07月14

残酷な領主様

その日の謁見の間には、下座とはいえ不釣合いな少年がひれ伏していた。

「……で?」

この季節になると珍しくない光景だ。
返答はだいたいわかっているが、領主の女は少年に問う。

「わ……我が家では今年の税が支払えなくて……その……
蓄えもなければ、お借りしている土地以外に財産もなく……くっ」

「それで、来年まで何もなしに、阿呆のように私に待っていろとでも?」

「め……めっそうもございません! ……ですが、先ほども申しましたように、
私どもの家にはお金などございません……うっ……。
そ、そこで……かっ、代わりといっては何ですが……これを……」

少年は顔を伏せながら起き上がり、震える両手を差し出した。
赤いベルベットの布の中に、薄桃色の丸いものが2つ乗っていた。

「なんだ、これは?」

「わ……私の……おと、男として……もっとも大切なものであります……」

「ほう」

「り……領主様におきましては何の価値もないものとは存じておりますが、
せめて私の持っているものの中で、一番大事なものを献上せねばと……ううっ!」

恐れおののいているだけではない。この少年は、今しがた刃を入れた、
自分の股間を襲う痛みに口ごもっているのだ。

侍女が少年からベルベットごとそれを受け取り、女領主のもとへ運ぶ。
女領主はそれを物怖じすることなくつまみ上げると、
目の前でブラブラと揺らしながら眺める。

「こんなものがお前の一番大切なものと?」

「は……はい……恐れながら……私の命以外には、
もうそのようなものしか……」

「これがおまえのであるという証拠は?」

「ご覧ください……失礼致します」

少年は立ち上がり、腰まで隠していた上着をたくし上げた。
下には何もはいていなかった。
少年が縮み上がった小さなペニスを摘み上げると、
その根元には荒い縫い目がついているだけで、他には何もなかった。

「先ほど、侍女の方に取っていただいたばかりです」

「ふむ。確かにおまえのもののようだな。ということは、
こいつは平民の子種がつまっているだけの、
本当に何の価値もないものということだな」

「……仰せのとおりで……あっ……!」

女領主が無造作に、献上されたそれを投げ捨てる。
それに反応して、領主の足元にいた犬がそれを追い、
床に落ちた2つの小さな肉をペロリと平らげてしまった。

「ああ……」

「なんだ? 私のものをどう扱おうとかまわないだろう?」

「ううっ……も、もちろんでございます……」

少年の目に涙が浮かぶ。

「ふん、あれだけではアリッサのおやつ程度にもならんな」

「……」

「こんなもので税を免れさせるわけにはいかんな」

「そ……そんな!」

「おまえ、さきほど自分の男として一番大事なところを献上したといったな?」

「は……はい……」

「出し惜しみしておいて、税を免除してもらおうとは虫がいいとは思わんか?」

「えっ……?」

「わからんか? 男として大事なところ、あれだけではないだろう?」

「そ、それはもしや……」

「おまえのつまんでいたそれ、まだ残っているではないか。
アリッサはまだ空腹のようだぞ」

少年は自分のペニスをつまみ、真っ青になりながら女領主に聞いた。

「あの……これを献上すれば税のことは……?」

「二言はない。ただし、アリッサは踊り食いが好きでな。
この意味は……わかるな?」

少年は大粒の涙をぽろぽろとこぼしながら、
足を開いてその場にかがみ、腰を突き出すような格好をして犬を誘った。
痛みに暴れて領主の飼い犬に粗相をすることのないよう、
2人の侍女が少年の肩と足を押さえる。

「おいで、アリッサ……僕の……召し上がれ」

雌犬が呼ばれたことに気づき、ゆっくりと少年に近寄る。
股間に鼻を寄せて、フンフンと匂いをかぐ。

「アリッサ、よし」

女領主の許可を得たアリッサは、少年の男としてもっとも大切な場所の
最後の部分を、先端から少しずつ噛み千切り、租借していった。
まるでゆっくりと何度も噛み千切り、少年に何度も悲鳴を上げさせることで、
飼い主が喜ぶことを知っているように。

それでも小さな肉、1分もしないうちに根元まですべて平らげて
雌犬はその場を離れて、女領主の足元で再び昼寝を始める。
少年は股間から血を流しながら、その場で倒れ放心していた。

「よし、今回は税は待ってやる。以上だ。
そいつの血を止めて城から放り出しておけ」

侍女にひきずられて少年が退室する。
見世物にそこそこ満足したように、女領主は侍女に尋ねる。

「よし次。今日はアリッサが満腹になるまで、
あと3人はいけるだろう。面倒だ、まとめて通せ」

領主への謁見はまだまだ続くだろう……。
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