05月5

はまった男

出会い編1

深セン駅の入り口、王○が涙を浮かべ、入り口にむかいながら
何度も振り返る。僕が引き留めるのを、かすかに期待してるよ
うに。僕との距離がだんだん開いてくる。しかし僕は立ちつく
して引き留めることは出来なかった。また同じことの繰り返し
だ。もう2回も騙されたんだ、あいつは悪い女なんだ、と心に
言い聞かせた。

これは僕が体験した実話です。かなりの長文になります。批判
中傷、荒らしさん大歓迎です。どんどん書き込んで下さい。

僕と王○が初めて出会ったのは今年の1月12日香港でだ。
僕の簡単な自己紹介をすると歳は30前半、小さな会社を経営
している。社員は4人、独身、容姿はまあ普通だろう。この時
彼女はいない。

中国関係の仕事も業務の一部としてやっている。今回、仕事で初めて香港に行った。社員二人引き連れて、1月11日から13日のハードスケジュールだったが、思ったより仕事がはかどり、2日目の夕方にはだいたい仕事が終わった。

少しお腹がすいたので3人で近くにあるマクドナルドに入った。
食べ終わり、タバコを吸おうとくわえたら、店員に「ここは禁煙だから外で吸ってくれ」と言われたので、店の外でタバコに火をつけた。タバコを吸っていると、派手な化粧をした3人のお姉ちゃんが近づいてきて、中国語で話しかけてきた。

どうやら、火を貸してくれと言ってるみたいだったので、火をつけてあげた。「サンキュー」と言って、僕の隣で吸い始めた。3人の姉ちゃんの1人が、ものすごく可愛かった。カワイイ子だなーと少し見とれていたら、彼女が気付いて笑いかけてきた。話しかけたかったが、僕は中国語がほとんど出来ない。彼女たちはタバコを吸い終わると、マクドナルドの隣の建物に入っていった。

社員2人も食べ終わり、最後の商談に向かった。夜、8時頃最後の商談が終わり、最後の夜ということで美味しいものを食べてその後カラオケに行くことになった。取引先の香港人も一緒に来てくれることになった。
食事も食べ終わり、香港人お薦めのカラオケ店に行くことになった。

中国のカラオケは、大連の中式、日式に何度か行ったことがある。
大連の中式は店が豪華で、女の子も150人位いて、とても楽しかったので、香港ならもっとすごいんだろうと期待していたが、思ったより小さい店で少し拍子抜け。しかし、この店、夜だから気付かなかったが、夕方来たマクドナルドのすぐそばだ。
それにこの店、あの3人組が入っていった建物の中にある。個室に入り、店長がやって来た。

店長 「ちょっと待っててね、すぐ女の子連れてくるから」  

私たち 「カワイイ子を頼むよ」 

店長 「OK、OK」 

待つこと5分、美女軍団が僕たちの部屋を埋め尽くした。

思わず「あ!!!」と声をあげてしまった。マクドナルドで火をつけてあげた、あのカワイイ子がいた!!彼女も気付いたらしく、口に手を当てて驚いていた。

僕は迷わず彼女を指名した。

出会い編2

僕は少し運命的なモノを感じた。僕は中国語が出来ないので、会話が出来ない。
香港人に通訳をお願いしようとしたが、自分の世界に入ってしまって、頼みづらい。社員2人も中国語は出来るが、自分たちで盛り上がっている。

仕方ないので、筆談で話すことになった。彼女の名前はメリー。もちろん店用の名前だ。歳は21歳、大連出身、香港にはカラオケの仕事で来ているらしい。
僕が大連に何度か行ったことがあると言うと、喜んでいた。

背が低くて、目が大きくて、だんごっ鼻。痩せているのに服の上からでも胸が大きいとわかる。髪の毛が茶髪と言うよりは金髪だ。しかし、それがまた似合う。
隣で彼女をよく見ると本当に可愛い。一生懸命大人造りをしているが、化粧をおとしたら子供っぽい顔をして、あどけなさが残ってるような感じだ。

ただ、大連出身の女の子とは思えなかった。どちらかと言えば南の方の顔をしている。まあ、そんなことは気にも留めず、メリーと筆談した。

ここの店は

個室料が2時間で1000香港ドル

飲み物代別

女の子のチップ500香港ドル

お持ち帰り2時間で1500香港ドル

朝まで2500香港ドル

大連に比べて相当高いが、女の子のレベルは段違いに香港のほうが上だ。
中国本土で、私こそは一番可愛いと思っている女の子が香港に集まるのだから当然なのだが。

あっという間に2時間が過ぎた。社員2人はお持ち帰りするらしい。
僕もメリーをホテルに連れて行きたかったが、つまらないプライドが邪魔をした。1人で来ていたら躊躇無く持ち帰るくせに、社員の前ではどうしても自分を押さえてしまう。

社員 「社長はこの子持ち帰らないんですか?」  

私 「いや、俺はいいよ」 

社員 「どうしてですか?こんなカワイイ子、持ち帰らなくちゃ損ですよ。俺、通訳しますよ」 

私 「いや、本当にいいんだ」 

本音とは違う言葉が出てしまう。しかし、メリーともっと一緒にいたい。そこで私は 

私 「じゃあ、ディスコに行こう。一緒に踊って欲しい、と伝えてくれ」 

社員 「わかりました」 

社員がメリーに伝えている。メリーが拍子抜けな顔をしている。当然、ホテルに連れて行かれると思ったのだろう。

メリー 「OK、レッツゴー」私の方を見ながらそう言った。

会計はカードで支払った。当然メリーの持ち帰り代も含まれていた。社員2人と女の子達がタクシーに乗り込む。香港人も「じゃあ」と言ってタクシーに乗り込んだ。私はホッとした。これでメリーと2人きりだ。とりあえずタクシーに乗ってディスコに向かったが、その途中、ディスコみたいなうるさいところではなく、静かなところでメリーと過ごしたいと思い、僕はお腹を押さえて「チーハン、チーハン」と言った。メリーもお腹がすいていたらしく、「OK、OK」と言った。

喫茶店に入り、サンドイッチとコーラーを注文した。明るいところでよく見ると本当に可愛い。
僕は携帯電話をとりだし、メリーの写真を何枚も撮った。メリーは撮った写真を見せてくれとゼスチャーしたので、一緒に見た。

一枚一枚見るたびに、「ピョウリャン マ?」と笑いながら聞いてくる。

僕は「ピョウリャン!」と何度も答えた。

そして、また筆談で話がはじまった。

私 あなたは今恋人いる? 

メリー いないよ、あなたは? 

私 僕もいない。 

メリー  結婚してないの? 

私  してないよ。 

メリーがウソでも恋人がいないと言ってくれて良かった。
ここで恋人がいると言われたら、会話(筆談)が続かない。
 
メリー  あなた、明日何時の飛行機で帰るの? 

