01月12

露出のS(7)

今日も日課のジョギングの準備。出発前の変態さん情報交換系サイトの巡回も出発前の準備に加わって2か月が過ぎた。

変態も様々。その中にちらほらあるのが男の人のものをしゃぶりたい男の人の書き込み。こればっかりは異性の私でも理解できない。

と思いながら巡回を続ける。その中にあのK子さんの書き込みを見つける。あれ以来暫くなかったものの、ここのところ週1くらいでコンスタントにイベントがある。ただ、あのときみたいに刺激的な乱入には至らないし、さすがにあの特等席はもう怖くて使う気になれないので遠くから様子をうかがうくらい。

今日は近くで見たいな…。軽めのジョギングウエアとショートパンツで出かけるつもりだったけど、黒いTシャツを上から羽織る。K子さんのイベントを見るなら目立たない色でいかないと。

彼女はいつも桜林の東屋に居る。あの特等席はもう使えないので、学校帰りの明るいうちに毎日散策してリサーチ済み。何件か候補はあったんだけど、東屋から見て左前のツツジの茂み。背が高くぼうぼうに茂っているんだけど、屈めば人が潜れるくらいの隙間があり、そこに隠れると、ちょうど東屋を真正面に見ることができた。

昼間のリサーチでは近すぎると思うくらいがちょうどいいんだ。夜だと案外遠く感じるので。変な知識がどんどんついていくのが可笑しくて鏡に映る自分見てちょっと笑った。

予定より30分以上前に公園に到着。普通にジョギングを楽しむ。大きく公園を一周して、誰に見られているわけでもないのに、周りを気にしながら東屋へ。まだ10分以上ある。時間に余裕があるので、身を隠すでもなく、あの桜林の真ん中をズンズンすすむ。結構足元が悪い。

昼にリサーチした私の特等席の手前まで来て、ビクッと足を止める。

K子さんは大体いつも時間通りにジョギングで息を切らしながらあらわれるんだけど、その日は違った。既に東屋のベンチに腰掛けてお茶を飲んでいた。

グレーのタンクトップに黒のホットパンツ。白い帽子。

私はツツジの茂みの裏でしゃがみ込んで、ツツジのトンネルをゆっくり音をたてないように進む。予想通りの特等席だ。想像以上に近い。ここには街灯がないので明るい東屋から見ると多分真っ暗で見えないはず。

座りやすいように足元の落ち葉や土を均しながら、腰を下ろして座りなおす。
シーンとした空気が戻ってくる。今日はちょっと肌寒いかな…と思いながら彼女を見つめる。相変わらずケータイをいじったりお茶を飲んだりを繰り返す彼女。

彼女はもう一度ぐっとお茶をあおって、ペットボトルのキャップをキュッと閉めて足元に置く。両手をベンチについてふぅと大きく息をついた。
空気が澄んでいるので今日は彼女の息遣いまで感じ取れる気がする。

久しぶりの彼女のイベントに心臓の音が高鳴る。早くなるんじゃなくて一回一回が大きくなる感じ。

そのまま暫く時間が過ぎる。ものすごく長く感じる。何度か携帯を確認しては隣に置くのを繰り返す彼女。じれったい。

そのとき、奥の小道から人の気配。彼女もそれに気が付いたのか座り直し、髪の毛や服を整える仕草をする。

スーツ姿のおじさんが、鼻歌混りにふらふらと歩いてくる。ちょっと!何してくれてんのよ!

オジサンは東屋のK子さんに気が付くと、鼻歌のボリュームと歩く速度を落として彼女を2度見。彼女はオジサンのほうを気にもしないでケータイをいじっている。

何も知らない人から見ればジョギング中の休憩に見えないこともない。ちょっと考えればこんな真っ暗な場所に女性独りというのはおかしいと思うかもしれないけど。

彼女はケータイを脇のポーチにしまい、立ち上がると東屋を出ていった。東屋の外は真っ暗なので彼女の姿が闇に消える。同時に足音が早くなりジョギングを開始したのがわかる。足音が闇の中に遠ざかっていく。

再び静けさが戻る。東屋の電灯が誰もいないベンチを照らす。

えー。そんなぁ…。

諦めきれず、そのまま20分ほど待っていたけど彼女は戻らなかった。

いつもの松林のベンチまでジョギングして腰を下ろし休憩。いつも以上に静かな感じがする。

周りを見回すとなだらかに下っている松林が広がる。ここは林の中でも小高くなっていて周りが一望できる。それも昼ならの話で、今は真っ暗な闇が四方に広がるだけ。
ところどころ街灯が立ってはいるが、その周りを照らすだけで木とツツジの茂みのシルエットくらいしか見えない。

このベンチのすぐ後ろにも街灯があって周りを照らしている。明るすぎず暗すぎず。暗い公園でこそこそするにはちょうどよい明るさ。

「今日は残念だったな」とつぶやきながら空を見上げる。ほとんど木の枝でおおわれているけど隙間から月が見えた。結構明るいんだなぁ…。

ふぅと息をつくと、急に胸のあたりがむず痒くなる。服の上からそっとなでる。ぴりっと弱い電気が走り、ふっと息が出る。

そのままやさしく胸を撫でていると、なんだか頭がぽーっとなってきた。いつもと違う。不思議とまったくドキドキしない。穏やかな気持ち。揉むでもなく、とにかく優しくゆっくりと撫でる。だんだん範囲が広くなり、おへそ、首筋、ほっぺた、ふとももをやさしくなでる。胸の奥がきゅーっとなり、自分を抱きしめるようにぎゅっと腕に力が入る。

