冬だった。
30年以上前、外遊びが主流の時代だから、休み時間や放課後は、みんな校庭に出ていろんな遊びをやった。
おしくらまんじゅうとは、子供が何人かでひとかたまりになり、「おしくらまんじゅう、押されて泣くな」などとはやしながら、互いに身体をくっ付け合って押しあう遊びだ。
寒い冬、身体をあっためるのにはちょうどいい。
相撲みたいに取っ組み合うわけではなく、ほぼ抱きしめるような格好で押すわけだから、互いの体温で寒さがふっとぶ。
いつもは男子だけでやる。
女子と身体をくっつけ合うのはさすがにまずいと、小3でもわかっている。
小3っていったら、もう十分性欲というものを分かっている年頃だ。
エロいことを考えたらチンチンが硬くなる。
これは小3男子にもなればほぼ全員が経験してきているだろう。
ところが、その日は特別な日だった。
東京からの教育視察団が、俺の通う小学校を参観していたのだ。
俺が通っていたのはごく普通の市立小学校だが、県内ではちょっと有名だった。
ある名物教師がいて、その教育方法がたびたびマスコミに取り上げられていたからだ。
視察団が訪れたのもそういう理由があってのことじゃないかと思う。
東京からやってきたその視察団、合計15人くらいで、構成としては男女比2:8くらいで、女性が多かったと記憶している。
少数派の男性教育者たちはおっさんというか、初老に入ったような人ばかりだったが、女性教育者たちは皆若い。
女性の年は分かりにくいが、それでも30歳を超えた女性はいないように思った。
中には10代としか思われないような女性もいたから、教育者を目指す女子大生とかそんな人たちだったのかもしれない。
最初、俺たちのクラスで理科の実験の授業があり、その様子を父兄参観のように教室の後ろで見守っていた視察団、授業が半ばに差し掛かるとなぜかゾロゾロと生徒の近くへ移動してきた。
たぶん教師と視察団との間で打ち合わせがあったんだろうが、俺たちガキどもは面食らった。
アルコールランプかなんかの実験だったはずだ。
数名がグループになり、理科室の実験用テーブルに何グループかに分かれ、授業を受けていた。
女性軍団、2名づつくらいにわかれ、各実験テーブルのそばにやってくると、空いている椅子に腰かけた。
ニコニコしながら俺たちを見ている。
俺たちの実験テーブルへやってきた2人は、椅子に腰掛けるなり挨拶した。
「おじゃまします。榎本です。」
「斉藤です。おじゃましてごめんね。」
「・・・。あ、ああ、はい、うん。」
若い女性と接した経験があまりない俺は、隣にいる榎本さんにそんな意味不明な返答をした。
たぶん真っ赤になってたはずだ。
そんな俺たちの様子を見ていた2人、クスクス笑いながら肘をつつき合っている。
「やーん。かわいいー。」
そんなことを小声で言いつつ、リスか子猫でも見るようなうるうるした眼差しで俺たちを見つめている。
いや正確には、Kを、か。
子供ころのKは女みたいだった。
小4くらいまではよく女の子に間違えられていた。
色が白く、背も低い。
目がくりっとした二重で、カールした睫毛はバサバサ音をたてそうなほど長い。
クラスの女子にもモテモテだったと記憶している。
授業は滞りなく進行し、やがて終了のチャイムが鳴った。
今から10分間、休憩時間だ。
各実験テーブルを参観していた女性たち、および男性教育者たちは、チャイムと同時に教室を出て行った。
「またね。バイバイ!」
って手を振って、榎本さんと斉藤さんも出て行く。
彼女たちはまた他のクラス、他の学年も参観するのだろう。
緊張から開放された俺たち、校庭に駆け出した。
が、さぶ!
寒い。
寒すぎた。
6人くらいでなんとなく固まっていた俺たち、だれともなく、おしくらまんじゅう状態へと移行していった。
「おい、A、おまえ何、榎本ばっか見とんねん。おっぱい大きいからか?」
俺に組み付いてきた男子、頭に来ることを言う。
「うるさい。おまえだって、斉藤見とったやろ。あの人も胸おおきいぞ。」
「うるせえんだよ。ボインボインボイーン」
「あほか。」
そんなガサツな集団のもとへ、先ほどの視察団がまたやってきた。
榎本さんと斉藤さんもいる。
ん?
いっしょに遊びたいのか?
