しそうになる。
目を凝らすと、その後ろの闇にシルエットが見える。がっちりとして背が高いシルエット。男の人?
その陰が手を伸ばしてセーラー服の彼女の肩に手をかける。彼女ははじかれたように立ち上がり、なにか大きな声で言うと闇の中に走り出って行った。
ワンテンポ遅れて彼女を追う男。二人とも闇の中に消えて行った。人の気配が消え静寂が戻る。
何がおこったの???
私はゆっくりと彼女が走って行った方向に歩く。もう声も姿も見えない。
再び暗い林道に出た。耳を澄ましゆっくりと進む。
5分ほど歩くとなにかの気配を感じる。声だ。人の声?鳥の声?私は音の方向を警戒しながら気配を消しゆっくりと近づく。
だんだん声が近くなる。林道から逸れた脇、大きな岩が転がっているがその向こうから聞こえてくる。物音を立てないようにそっと岩に近づき、
その向こうの様子をうかがう。予想外というか、ほぼ予想通りというか、所々破れた黒いストッキングの足がジタジタとしているのが見える。もう少し覗き込む、紺のスカート、もう少し、白地にグレーの襟のセーラー服。その上にまたがる男。さらにもうひとり、彼女の両腕を万歳させた形で押さえる男。
声は彼女のすすり泣きだった。何か布のようなものを口に押し込まれ両腕の自由を奪われイヤイヤと頭を振り足をばたばたさせる。
レイプ?あんな格好で深夜にこの公園にいたらそりゃ…。と思いながらも、自分も同類かもと思い、ブルっと震える。
一度頭を岩の陰に引っ込め座り込む。どうしよう…。スマホを取り出すも、あまりの明るさに慌てて電源を切る。びっくりした。
もう一度岩陰から頭をそっとだす。男がひとり増えていた。こっちを向いていたので慌てて顔を引っ込める。
バレてないよね?
彼女の泣き声が聞こえなくなり、布の刷れる音とガサガサ枯れ草を踏みつける音がする。
そのうち、彼女の苦しそうな声が聞こえてくる。そっと様子を見ると、男がスカートをめくり上げ、男は自分の手につばを吐き乱暴に黒ストの中に手を差し込み塗り込むように擦り付けた。彼女はいっそう足をばたばたさせ、ムームーと声を上げる。
横にただ立っていた男が足を押さえると、手をストッキングに突っ込んでいた男はストッキングの又の部分を乱暴に裂いた。手と足を押さえられて、完全に自由を奪われた彼女はしばらくは腰を諤々と動かし抵抗を続けていた。
カチャカチャと自分のモノを取り出すのしかかっている男。もう彼女は観念したようにもう頭も振らず泣き声を漏らしている。
みてられなくなり再度岩の陰に身を隠す。早くこの場から離れないと…。離れて通報…。
こもった泣き声が一層高くなり、続いてむぐぅと彼女のこもった声が聞こえる。何がおこっているかは見なくてもわかる。
苦しそうな彼女の声がしばらく続く。どうしよう。もう一度岩からそっと覗く。男の尻が彼女の黒すとの間で前後に揺れているのが見えて、さっとまた岩に身を隠す。
どうしようどうしよう…。しかし、しばらくして私はその中に艶のある声が混じって来たことに気がつく。
え?再度、そーっと岩から覗き込むと、彼女は四つん這いで後ろから攻められ、前に立っている男のものに口で奉仕をし、さらにもうひとりのものを手でゆっくりと擦り恍惚の表情。…早まった行動をしなくてよかった。
私はゆっくりとその場を離れようとする。あんまり人のセックスには興味なかった。なんかこう、もっと見ちゃ行けないものが見たいのよね。
林道に出る途中で、なにか大きな枝を踏み抜いてしまった。枝の折れるバキッという大きな音とともに私も転んでしまう。ガサガサと枯れ葉が大きな音を立てる。
「誰か居るぞ?」
ガサガサとこっちに音が近づいてくる。膝に着いた汚れもそのままに私は林道を転がるように走った。
途中、何度か林を横切り、さらに細い林道に出て後ろを伺う。懐中電灯の光が50mくらい向こうに見える。
気配を出さないように姿勢を低くしてさらにゆっくりと進む。
少し進むと、大きな鳥居を見つける。不気味。これだけ不気味なら探す方も敬遠するだろうというくらい不気味。
ゆっくり、物音を立てないように、懐中電灯の明かりの行方を気にしながらそーっと鳥居をくぐる。
中は雑草も刈られていない、木が立っていないのでかろうじて何かの境内ということがわかる程度。なぜ境内とわかるかというと中央に小さいほこらがあるから。
このほこらと鳥居が無ければ雑木林の一部だ。
私はその朽ちかけたほこらの裏に身を隠す。
昔から私は廃墟が好き。何が好きかって、理由はわからない。なんだかエロスを感じていた。
廃墟を見るとものすごくエッチな気持ちになる。
そういう気持ちは、エッチに目覚めるよりさらに昔からあった。小学校低学年の頃、家族で旅行に行ったホテルの隣の建物がものすごい廃墟で、それを見ているとなんだか下腹のあたりがモヤモヤしたのを覚えている。
このほこらからはなんだかそれと同じものを感じる。こんな小さな建物なのに。
あたまがぽーっとしてくる。さっきの黒ストッキングの伸びた足がジタジタと暴れている光景。男の人が女の人の上に馬乗りになり、力づくで奪い取ろうとする光景が頭をよぎる。
服の上から胸をそーっと撫でる。もう既にあそこはしっとりと濡れているのがわかる。
ショートパンツの上から手で覆うように優しく撫でる。
大きく息をついてしまい慌てて口を手で押さえる。再び静けさが戻り、私は行為を再会する。
あ、軽くイケそう。足を伸ばし、ほこらの壁に寄りかかる。ギシィと腰をかけているほこらの床が鳴る。
もう少しなので今度は手を止めずに行為を続ける。そのときサーッと反対側の草むらを懐中電灯の光が撫でる。
血の気が引く。すぐ近くまで来ている。
でも手が止められない。「ダメなのに…、見つかっちゃう」
ダメなのにダメなのにダメなのにぃ!!