不意に人の足音が聞こえる。私は我に返って、服を直し座りなおす。さっきのK子さんみたいだと思った。咄嗟のときって、大体みんな同じなのね。

スマホをいじりながら足音のほうに意識を集中する。

奥の街灯の下にシルエットが見えた。こっちに向かってくる。姿が見えるまではいつでも逃げられるように身構えていたけど、どうもただのジョギングのようなので、意識をスマホに戻す。

変態さんサイトで、さっきのK子さんのイベントについて書き込みがないか確認しようとすると、足音が私の前で止まる。

「こんばんわ」女性の声。慌てて顔を上げて「あ、こんばん…」返事をしようとして顔を見て一瞬固まる。K子さんだ。

今までのイベントでは見たことがない普通の笑顔。さらにニコッと微笑むと私の隣に腰を下ろしてふーっと大きく息をついて伸びをする。

「いつも来てるね」と話しかける彼女。一瞬ドキッとしたけど、単にジョギングの話だと思い直し「えぇ。この夏からダイエットで」と返すのが精いっぱい。

彼女が私の手元のスマホをちらっと見る。私は慌ててホームボタンを押した。変態さんサイトが開きっぱなしだったから…。

気づかれた?

彼女はそのあとも自己紹介を続ける。齢は29歳IT系の技術職でストレス解消で運動しているんだとか。

会話のところどころに入る彼女の笑い方が独特で印象的。「んふふっ」ってかわいく笑う。

私も自己紹介した。5分くらい話して会話が途切れる。

彼女は座り直して私の隣に少し近づくと、ちょっとうつむいてる私の顔を下から覗き込むようにして話を続けた。

「この公園、ジョギングにはすごくいいんだけど、ちょっと暗いよね。良ければこれからも合うことがあったら一緒に走ろうよ」と誘ってくれた。

私は、彼女の声のトーンが少し下がったのと、思った以上に近い彼女の顔に面喰いながら「ええ、ぜひ」とだけ答えた。近くで見ると目が大きくて顔のラインもシャープで綺麗と可愛いの中間って感じの整った顔立ち。本当に羨ましい。

彼女は、さらににっこりとすると「うれしい。私一緒に走ってくれる友達欲しかったんだ。続けられる自信なくてさ」というとさらに私のほうに密着して太ももに手を置いた。

肘に胸が当たる。女子同士なのにドキッとする。ものすごく柔らかい。ノーブラだ。

彼女は私の太ももに手を置いたまま正面を向きなおし、再び話し始めた。

距離が近くなったのでさらに声のトーンを落として話す彼女。

「ここってさ、ベンチが小高い所にあるじゃない?だから昼は周りが一望できるんだけどさ。」

何を言われているわけでもないのにドキドキし始める。嫌な予感?いや何に期待してる?

「だけど夜は周りが真っ暗で何も見えないよね」

ゆっくりと彼女の顔を見る。笑顔のまままっすぐ闇の奥を見ている。

「暗い所にいると、周りも暗いからお互い見えないだろうって思ってるけど、暗いほうから明るい所ってよく見えるんだよね。」

「たとえば、あのツツジのシルエットあるでしょ。あそこにひとり人がいるよ」

心臓が跳ね上がる。

「あと、右奥の街灯が壊れてるベンチの影、あそこにもひとり」

彼女から目が離せない。表情はさっきの笑顔のまま。
太ももに置いた手がゆっくりと太ももを撫でるのを感じる。

ゆっくりとこっちを見る彼女。

「…あなた、結構人気者なのよ?」

目の前が真っ白になる。今までも見られてた?K子さんも知ってた???
混乱する私の背中に腕を回し肩からうでをサスサスと撫でる彼女。

耳元で囁くように続ける。

「Sちゃんは見られるのが、好きなのかな」

自己紹介したばかりの名前を呼ばれビクンとする。

「Sちゃん?見れるのが好きな変態さんなの?」

子供に話しかけるような口調で呟く。

ふるふると頭を振る。背中に回した手から逃れようと少し腰を上げると肩にあてていた手を脇に回し逆に引き寄せられた。

「みんな待ってるみたいだよ?」耳元でほとんど声を出さずに囁く。

背中に回した手で脇をやさしくなでる。反対の手は左ももとおへそのあたりを行ったり来たり。触ってほしいところを触られない感じ。焦らされる。

「…そういうんじゃ…ないんで…」と反抗を試みる。

「じゃぁ逃げちゃってもいいんだよ?」太ももとおへそを行ったり来たりしていた左手がすーっと胸の先まで上がってくる。揉むのではなく優しくなでる。

ぴくっと反応しちゃう。

今度は手は太ももに戻らず、形を確認するかのようにゆっくりと胸を撫でる。

ピリピリと快感が伝わってくる。平静を保とうと無駄な抵抗をする。呼吸を整えようとすれば逆に声が出そうになる。

私は跳ね上がるように立ち上がった。

「ごめんなさい。」と謝ると、彼女は「んふふっ」と笑った。

彼女も立ち上がり服を直して、「ちょっと走ろうか」と微笑みかけた。

周りに人が居るのを知ってしまったら、ちょっと怖くなって、一緒に走る以外の選択肢はなかった。

彼女の後ろをついていく。公園の駅側の出口につくと彼女は、「じゃね」と、こっちに向き直った。

「あ、そうそう。よかったら明日も同じ時間にあそこで」彼女はそう言い残すと駅の方向に走って行った。

あそこで。あそこで?ジョギングに誘われてるの?それとも…。

その日の夜は不安と期待(?)で悶々として眠れず。
翌日の学校でもほとんど上の空で、友達にまで心配される始末。午後はもうたまらず早引きした。

これが完全に逆効果で、学校なら他のことで気も紛れるんだけど自室のベットで悶々とするしかなかった。

散々考えた挙句私が出した結論は
「今夜ジョギングはする」
だった。

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