私  2時頃 

メリー  私は空港まで行けないけど、気をつけて帰って 

そうだった。明日の昼にはもう香港にいないんだ。柄にもなく、少しセンチになっていた。

私  メリーの電話番号と、誕生日を教えて 

メリー  OK、こっちが香港の番号、こっちが中国の番号、誕生日は3月○日 

メリーが書き終わる前に、僕は日本で行きつけの中国クラブのママに電話していた。

私 「あ、ママ?今香港から電話してる。」 

ママ 「え?香港にいるの?こんな時間にどうしたの?」 

私 「ママ、悪いんだけど通訳してほしいんだ。」 

ママ 「こんな時間に通訳?別にいいけど、なんて伝えればいいの?」  

私 「ママは、僕の友達ということにしてくれ。僕は明日(もう今日になっていた)日本に帰るけど、日本に帰ったら必ず電話する。そしてあなたの誕生日に必ず会いに来る。会ってくれますか?そう伝えて欲しい。」

ママ 「そう伝えればいいのね?わかった、彼女にかわって。」 

メリーに携帯を渡した。メリーが笑いながら頷いている。
その時の会話はこんな感じだったらしい。 

ママ 「私はTさんの(私のこと)友達だけど、彼あなたに一目惚れしたみたい。絶対、誕生日に会いに来るから会ってくれますか?」 

メリー 「ホントに?信じられない。会いに来てくれれば嬉しいけど」 

ママ 「彼のことはよく知ってるけど、ウソつく人じゃないよ。ほんとに会いに行くと思う。会ってくれる?」 

メリー 「でも、どこで会えばいいの?私、香港にはあと2週間しかいないけど」 

ママ 「誕生日はどこにいるの?」 

メリー 「私は大連出身だから、大連にいると思う。」 

ママ 「じゃあ、大連で会えばいいじゃない。そうしよう!じゃあ、彼にかわって。」 

メリーが携帯を僕に渡した。

ママ 「伝えておいたよ。誕生日は大連で会いましょうって言ってるよ。」 

私 「会ってくれるんだ、よかった!」

ママ 「でも、気を付けた方がいいよ。会えるかどうかわかんないよ。彼女ちょっと嘘つきかも・・。」 

私 「え?どうして??」 

ママ 「彼女、大連出身って言ってるけど、彼女の言葉は大連じゃないな。たぶん南のほうの人だよ。訛りが南の方だもん。」 

私 「・・・・・・」 

ママ 「騙されないようにね。」 

と言って、電話を切ってしまった。

ママは上海出身で、店で働いている女の子は、大連出身の子もいる。
他にもいろいろな所からやってくる。そのママが南出身の子だと言えば、間違いないだろう。
どうして大連出身なんてウソを吐くんだろう?僕は考えてしまった。僕に会いたくないからウソを言ってるのだろうか?もし、大連出身というのがウソなら、誕生日に大連に行って
も会えないだろう。

黙っているとメリーが筆談してきた。どうやら日本のお金を見せてくれと言っているみたいだ。

僕は少しがっかりした。大連でも同じ事を言われたことがある。そして、記念に頂戴とか、珍しいから頂戴とか、言ってくるのだ。僕は、メリーは頂戴と言わないで欲しいと思いながら
一万円札を見せた。千円札にしなかったのは、僕のつまらないプライドだ。

メリーは珍しそうに一万円札を見ている。(これは演技だと思った)
そして、このお金頂戴!と言ってきた。やっぱり・・・・。まあ、いいや。

どうぞと僕は言った。しかし気分が悪い。一万円くらいなら、それほど目くじら立てる金額ではないのだが、頂戴!と言われるのが嫌なのだ。

自分から任意であげるのなら構わないのだが、あからさまに頂戴!と言われると、気分が悪い。

そうなると、優しさが薄れてくる。僕は心が狭い男なのかもしれない。

もうすでに、午前2時半、社員達も寝ていることだろう。僕はメリーに 

私 僕の泊まっているホテルに行こう 

メリー え? 

私 メリーとずっと居たいんだ、行こう! 

メリー ・・・OK。 

僕は会計を済ませると、タクシーに乗りこんだ。

移動の間、メリーは黙っている。ホテルに着いた。僕達が泊まっているホテルはあの韓国のスーパースター、ぺ・ヨンジュンも泊まった事がある五つ星ホテルだ。部屋もさすがに広い。

メリーが先にシャワーを浴びた。メリーが出てきた後、僕も入ろうかと思ったが、財布を金庫の中に入れるのを忘れていた。

メリーが見ている前では、さすがに入れにくい。
メリーも傷つくだろう。

しかたなく、僕はシャワーを浴びずにメリーに迫って行った。メリーは、しきりに、「シャワーを浴びて!!」と言ってるが、僕は耳に入らず、そのまま僕とメリーは結ばれた。

お客、売春婦の関係で・・・。

朝、起きるとメリーが帰り支度を始めていた。残念ながらメリーに夜の優しさはない。

仕事が済んで早く帰りたがってるようだ。僕も起き出し、顔を洗って、歯を磨いてるときに、メリーが、独り言のように小さい声で

「GOOD BYE」

と言って、部屋を出て行った。僕は慌てて口をゆすいで部屋に行ったが、もう、メリーの姿は無かった・・・。

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香港で結ばれ別れた二人・・・

これから二人はどうなるのか?

遠距離大恋愛編 1

夜の7時頃成田空港に到着した。会社に着いたのは夜11時。簡単な打ち合わせをして解散した。

僕はそのまま家に帰らず、中国クラブのママの店に向かった。

ママ 「いらっしゃい、帰ってきたんだ、お疲れ様。」 

私  「通訳有難う、助かったよ。」 

ママ 「どう?彼女と上手くいきそう?」 

私  「どうかな?まだわかんないけどね。それで、ママまた通訳してもらいたいんだけど。」 

ママ 「いいよ、なんて伝えるの?」 

僕は、店の外にママを連れ出した。あんなうるさい店の中ではメリーに誤解されてしまう。
僕はドキドキしながらメリーの香港用の番号にかけた。

ママ  「あ、私、Tさんの友達だけど、メリーさん?」 

メリー 「今、仕事で忙しいから、30分後にかけて!」 

電話が切れた。 

ママ 「・・・彼女、仕事が忙しいってさ。30分後に又かけてくれって言ってる」 

私  「・・・・・」 

ママ 「こんな時間に仕事って、彼女何の仕事してるの?」 

私  「・・・・・」 

ママ 「「メリー」って名前も普通じゃないよね。」 

おそらくカラオケ小姐と気づいたと思うが、ママはそれ以上聞いてこなかった。
しつこくないのが、このママの良いところだ。そして30分後、又電話してくれた。 

ママ  「Tさんの友達だけど、あなたに会えてよかった。また、早く会いたい。
     あなたの誕生日には必ず会いに行くから、会って下さい。」 

メリー 「わかってる、大丈夫。私の誕生日には絶対、大連に来てください。
     私も楽しみにしています。」 

ママ  「Tさんは、いい人だからウソ吐いたりしないでね。」 

メリー 「わかってる、大丈夫。ところでTさんて、結婚してるの?」 

ママ  「いいえ、独身よ、どうして?」 

メリー 「本当に独身だったんだ・・・。そうですか・・・。でも、恋人はいるでしょ?」 

ママ  「いないと思う、だからあなたに恋したのよ。あなたはどうなの?恋人いるの?」 

メリー 「私も、今はいない・・・。」 

ママ  「Tさん、喜ぶわよ。ほかに伝えることある?」 

メリー 「遠くまで出張して疲れたでしょう?」 

ママ  「あなたに会えたから 疲れなんか、どっかに行っちゃったですって、フフフ。」 

メリー 「キャハハハ。」 

ママ  「あなたの写真見たわ。とても可愛い。
     Tさん、自慢しまくりで、こっちが困っちゃう。」 

メリー 「恥ずかしいな、あまり人に見せないで。」 

ママ  「ブスな子だったら、Tさん見せないわよ。」 

こんな会話でも、僕はときめきを感じた。学生のとき恋したような、そんな感覚だろうか。
通訳のお礼に、もう1時間だけ飲んで店を出た。

遠距離大恋愛編 2

1月15日、携帯の写真をメリーの分と2枚ずつ現像した。やっぱり可愛い。
その中でも一番可愛いと思った写真を、A4サイズに引き伸ばしてもらった。

メリーの誕生日まで約二ヶ月、長いなあ、早く会いに行きたいが仕事の都合もあるし、メリーの都合もあるだろう。

僕はその夜、ママの店に行き、また通訳をしてもらった。
どうやら、メリーはママに日本への国際電話のかけ方を聞いてるみたいだ。
一度、僕の携帯に電話をしたが、つながらなかったそうだ。そのことを聞いて僕は少しホッとした。