頭の中が真っ白になる。ぴくぴくと体が震える。
もう…いいや…。
ぐったりとして、ほこらの壁に頭を預ける。
…何分そうしていただろうか、結局見つかることはなかった。
すーっと冷たい空気を感じて冷静になる私。車の音が近くで聞こえる。ゆっくりと立ち上がると、草むらの向こうを車が通って行くのが見える。
もう公園の方向に戻る木にはなれず、私は草をかき分け通りまで抜けた。
帰りは行きの3倍の時間をかけて家まで帰った。
翌日、学校で森林公園の話をふってみる。奥の神社の話は誰も知らなかった。あの公園自体は地元小学校の遠足で使用されていることもあり、誰もが知っていたが、アスレチックより奥に行ったことがある人がそんなに居なかった。
そんな話をしていると、子供の頃から地元にすんでいるという社会科の先生がその神社のことを話してくれた。
小さい頃、そこは邪教系の神社で近づいては行けないと良心に言われていた。丑の刻参りがはやった時期があって、夜は結構にぎわっていた…。という笑えるのか笑えないのかよく分からない話を、笑い話にして聞かせてくれた。
邪教、怪しい呪術、儀式、生け贄、なんだかドキドキした。
その日の夜、なんだかあの公園にまた行ってしまいそうで、久々にジョギングをさぼった。
布団に入り電気を消すと、生け贄にされる自分の艶かしい姿を想像してドキドキした。なかなか寝付けずにうつらうつらしては目が覚め、時計を見る。を繰り返す。
まだ10分しか経ってない…。
浅い眠りを何回か繰り返し、そんななかでも夢を見た。はぁはぁときれる自分の息。暗い林道を走る。
何かから追われている。にげてもにげてもそれは近づいてくる。手が肩にかかり引き倒される。
うつぶせに倒れ、なお逃げようとする私。足を掴まれ引きずり込まれる。
そこで目が覚めた。汗でしっとりと前進が濡れている中、なぜかおまんこもグシャグシャに濡れていた。
わたし、ああいうのを望んでる?
いやいや。頭を振る。時計を見る。まだ0時ちょっと過ぎ。全然時間が経ってない。
もう少し疲れないとダメか。やっぱり1時間くらい走ろう。と、一番簡単なスパッツとTシャツに着替え、帽子を被り外に出る。
廊下で母に会った、出るなと言われるかと思ったが、「やっぱ走んないとダメだわ」というと、暗いところには行かないで、お風呂の火は消さないでおくね。
と声をかけられただけだった。
いつもの公園の周りを一周して帰ろう。そう思ったのに、外の空気に触れると頭がぽーっとしてくる。悪い病気だ。
気がつくと足が森林公園に向かっていた。
あの陽気な看板の前で大きく息をつく。
だめだよ。あそこに行ってはダメ。なんとなく本能がそう訴えてくる。でももう太ももは汗ではない体液でヌルヌルになっている。
改めて見るとスポーツブラをした胸はTシャツの上からノーブラのようにはっきりと乳首がわかる。
表口を素通りし、昨日脱出した茂みのあたりまでくる。
茂みにガサガサと入り込みほこらを目指す私。後少し。
茂みを抜け朽ちかけたほこらを見ただけで蕩けそう。ぺたんとその場に座り込んでしまう。腰が勝手に動く。
ふと気配を感じてほこらから視線を鳥居に向け私はぎょっとする。
誰か立っている。その陰はこちらにさっと近づくと、私に話しかける。
「馬鹿め!完全に邪なモノに見入られおって!」
かれは私の後ろにさっと滑るように移動し背中をバンバンと二回叩くと
「破ぁーーーっ!!」
と大きな声を上げる。するとあたりが青白い光に包まれた。
・・・・・・と、ここで目が覚めた。鳥のさえずりが聞こえる。窓からの朝日がまぶしい。今日はいい天気みたいだ。
んーっと伸びをするわたし。
「…やっぱ、寺生まれは違うわ」
わたしはまぶしい窓を目を細めて見ながら誰にいうでもなくつぶやいた。
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