朝晩は結構冷える十一月の朝まだ来西の空に下弦の月がこうこうと輝いていた。
先ごろ夫を病気で亡くした順子は飼い犬のケルとともに散歩をしていた。
落ち葉が舞い散る歩道を向こうから見覚えのある男性が近づいてくる。
やはり犬を連れて散歩中だった。
すれ違いざま突然飼い犬のケルが相手方の犬に襲い掛かった。
そして交尾を始めてしまったのである。
「おはようございます。順子さんお久しぶりです」
職場で事務をしている順子は遠い昔一度だけニアミスのあったこの男に無言で会釈をした。
「やめなさい。ケル。やめてったら」
じっとしてオスのピストンを受け入れる相手方の雌犬に順子はかつての自分をなぞらえやけぼっくいに火が付く思いをひた隠しにするのがいっぱいいっぱいだった。
「ああ。こりゃあできてしまうかもしれないなあ」
ペルと呼ばれる雌犬にたっぷりと子種を注ぎ込んだ飼い犬のケルは我に返ったように体を離し、ワンと一声吠えた。
「ワンじゃないよ。ま、犬だから仕方ないか」
「あの、おうちによってお茶でも飲んでってください」
「そうですか。じゃあお言葉に甘えて」
誰もいない家に男を連れ込んでしまった。
「あ、長居はしません」
「って。言い訳がましいけど。それじゃ話は終わっちゃうのよ」
「最近立たないんですよ」
「え」
お互い年は取りたくないものだ。
「お風呂入りましょうか」
順子はそう言って男を手招きした。
いわれたように男の股間の一物はかつて職場をセクハラで沸かせた勢いを彷彿とさせるものではなかった。
湯船につかってあからさまにお口でケアすると
「あああ」
声には出すもののあちらの反応はなかった。
「立ってきましたよ。硬くなってますよ」
嘘でもいい、これがほんとのリップサービスだった。
男は両足をプルプルと震わせたかと思うとピュッピュッと湯船の中で出してしまった。
お湯の中で固まる精液を手ですくうように順子は湯船の外へと送り出した。
「ベッドへ行く」
男は言われるままにかつての夫婦の寝室へと入っていった。
ふたたびベッドでも執拗な舌技の連続で男の一物は少しずつ勢いを増していく。
ゴムを付けられ入り口に挿入されるや否や激しい騎乗位素股がさく裂しどっぴゅん一撃で男は轟沈してしまった。
「順子さん」
しばらくして男が口を開く。
「はい」
順子は貞淑な妻よろしく小声で返す。
「まだ時間はありますが、三度目はいかがですか」