日本への国際電話のかけ方も知らないようじゃ日本にパパはいないみたいだ。まあ、もし日本にパパがいたら、少しは日本語
が話せるだろうから、全く日本語が話せないメリーにパパがいるわけない。

それから一週間後の1月22日、僕の携帯に通知不可能で電話がかかってきた。

僕は、香港の取引先からだと思い、電話に出た。 

私 「はい、Tです。」 

相手 「・・・・・・ウェイ?」 

相手が誰か、すぐにわかった。香港の取引先の人は、
絶対に「ウェイ?」などと言わない。

私 「メリー?」 

メリー「T・・・?」 

・・・・・期待した通りだった。

日本語がまったく話せないのにメリーが電話をかけてきてくれた事が心から嬉しかった。

会っていれば、筆談、ゼスチャーでいくらでも会話できるが、
電話だとお手上げで、僕の中国語では、2分間の会話が限界だ。
そして、もうとても3月まで待てない。何とか大連に行けるように、スケジュールをくむことに決めた。

後は、メリー次第だ・・・。

遠距離大恋愛編 3

次の日の1月23日、仕事が終わった後、ママの店に向かった。
店にはいると、相変わらずうるさいカラオケの音、話し声。
メリーみたいに可愛い女の子など、いやしない。日本の中国クラブは、どうして可愛い女の子がいないのかと、不思議に思う。

こんな女の子達じゃ、香港、大連にいたら、指名など取れやしないだろう。

メリーみたいな可愛い女の子達が売春をして、日本に来ている可愛くない女の子達は、会話するだけで稼げる。

メリーも日本に来れれば、売春などやらないで済むのに。
売春などやらなくても、お客の隣に座って話すだけで、いくらでも稼げるからだ。

ようは、日本に来た者勝ちなのだろう。

ママの店のNo1は、21歳の学生で、1月に80万円+お客からのプレゼントを貰っている。

メリーと比べれば、遙かにメリーのほうが可愛い。

ママにまた通訳を頼んだ。

ママ  「Tさん、あなたの誕生日まで待てないって。仕事の都合がついたから、すぐにでも会いたい。日にちは、あなたに合わせるから、会える日を教えて。」 

メリー 「本当に?どうしよう、2月1日以降だったら大丈夫だけど・・・。」 

ママ  「じゃあ、2月1日にしましょう。Tさんも大丈夫だって言ってる。」 

メリー 「あ、でも私お正月、実家に帰らないといけないから、2日間しか会えない。」 

僕は、メリーが会いたくないからウソを言ってるのかと思った。

ママ  「実家って、どこなの?」 

メリー 「福建省の田舎のほう。」 

ママ  「え?あ、そうなの・・・。Tさんも一緒に福建省に行きたいって言ってるけど、どうする?」 

メリー 「え?本気なの??でも、田舎だから何もないよ、行ってもつまらないよ。」 

ママ  「彼はあなたに会えるだけで楽しいのよ。田舎でも、都会でも関係ないと思う。」 

メリー 「わかった、2月1日航空券が取れたら、何時の飛行機か教えて。空港まで迎えに行く。絶対に行く!」 

これで、メリーが南の訛りがあるのが理解できた。今は大連に住んでいるが、生まれも育ちも福建省なのだ。

一年前、お父さんの仕事の都合で、大連に来て、お父さんはもう福建省に帰ったが、今年7月まで大連の住んでるマンションは、お父さんの会社が家賃の半分を持ってくれるから、メリーはしばらく大連にいるらしい。

いちいち説明するのが面倒だから、大連出身と言ったのだろう。

ママ 「彼女、ホントに大連に住んでいるんだね。ウソじゃなかったんだ。」 

私  「そうだね。」 

ウソはついていなかった。このことに関しては・・・。

遠距離大恋愛編4

2月1日、大連空港に着いた。大連は以前何度か来たことがある。

香港空港に比べると、なんとまあ小さくて可愛い空港だろう。荷物を受け取り、メリーを捜していると、女の子が笑いながら近づいてきて、僕の荷物を持とうとした。

メリーだった。

しかし、香港で会った時とは感じが違う。化粧をしてないせいか、妙に子供っぽい。

女の子は化粧で変わるとよく言うが、その通りだと思う。

再会を喜び合い、タクシーに乗り込み、スイスホテルに向かった。
以前、通訳でお世話になったYさんは、まだ働いているのだろうか?
スイスホテルに着き、両替をし、チェックインの手続きを済ませて部屋に入った。
Yさんは、スイスホテルを辞めて、日系の会社に勤めているらしい。

僕はメリーの本名が知りたかった。
メリーが身分証明書を見せてくれた。
そこには福建省の住所と名前、写真、生年月日、証明書番号(っていうのかな?)の長い数字が記されていた。

名前は王○。誕生日、歳、王は僕にウソを言っていなかった。正直なコなのかも知れない

この時はそう思った。

僕は知り合いの李さんに電話をして、通訳をしてくれないかと頼んだ。
日本から電話したときは、通訳をしてくれると言っていたがとにかく中国人は、約束を守らない。

とりあえずお腹がすいたので夕食を食べにいき、その店で通訳の李さんと待ち合わせをした。
李さんは、もともと上海の日本人クラブでチーママをやっていた人で、今は金持ちの香港人と付き合っている。

毎月3万元もらっているそうだ。(本人が言ってるだけで本当かどうかわからない)
背が高くて大人っぽく、美人だが、やたら気が強い。注文して料理が運ばれてきたときに、李さんが来た。

相変わらず派手で大人っぽい。王とは対称的だ。3人で食事をしたが、いまいち盛り上がらない。

後になってわかったのだが、李さんが、王のことをバカにしていたようだ。

王が李さんの服をほめると「高くて、あなたには買えないわよ。」とか、「こんな簡単な日本語もわからないの??」「こんなに疲れる通訳初めて。」「あなた、何もしないで日本に行けるかもね。」などと言ってたらしい。

王の口数が少なくなり、

王 「疲れたから、ホテルに戻るね。Tさんと李さんはゆっくり食べて。」 

私 「じゃあ、僕も一緒に戻るよ。」 

王 「いい、1人で戻る。ゆっくりして。」 

王は僕からカードキーを受け取り、1人で店を出て行った。僕は王の勝手な行動に少し頭に来ていた。

せっかく通訳してくれている李さんにも失礼だ。食事が終わると、李さんにお礼を言い通訳代として300元渡し、ホテルに戻ろうとした。

最後に李さんが「彼女はまだ子供ね。」とバカにしたように言った。

その言葉を聞いて、ひょっとしたら王は食事の間、イヤなことを言われたんじゃないか?李さんにバカにされたんじゃないか? 僕が中国語がわかれば、こんなことにならないのに。

