08月19

大好きな子が喰われた

大学2年のころの話。
本格的なものじゃなくて、ハイキング気分の軽い山登りをするサークルに入っていた。
夏休みに登山しようぜ?ということになって仲のよい男A、俺、女B、Cの四人である山へ登った。
この四人は誰かが誰かと付き合ってたというわけではなくて、本当に仲のよい友達という感じ。
だけど俺とBちゃんはお互いにちょっといい雰囲気で付き合おうかどうかという寸前の状態だった。
俺とAは同じ学部でわりといつも一緒に連んで行動してた。
BちゃんとCちゃんとは同じ高校出身でそのころから友達だったらしい。

登山の予定は2泊3日。このサークルとしては異例。ふつうは日帰りか1泊程度。
だけど、3年になったらいろいろ忙しくなるので、2年生のうちに思い出つくりも兼ねて長めの日程となった。
1日目。初日ということもあり、あまり進まず早めに落ち着き場所を決めてテントを張って炊事とかやりながらみんなのんびりとした。
ちなみにテントは男性、女性で分けて2つ。残念ながら雑魚寝はしない。
満天の星空の下でいろんなこと話して楽しかった。
テントに入って寝たのは空が明るくなってきた頃。
そんなに眠る時間はなかった。3時間くらいかな。
翌日はみんな寝不足でフラフラしながら歩いたっけ。

そして昼過ぎに目的地についた。
当初の予定では、1日めにここに着いて1日遊んで3日目に帰るはずだったけど、まあいいやってことで。
また同じようにテント張って飯の支度とかのんびりと。
疲れや前日の寝不足もあって、夕方暗くなってきた頃から早めにテントにひきこもる。
Aはすぐにいびきをかいて眠ってしまった。俺も眠い。たぶん女の子たちもそうだろうと思った。
しばらくラジオなんか聞いているうちにいつのまにか俺も意識が遠のいていた。

何か気配を感じて何となく目が覚めた。
明かりを消した覚えがないんだが真っ暗だった。ラジオも鳴っていない。
たぶんAが途中で起きて消したのだろう。
手探りで懐中電燈をつける。Aがいない。小便にでも行ったのだろうか・・・・・

草を踏むような足音がする。戻ってきたのかな。
だけど足音は俺達のテントの前を通り過ぎて女の子達のテントのほうへ・・・・・ん?
やっぱりあいつも男だからなw
まぁ、CちゃんはともかくBちゃんもいるからには見過ごすわけにも行かないだろうな。
ちょっと様子を伺おうか・・・・・こっそりとテントの窓を開けて見る。
ん?、よく見えないな。夜這うのか?A.。向こうには二人もいるんだぞw
さんぴい?いや、そんなことが起きるわけはない。
おそらく一人が熟睡している横でもう一人をこっそりいただいてしまおうという魂胆か?。
さて・・・・・どっちだろう? どちらもわりと可愛いタイプ。
確率は1/2かな。
そんな妄想が・・・・・もちろん映像付きで脳裏をよぎった。
想像ではBちゃんだったがw

さて、どうしようか?
そんなにすぐにどうこうされるものでもないとは思うが、もちろん黙って見過ごすこともできない。
もし俺が正義の味方よろしく出て行ったら、これで4人の仲良し関係もおしまいになるのか?・・・・・なんだか寂しい。
Aもいい奴なんだ。AのターゲットがCちゃんなら見て見ない振りでもしようか。
その時にBちゃんが襲われる可能性はほとんどあるまい。
でもその最中に状況に気づいたBちゃんはどうするのかな。
隣で抱かれているCちゃんの横で寝たふりなんかできるのか。
変な気持ちになって・・・・・
いやいやそれはないはずだきっと・・・・・たぶん・・・・・

なんだか、お稲荷さんのあたりがキューっと切なくなる。
ひとまず状況をなんとかして確かめなければ・・・・・。
CだぞC。Cへ行くんだぞ。そうすればすべてが丸く収まる。
様子を見に行って、事が済んでAが引き返す素振りを見せたら、こっそりテントへ帰ろう。
だがもしBちゃんなら絶対に止めなければいけない。
その後夜通し起きてAを見張ろう。
Bちゃんしっかり拒否してくれるよな?

あまりぐずぐずしてもいられない。行こう。
四つん這いになってテントを出ようとしたその時だった。
「いやっ!」
確かに聞こえた女の声。
どっちだ?わからない・・・・・バクバクと心臓が鳴る。
「きゃぁぁぁぁ」
明らかな悲鳴が聞こえる。外へ出てみる。

月明かりに照らされていた光景は想像を絶するものだった。
人間の2倍はあろうかという黒い影・・・・・熊だった。
がおおぉぉと雄叫びを上げたその熊は得意のパンチ一撃で女性用テントをぶっこわし、中から誰かを引きずり出した。
ああ、あれはBちゃんだ。泣き叫んでいる。
熊はこちらをチラりと見た後、おもむろにBちゃんの腹あたりをむしゃむしゃと喰い始めた。
傍らには腰を抜かして小便を漏らしているCちゃんがいた。Aは行方不明。
俺は決死の覚悟でCちゃんを救出し、手に手を取って逃げ、人里へ着いたのは次の日の午後だった。
これが今の妻です。読んでくれてありがとうございました。    
                                        - 終 -

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