「なにやってんの?君たち。おしくらまんじゅう?」
「え?あ、ああたぶん、そう・・・」
俺たちも今やってる遊びだかじゃれ合いだかなんだかよく分からないものを「これがおしくらまんじゅうという遊戯である」とは断言できないが、まあたぶんそれだろうということで、俺が代表して返事した。
質問した榎本さん、すかさず返す。
「ねえ、私たちも入れてくれる?どうやるの?」
「え?どうやるのって、決まったやり方なんてあるか・・・おい、博士、知ってるか?」
「んんー・・・あるようなないような・・・でも『おしくらまんじゅう、押されて泣くな』って言うんじゃなかったっけ?」
博士ってあだ名を持つB君、自信なさげに答えた。
おしくらまんじゅうは、いかに30年前と言えど、すでにマイナーな遊びになっている。
しかし、まったくやらなかったわけでもない。
とくに田舎の方ではまだ、なんとなく子供がワーッと集まってぐいぐい押し合いへしあいするのは普通にあったと思う。
視察団の榎本さんと斉藤さん、それにあと3人の若い女性が、俺たち6人のガキに加わった。
「それ!いくよ!」
榎本さんが号令をかけ、合計11人のおしくらまんじゅうが始まった。
たぶん、教育視察の一環として、子供の遊びを一緒にやるっていう方針だったんだろう。
まあ、俺たちも所詮は小3、まだまだガキだ。
うまく乗せられた。
「おしくらまんじゅう!押されて泣くな!」
榎本さん、目敏くKを見つけだし、がっつりと彼を抱き締め?ながらぐいぐい押し出した。
てか、みんなが団子状態になっている中、Kの四方はすべて女性陣である。
正面から抱きついているのが榎本さん、右方向から斉藤さん、そして左方向からと背面から抱きついているのも女性だ。
他の男子と残る女性1名は、そのKたちを取り囲むようにぐいぐい押している。
つまりは、Kが中心となった円形おしくらまんじゅうに、いつの間にか移行していた。
「うふふ。もっと押さないと倒れるよ!ほらもっと!」
榎本さん、もはやKと密着したまま離れる気配がない。
Kの顔は、ちょうど榎本さんの胸のあたりだ。
豊満な胸に顔を挟まれ、窒息するんじゃないかと人ごとながら心配する。
Kもまた、無我夢中で榎本さんの背中に手をまわし、押し返している。
Kの後頭部は、これまたおっぱいをギュウギュウ押し当てられ、押されている。
左右の耳もおっぱいに挟まれている。
Kは四方からのおっぱい攻撃に、マジで窒息しそうになったようだ。
「ちょ、ちょっと、タイムだよ!息できん!」
「そうよ、えのもっちゃん、やり過ぎだって。」
横から斉藤さんがたしなめている。
「だって。かわいすぎるもん・・・」
榎本さん、ちょっと緩めた腕の中のKを見つめながら、それでも密着を解除しようとはしない。
「まあ確かにこの子、かわいいわ。東京にもちょっといないね。こんなかわいい子。」
「・・・」
褒められているのは分かっているが、「勇ましい男の子」を目指していた当時のKにはそれを素直に受け止められない様子だ。
「休憩終わるまでまだちょっとあるね。まだやるよ!そら!」
榎本さん、言うや否や再び攻撃を開始した。
攻撃はKの下半身にも及んでいる。
女性陣の隙間から見ている俺には、Kの腰から下にかけてがぶるぶる震えているように見えた。
どうやら、抱き締めながら、さらに膝も押し付けているのか。
彼女の膝は、ちょうどKの股間部分を押し付ける格好になっているようだ。
榎本さんに抱き締められ、四方からおっぱいを押し付けられ、さらには股間を膝攻めにされ・・・・。
成人したKいわく、「ほんと怖かった」らしい。
もちろん気持ちいいんだが、得体のしれない恐怖みたいなのがあったと。
やばい・・・。
なんだかフワフワして、オシッコがもれそうだ。
でも、なんで?
なんでこんな時にオシッコ漏れるの?
授業終わってすぐトイレは済ませたのに・・・
ああ、どうしよう。
なんか来る!
でも、こんなとこで・・・
みんなに笑われるよ!