僕はスイスホテルに急いだ。

部屋の中で1人でいるのは寂しかっただろう、僕が部屋にはいると王は抱きついてきた。

僕は「ごめんね。」 とあやまった。

王は「李さんは悪い人、もう会いたくない!!」と言った。

中国女性は面子を重んじるので(中国男性よりも)、よほど恥をかかされたと思ったのだろう。

僕はバックの中からお金を取り出した。1日1000元で計算して×7日間=7000元を渡した。

それが多いのか少ないのか僕にはわからない。王は「ありがとう。」と言って、急に機嫌が良くなり、そして強引にキスをしてきた。

そのまま僕は王をベットに押し倒した。

遠距離大恋愛編5

行為が終わった後、僕は現像した写真を渡した。
王は楽しそうに見ている。
どうやら、お気に入りの写真があったようだ。

その写真は、僕も一番可愛いと思って、A4サイズに引き伸ばした写真だった。
僕は、額に入れたA4サイズに引き伸ばした写真を渡した。王が驚いてる。

 「どうしてこの写真が一番気に入るとわかったの?」とでも言いたげな表情だ。

僕は今回はデジカメを持ってきた。もちろん王をたくさん撮るためだ。
僕は王にカメラを向けたが、王は「ダメ!撮らないで!」と言って洗面所に行ってしまった。

何をしに行ったのかと思えば、一生懸命、化粧をしている。
僕といるときは化粧は必要ないが、写真を撮るときは、化粧が必要らしい。

約30分後、綺麗に厚化粧をした王が出てきた。

その顔は、香港で売春婦をしていたときと同じ顔だった。
イヤな顔だ。僕はその時のことを思い出したくない。

私 「化粧してないほうが可愛いよ。」  

王 「あなたは、化粧してないほうが好き?」  

私 「好きだよ。」  

王 「OK。」 と言って、また洗面所に戻って、顔を洗ってる。
せっかく化粧した顔を洗い流してるのだ。
僕は王に悪いことを言っちゃったなと思った。
そして王の素直さに心が惹かれた。

化粧を落とした普通のコ(それでも王より可愛い子は、そういないと思う)が目の前にいる。
僕は王に何度もキスをした。キスするときは口紅なんか、ないほうがいい。
そして、スッピンの王の写真を何枚も撮った。

王に「あなたの写真も欲しいから撮る。」と言われないのがちょっと残念だった。

夜の10時頃、王が「お腹がすいた。」と言いだした。
そういえば、王はさっきの店であまり食べていない。
僕はIDを取り出し、「何が食べたい?」と聞いた。
王は”鉄板焼大漁”の炎が上っている写真を見て、「この店に行きたい。」と言った。

二人でタクシーに乗る。王がタクシーの運転手と何か話している。

タクシーの運転手が「リーベンレン、何とかかんとか!」と言っているが、何を言っているのか僕にはわからない。
口調から日本人の悪口を言ってるのかと思った。僕は心配になって、王に「彼は、日本人嫌い?」 と言ったら、王が笑いだした。

どうやら僕のことをカッコイイと言ってくれていたようだ。

僕は「オー、シェシェ!」と運転手に握手を求めた。
その行為を見て、王が大笑いしていた。

次の日の2月2日、朝8時頃目覚めた。
僕が歯を磨いていると、王が後ろから抱きついてきた。そして、僕の隣で歯を磨き始めた。
前回、香港で会ったときは、さっさと帰ってしまったのに、今は隣にいる。

まるで、恋人同士だ。

不思議なことに、王は僕の前で服を脱いだり、着たりしない。
洗面所で着替えをするのだ。どうしてだろう。

軽く朝食を食べようと思い、僕たちは外に出た。冬の大連は寒い。
日本の東北地方と同じくらいの気温だろうか。
王がはしゃぎながら腕を組んできた。王はこの寒さが平気なのか?
僕は正直、5、600メートルしか離れてないケンタッキーに行くのも一苦労だった。

ケンタッキーで朝食をとっていると、王が「後で買い物に行こう。」と言い出した。
僕は、(来たな・・・)と心の中で思った。
何が欲しいのかわからないが、4000元までなら買ってあげて、それ以上だったら断ろう。

癖になると困る。

ゆっくり食べ終わると、買い物に向かった。また、寒い外を歩き出した。
僕は「あなたは寒くないの?」と聞いたら、王はペロッと舌を出し、ズボンの裾を少しめくった。

なるほど、上下とも、したにもう2枚着ているのか。

デパートに行くのかと思いきや、ケンタッキーから目と鼻の先の勝利広場に入っていった。
少しホッとした。ここなら高いものはないだろう。
しかし、以前、勝利広場に来たときもそうだったが、昼前なのにやたら人が多い。
それも若い連中だ。この連中は、昼間からプラプラしていて、仕事をしてないのか?不思議に思う。

王と手をつないで歩く。歩くと言うよりも引っ張られてる感じだ。
王はニットのパジャマを手に取った。王が上下とも服の下に着ているような物だ。
王は 「服の下に着れば、もう寒くないよ。」と言っている。
次に王はダウンジャケットを手に取って、僕に着せてくれた。
前のチャックをしめて、「ん、ハオカン!」と言った。僕は苦笑した。
まるでお母さんが、子供に服を選んで、着せているみたいだ。僕のほうが一回り年上なのに。

結局、ニットのパジャマとダウンジャケットを買った。
会計の時、僕が払おうとしたら、王が「ここは、私に任せて。」と言って出してくれた。

でも、払っているお金は、昨日、僕が王にあげたお金だ。
どうやら主導権は王に握られてしまったようだ。

ほかの、中国女性と付き合ってる日本男性も、こんな感じなんだろうか??
(これ、真面目な質問です。アドバイス頂けたら嬉しいです。)

買ってもらった服を、早速、僕はトイレの中で着た。
うん、暖かい。これなら外を歩いても大丈夫だろう。

僕の服を買ってもらったお礼に、「あなた、何が欲しい?」と王に聞いた。

王は「No1マイホーム  No2フィアット  No3オメガ  No4IBM  No5ニー。」

僕は驚いて「ハァ!!!???」と大声を出した。
王は大爆笑しながら「フゥ シュウオ、フゥ シュウオ!」と言ってる。

でも、「1家、2車、3時計 4パソコン 5僕」、一応5番目には入ってるワケか。

嬉しいような、残念なような。

昼食は勝利広場の3階の中華料理レストランで食べることにした。
前にも来たことがあるが、ここの火鍋とチャーハンは美味しい。料理が運ばれてきた。
王は痩せているのによく食べる。そして、テーブルの上に、平気で肉や魚の骨などをぺッぺッ捨てる。
こんな可愛い子が、と思ってしまう。違和感あるなあ。

