11月8

坂道高校

出展:カオスストーリー2


今日はとても目覚めの良い朝だった。
中学生時代、あまり内申点がよくなかった俺は、担任の勧めで今年から新設された坂道高校に進路を決め、そして合格した。
周りの友達が誰一人として同じ高校に通う奴がいない事を除けば、新たなスタートをずっと心待ちにしていた。
新しい制服に身を包み、慣れない通学路を自転車で走って行く。
正門をくぐり指定の場所へ自転車を止め、期待と不安を胸にまだ汚れ一つ付いていない校舎へと足を運んだ。

新設校という事もあり、入学前に届いた封筒の中に自分のクラス、さらには校舎内の地図などが送付されていたのでさほど迷う事なく自分のクラスへとたどり着いた。

「こういうのってやっぱ最初が肝心だよな……。元気に挨拶しながら入るとかした方がいいかな?」

俺は教室の入り口の前で立ち止まり、新学期特有の緊張感に襲われていた。

「あの、邪魔なんだけど」

ぶつぶつと独り言を言っている俺の後ろから声がする。

「あ、ご、ごめん」

俺は慌てて道を譲ると、俺に声をかけてきたその女の子は澄ました顔で教室に入って行った。

今の子を見ていると、変に悩んでいた自分が無性に恥ずかしい。
俺も平然を装って、何食わぬ顔で教室に入る。
まだほとんど人が来ておらず、先程の子と俺を含め6人しかいなかった。
この人数で挨拶しながら入っていたらと思うと怖い。怖すぎる。
とりあえず俺は黒板に張り出されている紙に目をやった。座席表である。

「えっと、俺の席は……1番後ろの窓際か。最高だな」

自分の席に向かう途中、先程声をかけてきた子が目にとまった。俺の右隣りだったからだ。

荷物を置き、さっきの子に声をかけてみる。

「あ、さっきはごめんね」

「別に」

チラッと俺の方を見たかと思えば吐き捨てるようにそう言うと、彼女は机に突っ伏した。

チクリと心が痛む。何故新学期そうそう嫌われなければいけないのだ。ましてや隣の席の子だ。
なんだか今日は嫌な予感がする。こういう時の予感に限って当たるのが世知辛い世の中である。

これ以上変に行動を起こしては先程の二の舞。
俺も彼女と同じように机に突っ伏し、目を閉じた。

なんだか騒がしい。そして何故だか頭が痛い。
そうか、寝てしまっていたのか。
ふと顔を上げるとスーツを着た女性がパンフレットの様な物を丸めて持っている。
俺はこれで頭を叩かれたのだ。まるで丸めた新聞でゴ◯ブリを叩くかのように。

「全く、新学期早々居眠りとはいい度胸ね2人共」

「あ、その、すいません……ん?2人?」

横を見てみるとあの子が頭を抑えている。きっと同じように叩かれたのだろう。

「じゃあ2人、私の名前言ってみ」

俺はチラッと横を見た。すると彼女も俺を見ていた。

「……わかりません」

2人口を揃えて同じ事を発する。
パーンッと2回心地の良い音が教室に響くと同時に頭部に痛みが走る。

「2人共今日は居残り決定。私は、あなた達の担任の新内眞衣です」


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