ああ、ほんとどうしたら・・・
(以上、飲み会でのK自演回想シーン)
「ほら、もっと押して!」
榎本さんがKの顔に極限まで近づき、囁いた。
てか、引っ付いていた。
彼を抱き締めたままちょっと屈み、唇をKのおでこに引っ付けている。
つまり、それは「キス」と言われる行為であった。
「ちょっと、えのもん!あんただけズルい!あたしも!」
斉藤さんまでキス。
左にいた女性まで左側のほっぺにキスしてきた。
後ろからKを抱えている女性、彼の柔らかな頭髪に顔を埋め、くんくん匂いを嗅いでいる。
「やーん、なんかこのままずっと嗅いでいたい・・・」
「ばか、あんた相変わらず変態なんだから」
「ふふふ・・・」
その時、Kの腰が激しく震えた。
Kいわく、彼の記憶はここから3分間ほど「消滅した」。
Kにかわって、俺が見たままを書こう。
「あ、あっ、あーっ」
甲高い声で叫びながら、四人の女性に囲まれたKが腰をぶるぶる震わせ始めた。
Kの顔にキスの雨を降らせていた榎本さん、さすがにギョッとした様子で身体を離す。
榎本さんの腕の中、Kは彼女にしなだれかかり、ぴくぴく震えている。
顔が真っ赤で、病気になったんじゃないかと思った。
「ちょ、ちょっと、えのもん!」
「え、えーと・・・やっちゃった感じ・・・かな?」
「え?この子出しちゃったの?濡れてんだけど、ズボン・・・」
後ろから抱き付いていた女性、Kが履いている制服の半ズボンの前に手を這わすなり、そう言った。
「・・・、射精・・・、するの?え?でも小3だよ?」
「でも、オシッコもらすのになんであんな声でんの?」
「・・・、だよねえ。やっちったなあ。」
腕の中のK、頬をほんのりピンクに染めて榎本さんに身を預けている。
「・・・、やっぱ・・・かわいいー!!!」
榎本さん、自分がしたことを忘れ、再びキス攻撃を始めた。
その攻撃が、彼の開き気味の小さな唇に及んだ。
ぶちゅ。
俺たちはあっけにとられてその光景を眺めている。
寒さは、もう感じなかった。
ただ、Kに対する圧倒的敗北感だけは、しみじみと感じていた。
唇にキスされたK、ようやく我に返ったようだ。
「・・・、あ、今なんか、ヌルッてしたの入ってきた。」
「んふふ。ばれたか。」
榎本さん、いたずらっぽく腕の中のKに笑いかける。
「ちょっと、えのもん、舌入れてんじゃねーよ!」
「はいはい、ごめん。でもちょっとだけだし。」
「わ、わたしも・・・したい。」
後ろからKを支えている女性、おずおずと言う。
「はいだめー。もう終わり。この件は、これでおしまい。」
「えのもん、あんたって女は、ほんとどうしようもないね。やばくない?これ、淫行ってやつなんじゃないの?」
「だいじょうぶよ、あの子達、ぜんぜん分かってないから。」
榎本さん、言うなり俺たちを見回した。
俺が代表しておずおずと切り出す。
「あの、K、どうなったの?なんかしたの?」
「ちがうの、どうもしないの。心配ないのよ。ちょっと彼、熱気に煽られただけで。ちょっとトイレに連れて行くね。顔洗ってもらうから。」
「う、うん・・・」
俺たちを残し、女性陣はKをトイレへ引っ張って行った。
「で、ズボンとられてチンポ見られたよ。」
「マジ?」
「マジ。ヌルヌルのちんこハンカチで拭かれた。」
「おいおい。また勃ったんじゃねえの?」
「勃った。」
「で?それから?」
「で、パックリ。」
「パックリ?マジかよ。ほんとにパックリいかれたのか?」
「いかれたねえ。ありゃびっくりしたわ。何がおこったのかわからんし。」
「そ、それでどうなったんだ?」
「んなもん決まってるだろ。またイッちまったよ。ドピュドピュイッた。」
「お、おまえってやつは・・・なんて、うらやましい・・・」
「うん。今でもオナネタはそればっかだな。あん時の記憶だけで1000回はオナったね。」
「何秒持った?」
「30秒くらいかな?」
「気持ちよかったのか?」
「当たり前だ。」
「どんな風に気持ち良かったんだ?」
「そうだなあ。あえて言うなら、今まで行った風俗は全部カス、ってくらい気持ちよかった。」
「・・・。それって、幸せなのか?その気持ちよさを超えられないんだろ?」
「いいんだよ。あの気持ちよさ。あのドクドク感。大人になっちまったら、もう無理なんだよ。」
「あーあ。俺もなんかいいことないかねえ。」
「まあ、がんばれ。」
「うん。」
俺も真面目に人生を生き抜いて、来世はイケメンとして生まれることを希望するよ。
激しく、な。
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