昼食を食べているとき、王の携帯に李さんから電話があった。王が露骨にイヤな顔をした。
どうやら李さんは僕に代わってくれと言ってるようだ。

僕   「もしもし、昨日は通訳ありがとう。」 

李さん 「どういたしまして、今どこにいるの?」 

僕   「勝利広場でご飯を食べてる。」 

李さん 「え、本当?私も近くにいるから、そっちに行ってもいい?また、通訳してあげる。」 

僕   「え?悪いからいいよ。筆談と僕の中国語で何とか通じてるから。」 僕はあわてていったが 

李さん 「遠慮しないで、今日は時間あるし。」

僕   「でも、ホント大丈夫だから・・・。」 

李さん 「もう着くから。」 

電話が切れた。

これは参ったぞ。昨日、王は「李さんには、会いたくない!!」と散々言っていた。

しかし、着いてから追い返すのは気が引ける。

中国人はお節介な人が多い。

こっちは大丈夫なんだから、ほっといて欲しい。

王 「どうしたの?」 

僕 「・・・李さんがここに来る。」 

王 「どうして?会いたくない!!」  

僕 「・・・・・。」

王 「李さんが来るんだったら、私、家に帰る!!」

僕 「・・・・・。」 

王 「どうするの?私といる?それとも李さんといる?どっち?」  

僕 「・・・・・。」 

王 「私に会いに来てくれたの?李さんに会いに来たの?どっちよ!!」

そんなの、愚問だよ、答えは決まってるじゃないか。
王に会うために、お金と時間を掛けて大連に来たんだから。
どんなに逢いたかったことか。

まったく中国女性というのは、プライドが高い。

僕のこと愛しているんじゃなく、

面子を潰されるのがイヤなのだ。

僕は、王の機嫌を直してもらいたくて、慣れない言葉を口にした。

真面目な顔をして
 
僕 「フェイチャン フェイチャン アイ ニー(とても、とても愛してる)」

僕 「ヨン ヤン アイ ニー(いつまでも、愛してる)」と言った。

今まで言ったことのない言葉が、急に出てきたので、王が驚いてる。

初めて会ったときに言うと効果がないが、親密な関係になってから言うと、結構効果がある。

王 「チェンダ マ?(本当に?)」

私 「チェンダ!(本当だよ!)」

王は考えている。

僕は「ゴーライ(こっちに来て)」と言って王を抱き寄せて、耳元で
  
  「ウォー シャン フー ニー ゾー アイ(あなたとSEXしたい)」と囁いた。

いきなり頭を叩かれて、「チュー スー バー!!(死んじゃえ!)」と言われた。

でも、顔は大笑いしている。どうやら機嫌が直ったようだ。

エレベーターの扉が開き、李さんがやって来た。

僕はあわてて、李さんの腕を引っ張って、通路に連れ出した。

僕  「きょうは、王が機嫌悪いから、二人だけでいたい。李さん悪いけど帰ってもらいたいんだ。」 

李さん「言葉が通じないから、彼女、機嫌悪くなっちゃうのよ。大丈夫、任せて。」 

(なにが任せてだよ。王の機嫌が悪いのは、李さんのせいなんだよ!) そう言いたかったが、せっかく来てくれた李さんに、言えるわけ無い。

仕方なく、3人で食べることになった。

しかし、李さん、きょうはまた一段と派手だ。毛皮のコートを着てきた。

そんなのも王の機嫌を損ねているのかも知れない。

王のノーメイクにジャンパー、ジーパン姿とは大違いだ。
王は明らかに李さんのことを煙たがっている。せっかく機嫌が良くなったのに・・・・。

僕は李さんに通訳してもらった。

李さん 僕 「ご飯食べ終わったら、どこか行こう。どこに行きたい?」 

王     「・・・・・・。」

李さん 僕 「僕は、王の写真たくさん欲しい。一緒に写ってる写真持ってないから、一緒に写真をたくさん撮ろう。」

王     「・・・・・・。」

李さん 僕 「海に行きたいな。」

王     「・・・・寒いよ、大丈夫?」

李さん 僕 「王が買ってくれた服と、王がいれば寒くない。大丈夫だよ。」

王     「・・・・私、船に乗りたい。」

李さん 僕 「よし、決まり!行こう。」

エレベーターで下に降りた。

王が僕の腕にしがみついている。

そうすることが、李さんへの精一杯の抵抗なのだろう。

僕がもっとカッコイイ男だったら、ヤキモチの効果があるかも知れないが、はっきり言ってまったく効果なし。

深夜放送の通信販売と一緒だ。

タクシーに乗る。李さんが前に乗り、僕と王は後ろに乗った。王がもたれかかってくる、そして顔を上げて目をつぶった。

僕はキスをした。

何度も何度もしているうちに、李さんが気付いたが、僕はお構いなしだった。

李さんがつまらなそうな顔をしたのを、僕は見逃さなかった。

夕方、スイスホテルに着いた。
明日はいよいよ福建省に行く。
王のお父さん、お母さん、親戚の人たちがみんな集まっているそうだ。
大連から福建省の福州まで飛行機で3時間半、飛行機は12時50分発だ。
福州から王の実家までタクシーで4時間。

成田から大連より遠い。

三人で王のお父さん、お母さん、親戚の人達へのおみやげを買いに行った。

王と李さんは少し仲良くなったようだ。

乾物とか、タバコとか、王が楽しそうに選んでいる。
こういう姿を見ると香港で売春をしていたとは思えない。
段ボール1箱分のおみやげを買った。

お金は当然僕持ちだ。

王と一緒に段ボール箱をホテルまで運んで、遅い夕食を食べにいった。

王のリクエストで日本料理を食べに行くことになった。たしか、李さんも日本料理が好きなはずだ。

三人で森ビルの日本人クラブが立ち並ぶ角の日本料理屋に入ろうとした時、王が日本人クラブを指さして、

王 「あなたは、こういう所に行くの?」

僕 「行かないよ。」

王 「本当に?」

僕 「当たり前だよ。こういう店は、生まれてから一度も行ったことがない。」

李さんが笑いながら通訳してる。
ウソがばれちゃうじゃないか!

王と知り合ったのも、こういう店なのでその時点でウソなのだが。

王 「ピェン レン!(うそつき!)」

チャイナドレスで店の前に立っている小姐達を見て、

王 「私はこういう所で働いてる女の子は嫌い。絶対行かないで!」

(よくいうよ、王はわざわざ香港まで行って、こういう仕事をやってたじゃん。)心の中でそう思った。

でも、王がカラオケ小姐だったから、香港で出会えたんだし、複雑な思いだ。

店に入り、注文した。僕は、王がどうして香港でカラオケ小姐の仕事をやっていたのか、その理由を知りたかったが、李さんにそんなことお願いできない。

王が傷つくだろう。

いつか機会をみて聞いてみようと思った。

料理が運ばれてきた。王がお刺身を僕のお皿に取ってくれる。

その時、王の携帯が鳴った。
王は、でるのをためらってたが、しつこく鳴っている。

王がでた。

王 「・・・・・・・・・・・」 
相手「・・・・・・・・・・・」
王 「・・・・・・・・・・・」
相手「・・・・・・・・・・・」

これは、北京語(国語)ではない。

何語だ?王の出身の福建語か?
王の口調がだんだん荒くなってきた。

王「・・・・・・・・・・・・!!」

なぜか李さんの様子もおかしい。

王「・・・・・・・!!!!!」最後に王が怒鳴って電話を切った。

そして、ため息をついている。

李さん「ちょっと・・・・Tさん・・・・・。」 

僕  「なに?」

李さん「普通に聞いて話してね。彼女のほうを見ちゃダメ。こっち見ながら話して。」

僕  「どうしたの?」

李さん「彼女、今、上海語で話してた。」

僕  「え?」

李さん「私、上海に長く居たから、上海語分かるけど、たぶん・・・彼女、恋人と話してたよ。」

僕  「・・・・・・・・」

李さん「普通に話して。彼女に気付かれるよ。」

僕  「そうだね、ごめん。で、彼女、何話してたの?」

李さん「逢いたいけど、明日から、実家に帰るから逢えない。我慢して。」

僕  「ほかには?」

李さん「13日に上海に行くから、それまでの辛抱でしょ。私だって、あなたに逢いたいのよ。」

僕  「え・・・・・!?」

李さん「お金はなんとかするから、大丈夫。心配しないで。」

僕  「・・・・・・・・・・・」

普通でいられなかったが、僕は王に気付かれないように、努めて冷静に刺身に手を伸ばした。

王は、僕と李さんが何を話しているのか分からない。
まさか李さんが上海語を話せるとは思ってもないだろう。
しかし、なぜ王が上海語を喋れるのか?

僕  「福建省の人って、上海語話せるの?」

李さん「まさか。上海人しか話せないよ。」

私  「じゃあ、どうして王が話せるんだ?おかしいじゃないか。」

僕は、なぜか李さんに、当たっていた。

李さん「王さんが、上海に小さい頃住んでいたか、親、親戚が上海人か・・・・・。」

僕  「・・・・・・・・・」

李さん「彼女に聞いてみる?」

僕  「いや、ちょっと待って。」

僕の頭はパニックになっていた。

李さんの聞き間違いということはないだろうか?
しかし、王の、あの電話の口調と、今のこの態度を見ると、明らかに普通じゃない。

王は、食事には手をつけず、お茶を飲んでいる。

よく食べる王が不自然だ。

僕は李さんに通訳して貰った。
僕 「今、話していたのは、どこの言葉?」

王 「え?」

僕 「今のは北京語(国語)じゃないでしょ?どこの言葉?」

王 「私の実家の方の言葉。福建語だよ。」

王が初めてウソをついた。

李さんが通訳しづらそうだ。

僕 「誰と話していたの?ずいぶん怒ってるようだったけど・・。」

王 「ん・・。お母さんとちょっと・・。」またウソをついた。

僕 「何を話してたの?」

王 「お母さんが、いろいろうるさいから・・・。」まただ・・・。

一度ウソをつくと、その後は最初のウソに合わせて、全てウソになってしまう。

ぼくは、もう、聞くのを止めた。

しかし、福建語でお母さんと話していた、と言うのは便利な言葉だ。

福建語でも、上海語でも、どんなに怪しくても、福建語でお母さんと話していた、と言われては、お手上げだ。
言葉がわからない僕にはどうすることも出来ない。

王に限らず、浮気している中国女性で、この手を使ってる人はいるんじゃないか?

もちろん北京語(国語)以外に話せる言葉があったとしてだ。
北京語(国語)しか話せない男だったら、分からないだろう。

三人とも食が進まない。王がお腹がいっぱいで、もう食べられないと言い出した。

僕たちは店を出た。

李さん「これからどうする?」

僕  「李さん、きょうは有り難う。もう、帰っていいよ。」

李さん「わかった、何かあったら電話して。」

僕  「OK」

僕は王が見てないところで、李さんに500元渡した。通訳のお礼だ。

李さんがタクシーに乗り込む。李さんの姿が見えなくなった後、僕は王の手を引っ張り、日本人クラブに向かった。

王は「行きたくない!」と言ってるが、強引に店に入り、僕は「この店で、日本語が一番上手い人呼んで。」と言った。

大柄な女が出てきた。

僕 「ちょっと、通訳して欲しい。ここはうるさいから、店の外で話したい。」

小姐「ちょっと待ってて。ママに聞いてくる。」

しばらくして

小姐「大丈夫。行きましょう。」

早退料含めて600元取られた。

静かなところで話したい、と告げるとブランコみたいにぶら下がっている椅子がある喫茶店(かな?)に案内された。

王は明らかに嫌がってる。

なぜこんな小姐を連れてきたのか、文句を言ってきた。

僕は李さんのような知ってる人に、王の過去を知られるのがイヤだった。

この小姐だったら、気兼ねなく話せる。

小姐が名刺を渡してきた。僕は一応貰ったが、今日限りで、この小姐と会うことはないだろう。

また、王に電話がかかって来た。王が出る。
王  「・・・・・・・・・・・」  
相手 「・・・・・・・・・・・」  

僕は小姐に「なんて話しているか分かる?」と聞いた。

小姐 「全然、分かんない。何の言葉??」

王は僕の隣で、さっきよりは穏やかに話している。

僕は耳をすませた。

わずかだが、男の声が聞こえた。王が電話を切る。

小姐が王に話しかけている。王が面倒くさそうに答える。
小姐は「彼女、今、福建語でお母さんと話してたんだって。全然わかんなかった!あんな言葉なんだ!!」

(上海語だよ)僕は心の中で呟いた。

そして、通訳してもらった。

小姐 僕「今、話していたのお母さんじゃないでしょ?男の人の声がしたよ。」

王「・・・・・・。途中でお父さんに換わったから。」

お母さんの次はお父さんか、やれやれ。

続けて通訳をしてもらった。

僕「疲れた?元気ないね。」

王「少し・・、海に行ってたくさん歩いたから・・・。」 

僕「明日から、福建省だね。お父さん、お母さんに会いたいでしょう。」

王「もちろん。早く会いたい。」 

僕「お父さん、お母さんはどんな人?」

王「どんな人って言われても・・・。」 

僕「いきなり男の人を連れて行ったら、驚くんじゃない?お父さん、怒らないかな?」

王「日本人の友達も一緒に行くって言ってあるから大丈夫だよ。」
(友達か・・・。どうせだったら恋人を連れて行くって言って欲しいな)

僕は心の中で思った。

僕「お父さん、お母さんは、王の香港の仕事は知ってるの?」
王「両親には携帯電話を売る仕事をしてるって言ってある。出張が多い仕事とも。だから、本当のことは言わないで。」 

僕「わかってる。僕と王は、どこで知り合ったことになってるの?」

王「香港で、友達の紹介で知り合ったことになってる。」 

僕「これは、答えたくなければ、答えなくてもいいけど、どうしてカラオケの仕事をしてたの?」

王「今は答えたくない・・・。」

飲み物が運ばれてきた。王は口を付けようとしない。

僕は思いきって聞いてみた。 

僕「ねえ、王、僕のこと好き?」

王「・・・当たり前でしょ?好きじゃなかったら逢わないよ。」 

僕「どこが好きなの?」

王「香港の店で、ほかの人は抱きついてきたり、触ってきたり・・・。あなたは真面目でシャイだった。」
 
僕「そっか。」(そんなことが理由なのか??よくわからない。)

王「あなたは、私のこと好き?」 

僕「好きに決まってる。」

王「日本に、本当に恋人いないの?」
 
僕「本当だよ。もてないからね。僕のことを好きになった王が、目が悪いんじゃない?」

王「嘘つき。」王が笑った。
 
僕「本当だよ」(嘘つきは王だろ!)

王「私のどこが好きなの?」
 
僕「全部。」

王「いつ好きになったの?」
 
僕「香港のマクドナルドで王を見たときから。」

王がまた笑った。

王「日本人は、嘘つきだから。」
 
僕「ほかの人は知らないけど、僕は嘘つきじゃないよ。」

王「日本人は、そうやって女の子を口説くの?」
 
僕「僕の言ってること、信じられない?」

王「少しだけ信じる。20%くらい。」
 
僕「今は、20%信じてくれてればいい。3月、王の誕生日に逢いに来たときは100%になるから。王は僕のこと愛するようになると思う。」

王「・・・すごい自信だね。来月、また逢いに来てくれるの?」
 
僕「約束したでしょ?王の誕生日には、必ず逢いに来るって。」

王「ありがとう。」 
僕「逢ってくれる?」
王「もちろん!」 

王が初めてホットレモンティーに口をつけた。

僕「これは、正直に答えて欲しい。」

王「なに?」

僕「王は本当に恋人いないの?本当に??」

王「・・・いないよ、本当だよ。」 

僕「わかった、信じる。」

僕は冷静になって考えてみた。

お正月も、誕生日も、僕と一緒にいるんだ。

特に誕生日は、恋人と一緒に居たいだろう。

騙されているのは、僕じゃなくて、電話の相手なんじゃないか?確かに以前は付き合ってたかもしれないが。

とりあえずそう思うことにした。

そう思い込まないと一緒に福建省に行っても、面白くないだろう。

僕はほかの事を考えた。

そういえば、王は香港でカラオケ小姐だったが、今は何の仕事をしているんだ?

聞いてみたら、今は仕事はしてないそうだ。

僕は王に日本語を覚えてもらいたかった。僕と付き合うだけじゃなく、日本語を覚えていれば、必ず何かの役に立つ。

僕は小姐に、話しかけた。

僕 「今から話すことは、王に通訳しないで。」

小姐「わかった。」

僕 「あなたの店は、持ち帰りあるの?」

小姐「はあ???」

僕 「だから、お客と一緒にホテルに行くの?」

小姐「・・・・・・。」

僕 「どうなの?」

小姐「うちの店は、そういう事やってないよ。」

(本当だろうか?)

僕 「お給料は、どの位なの?」

小姐「私の?」

僕 「あなたでも、ほかの人でもいいよ。」

小姐「1000元。プラス指名、売り上げに応じて上がるよ。多い子は3000元くらいもらってる。」

僕 「え?そんなに安いの??」

小姐「そんなもんだよ。」

以前、ステラで知り合った子が8000元貰っていると言ってたのは、ウソなのか?

僕は考えた。

日式クラブなら、お持ち帰りは無い。

王みたいに可愛い子だったら、指名もたくさん取れるだろう。
それに、なにより日本語が覚えられる。

僕は「ここからは、通訳して。」といった。

僕「ねえ、王。やっぱり仕事はしないとだめだよ。」

王「わかってる。」

僕「それに、王には日本語を覚えてもらいたい。王とたくさん話したいんだ。きっと楽しいと思う。」

王「私も日本語覚えたい。」

僕「本当に?良かった。じゃあ、彼女の店に勤めなよ。」

王「え・・・・・!?」

僕「さっきの日本料理屋の近くに、カラオケクラブがあっただろ?あそこに勤めなよ。日本語も覚えられるし。」

王「・・・・・・・・・・。」

王が僕を凄い顔で睨んだ。

次は小姐のことを睨んでる。

そして、王「!!!!!!!!!!」

王が、怒鳴り始めた。凄い剣幕だ。小姐が、言い返しているが、王は凄い怒鳴り声で手が付けられない。

店内にいる、わずかな客と店員は知らん顔だ。なぜ平気なのか?

僕は王を抱きしめて、無理やり座らせた。
小姐は、ベソをかいている。
王の肩をたたきながら、

僕「どうしたの?王は、何て言ってたの?」

小姐「彼女ひどいよ、私はちゃんと通訳したのに・・・ひどいよ・・・」

僕「何て言ってたの?」僕はもう一度聞いた。

小姐「私がでたらめな通訳をした。だから、あなたは怒って売春して稼げって言った。」

僕は最初意味がわからなかった。

小姐「月2万元よこせと、通訳した。だから、あなたは怒って売春して稼げって言った。」

僕は理解できた。

つまり、王「私も日本語覚えたい。」
          ↓
小姐「彼女、あなたに月2万元よこせと言ってるよ。」 
          ↓
僕「じゃあ、自分でカラオケクラブで売春して稼げばいいだろ。」

小姐が、デタラメな通訳をしたから、僕がカラオケクラブに勤めろと言い出した、王はそう思ったらしい。

しかし、2万元という金額はどこから出てきたのか?おかしくて笑いそうになった。

小姐は、泣いている。

小姐が隣に置いていたバックを掴み、店を出て行こうとした。
慌てて僕は店の外に出て行った。

僕は何度も謝った。

気を付けて帰ってと言ったら、小姐が、タクシー代をくれといってきた。

10元渡したが、不満そうな顔をしている。僕は面倒くさくなり、邪魔になった小銭を全部渡して、帰ってもらった。

しかし、本当に驚いた。中国女性の気の強さを思い知らされた。

店に戻ったら、王が、李さんに電話している。
李さんにここに来てもらうつもりだ。

僕は電話を奪い取った。

僕「あ、李さん?王は何て言ったの?」

周りが、騒がしい。
李さんはこんな時間に、どこかで遊んでいるようだ。

李さん「彼女、こっちに来てくれって。今から行くね。」
僕  「え?いいよ、こんな遅くに・・・・。」
李さん「大丈夫、気にしないで。今からそっちに向かう。」

電話が切れた。

王「李さん、来てくれる?」

僕「うん。」

王は、李さんは優しい、いい人だと言った。

どうやら王は、李さんが、タダで通訳をやってくれていると思っているらしい。

(違うよ、李さんは、暇なのと、通訳代が欲しいんだよ)心でそう思った。

李さんが来た。

不思議なことに少しホッとした。

李さん「お待たせ。」

僕「悪いね。」

李さん「気にしないで。」

王と李さんが話している。
李さんが、通訳し始めた。

王 「さっきの小姐に言ったことを、ここでもう一度言って下さい。」

僕 「日本語を覚えるには、カラオケクラブで働くのがいいと思って・・・。」

王 「私に売春をやれっていうの?」 

僕 「違うよ、あそこの店は、売春は無いよ。彼女言ってた。」

王 「そんなはず無いでしょ。」

李さんが「Tさん、どういう店か知ってるでしょ?好きな人にカラオケクラブで働けなんていわれたら、誰だって怒るよ!」

李さんまで文句を言ってきた。まいったな。
(二人とも、以前は働いていたじゃないか)内心そう思った。

僕  「僕は売春が無いと聞いたんだ。お給料だってほかで働くよりはいい、なにより日本語が覚えられる。だから働けば?と言ったんだ。」

王  「そんなはずないでしょ?私に売春をやれって言うの?」

李さん「Tさん、それはないよ。ひどいよ。」

また、二人で僕を攻め始めた。

これは、ダメだ。どうも微妙なニュアンスが伝わらない。

スイスホテルのプロの通訳のYさんに来て欲しかった。

僕は、王に売春をさせる気は全くない、日本語を覚えてもらいたいだけだと、何度も強調した。

それでも王は、ぶつくさ言っている。自分の意思で、カラオケ小姐になるのは構わないが、恋人(と言えるだろうか?)に言われるとイヤらしい。この辺も、面子の問題か?

王 「その事、私に伝えるために、あの女の人(小姐のこと)呼んだの?」 

僕 「そうだよ」 

王 「李さんじゃダメだったの?」 

僕 「李さんじゃ、こんなこと話しずらいだろ?」 

王 「・・・・そう。」

少し間があいて 

王 「ねえ、Tさんと李さんはどんな関係なの?」

李さん笑いながら通訳してる。

僕 「え?」 

王 「話しづらい?」

僕 「そんなことないよ、以前、僕の知り合いと付き合っていた人だよ。」

王 「付き合っていて、どうなったの?」

僕 「別れた。」

王 「どうして?」

僕 「よくわかんない。」 

笑っている李さんに、

僕  「李さん、自分の事なんだから、自分で答えろよ!僕が何て答えるか楽しんでるんだろ!」

李さん「その通り。」ケラケラ笑ってる。

本当は、よく知っている。李さんは、上海の日本人クラブでチーママをやっていた。

あれだけの美人だ。かなり人気があったみたいだ。

李さんは18歳の時小姐になり、今はもう25歳だ。24歳のとき、そろそろ水商売から足を洗おうと思っていた、そんな時僕の知り合いと出会った。

その人は会社を経営しているS社長だ。

S社長は李さんに目をつけた。

店を辞めさせて、李さんを囲おうと思ったらしい。

このS社長は、この掲示板でもよく話題になるチビ、デブ、ハゲのパーフェクトだ(チビでは無いかも)

それに、このS社長はせこい。

上海にマンションを買ってやるようなことを言ってて、実際は、大連のしかも賃貸マンションに住ませている。

尚且つ、S社長は性行為ばかり求めて、李さんと外に出るときは、食事とカラオケに行くときぐらいだ。

観光など行ったことがないらしい。

S社長としては、李さんみたいな美人を連れて、カラオケに飲みに行くのは鼻高々だが、李さんにとってはいい迷惑だ。

僕も何度か一緒に行ったが、なぜS社長は、李さんに逢いに来たのに、ほかの小姐がいる店に飲みに行くのか不思議だった。

李さんは、李さんで、とにかく贅沢で金がかかる。

月30万求めていたらしい。

上海にいた時は、もっと稼いでいたらしいが本当だろうか?

せこい社長と贅沢女のカップルが上手くいくわけない。

特に李さんは愛情は無いんだから。

結局、李さんは金持ちの香港人に囲われることになり、S社長とはグッバイだ。

S社長は「あんな贅沢女、捨ててやった。」と言っていたが、捨てられたのだ。

どっちもどっちだ。

李さんは、悪い人ではないが、王には李さんみたいな女になって欲しくない。

しかし、李さんも毎日暇そうだ。

香港人が来ない日は、いったい何をしているのか?

李さんが通訳を続ける。

王 「李さんと話があるから、あなたは席を外して。」

僕 「中国語で話せば、僕は何を言っているのか、わからないから、話して大丈夫だよ。」

王 「ダメ、どこかにいってて。」

僕 「わかったよ。」
 
僕は隣の空いてる席に座った。

王 「そこじゃダメ。店の外に行って。」

僕 「寒いよ。どうしてここにいちゃダメなの?」

王 「どうしても。店の外に行って。」

僕 「わかったよ。どの位外にいればいいの?!」」少し機嫌が悪くなった。

李さんといったい何を話すんだ?
どうして僕がいちゃダメなんだ?
通訳している李さんも不思議そうな顔をしている。

王 「終わったら、電話する。」

僕の携帯電話はDoCoMoのN900iGで、海外でもそのまま使えるやつだ。

僕は、寒い大連の夜を歩いた。

王は勝手な女だ!まったく!10分位で終わるのかと思ったら、電話がかかってきたのは、1時間以上経ってからだ。

王はなんて女だ!1時間以上もこんな寒い外に追い出して!

僕は不機嫌な顔で席に着いた。

王が抱きついてきた。

なぜか機嫌がいい。

李さんも、なぜかニコニコ笑ってる。

李さんが通訳をする。

王「寒かった?」

僕「あたりまえだろ!」

店の人を呼んで、あったかい紅茶を頼んでくれた。

王は、日本語で「ごめんなさい。」と言った。

僕は、え?王が僕の冷たい手を摩りながら、また日本語で「ごめんなさい。」「ごめんなさい。」と繰り返した。

王は、メモ帳を開いて、「わたし、あなた、これ、あれ、ありがとう、さようなら、いります、いりません、あります、ありません、おはよう、こんにちは、こんばんは、いち、に、さん、・・」

どうやら、李さんに日本語を教えてもらっていたようだ。メモ帳の日本語の下に、ピンインが書いてある。

僕は、言葉が出なかった。

李さん「彼女、日本語覚えたいって。あなたと早く話したいって言ってたよ。」

僕は感動したが、李さんに日本語を教わるだけなら、僕がここに居たっていいじゃないか、それに、王が李さんに教わった日本語だったら、僕も中国語でわかる。

僕に聞いたっていいじゃないか。

どうして外に追い出したんだろう?

王が、トイレに行った。

王のトイレは、ズボンの下に服を2枚着ているから、時間がかかる。

僕は、李さんが、どんな日本語を教えたのか興味があり、テーブルの上にあるメモ帳に手をのばした。

李さんが凄い勢いで、「見ちゃダメ!!」と言って、メモ帳を奪った。どうしてだ?

僕は李さんを見つめて

僕  「そのメモ帳に、何が書いてあるの?」

李さん「・・・・・・・・・」

僕  「どうして僕が見ちゃダメなんだ?」

李さん「何も書いてないよ。さっきの日本語だけ。」

僕  「だったら、僕が見たっていいじゃないか。」

李さん「・・・・・・・・」

僕  「李さんまで、ウソをつくのか?何が書いてあるんだ!?」僕の声が段々大きくなる。

李さんは、仕方ないというような顔をして

李さん「王さんには、絶対黙っててよ。約束して。」

僕「わかった。」

李さん「早く見ちゃって。」

僕はメモ帳をめくった。
さっき王が読み上げた日本語が書いてある。
ページをめくると、日本語の文章が書いてある。
李さんが書いたものだろう。
隣のページは、なんて書いてあるのか、わからないくらい下手な日本語が書いてある。
よく見ると、その下手くそな日本語は、李さんの書いた日本語の文章を書き写したものだった。

Tさんへ  

会いに来てくれて有難う。すごく嬉しかった。
今までで、一番楽しいお正月が過ごせました。

お母さん、お父さんも喜んでました。
お母さん、お父さん、あなたは優しいから好きになりました。

私も好きになりました。私、日本語がんばって覚えます。私の誕生日にあなたが来るときは、もう通訳は要りません。

大丈夫です。心配ないです。

からだに気を付けてください。

愛してる。  王○
 

李さん 「あなたにどうしても、お礼を言いたい、でもこんなに長い文、覚えられないでしょ?だから、私が手紙にしようって言ったの。」

李さんがオロオロしながら話す。

僕   「・・・」

李さん 「王さん、明日から福建省行っちゃうでしょ?向こうには日本語できる人いないから・・。」

僕   「・・・」

李さん 「まだ、お母さん、お父さんに、会ってないのに、ウソ書くのは悪いことだけど・・・。王さんの気持ちわかってあげて。」

僕   「・・・」

李さん 「お母さん、お父さん、Tさんのこと、絶対気に入るから大丈夫だって。ウソ書いたことにならないって・・・・。」

僕   「・・・」

李さん 「お互い言葉が通じないでしょ?Tさんがいつもカワイソウだって。だから私が頑張って日本語覚えるんだって・・・・。」

僕   「・・・」

李さん 「そりゃあ、王さんの誕生日までに覚えるなんて無理だけど・・・・。」

王さんが戻ってくる

李さん 「今のこと絶対内緒よ。」

王が戻ってきた。

そして、僕は王のことを抱きしめていた。

李さんが、通訳をする。

僕「僕は、王のことが、ますます好きになったよ。」

王「え?どうして??」

僕「どうしても。大好き、愛してる。」

王「????」王は首をかしげている。

李さんが中国語で王に話しかける。

どうやら、僕の日本の住所を教えてもらえば?といってるようだ。

王が、メモ帳の一枚を切り取り、

王 「あなたの、日本の住所をここに書いて。」

僕 「わかった。」僕は王が渡してきた紙に住所を書いた。

王 「あなたが日本に帰ったら、私、手紙を書くね。」

僕 「僕に手紙書いてくれるの?」

王 「うん、わたし書く。日本語で書く。」

僕 「本当に?日本語で書いてくれるの?」

僕はわざとらしく聞いた。

李さんも笑いながら通訳している。

もう、日本語で手紙は出来あがっているのに。

王 「大丈夫。これから日本語を勉強するから、絶対、日本語で書く。」

僕 「有難う、嬉しいよ。」

李さんが、「彼女、可愛いね。」と、言った。

これは、顔だけじゃなく、性格も含めての意味だろう。

李さんは、最初、王のことを小馬鹿にしていたのだが。

僕  「当たり前だよ。僕が好きになった女の子なんだから。」

李さん「はは
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