友達から飲まないか?との誘いを受けて、それを了承。
少し仕事で遅れてしまいつつも友達の待つ飲み屋に着いてみると、
もう既にかなり出来上がっている彼を発見。
彼は出版関係の仕事をしていて、それが上手くいかないと彼は僕を呼び出し一緒に酒を飲みながら愚痴を言う。
今回もそうだろうと思いながら話を聞いてみるとやはりそうだったのだが、酒のペースから見るに単なる愚痴酒が自棄酒にギアチェンジしているのは明白だった。
彼は自分の立ち上げた企画書を鞄からおもむろに取り出し、僕に手渡した。
それはお笑いコンビ、それもピン仕事で別々になったり、解散してしまったりしたコンビにスポットを当てて今・昔・これからを題材にした取材企画だった。
タイトル「SeparateLife(仮)」
第一回目の今回のコンビは猿岩石。
皆さんは猿岩石を覚えているだろうか?
「進め!電波少年」という番組で、世界をヒッチハイクしながら旅したコンビだ。
その二人はこれをきっかけにブレイクし、歌を歌い紅白に出たり様々な番組レギュラーを持ったりもしていた。
しかし、その人気は長くは続かず、段々とテレビ出演が減っていき、遂には解散してしまった。
そのコンビの一人有吉さんとの会談から企画はスタートしていた。
友達(以下「友」)「このたびは企画『SeparateLife』の取材に協力していただき誠にありがとうございます。本日はよろしくお願いします。」
有吉(以下「有」)「こちらこそよろしくお願いします。」
友「では早速ですが、現在の活動についてお願いします。」
有「はい、(出演番組名)とかに出ています。」
友「今の活動についてはどう感じていますか?」
有「必死に食らいついていってる感じですね。」
友「何か仕事に対するこだわりとかはありますか?」
有「別にこれと言っては・・・ああ、でも昔に比べては周りを良く観察するようになりましたね。」
友「と、いうと?」
有「ネタを創るためですね。常にアンテナ立てているようにはしています。
この前なんかは塀上に猫がいて、なんか面白い動きしているんで、目で追いながらつけていったらいつの間にか交番の中入っちゃいましてね。
お巡りさんに『何かありましたか?』と言われて、焦りましたよ笑」
友「で、どうしたんです?」
有「とりあえず、無くし物があります。といったら、紛失物登録みたいなのを書いてくれと言われまして、紛失物の欄に『ネコのネタ』と書いといたんです。
そしたら後日、それで電話掛かってきましてね。行ってみたらネコ手渡されたんですよ笑
ええ?と思ったら首輪のところにネタと書いてありました。違うんですよ?としっかり説明したら、今度からはふざけないようにと怒られてしまいました。」
友「それはそれは笑」
有「たぶん名前なんでしょうけど、ネコにそんな名前付けるセンス僕にあったら今頃もっと売れてるでしょうね苦笑」
友「次に昔の話。猿岩石の時の話を聞いていきたいと思います。まず、なんで猿岩石なんです?」
有「他所でも結構言っているんです。
同級生で評判の良くなかった女の子達のあだ名を使ったとかね。実際のところは違うんです。
猿は孫悟空のことで岩石は彼を封印していた岩を指しているんです。其れを三蔵法師が解放してあげて、それから悟空は大活躍するわけなんですが、それになぞえて大きな困難にぶつかってっも、そのつどそれを乗り越えていずれは大活躍してやるっていう結成の初志がこめられてたんです。」
友「へえ??、いい話じゃないですか。何で違うことを言ってたんです?笑」
有「笑いに走ってましたね?。今思うと迷走でしたので、ここできいてくれて助かりました。」
友「進め!電波少年で人気を博し、一躍時の人となった。その時の猿岩石はどうだったんですか?」
有「一言で言うと最高でしたね!自他共に認める絶頂期ってやつだったと思います。
きつい旅のご褒美だと思っていましたし、頑張ったんだから当然だなと、正直天狗にもなってました。」
友「当人を前に言いにくいのですが、それもその人気と共に終息を迎え、打って変わって暗い時期に突入したと思います。その時は?」
有「大変でした!変なプライドがついちゃった分余計にね。
だけどあの時期があったからこそ、芸人として頑張ろうと純粋に思えるようになりましたね。」
友「なるほど、結果として有吉さんの芸人魂に火をつけたと。」
有「そうなると思います。と言うよりお笑いが堪らなく好きだってことを再確認しただけなんですけどね。
輝く成功で眩んでた目が暗がりで直ったってことですかね。」
友「昔の〆、猿岩石解散について。相方の森脇さんとも現在は不仲説がでていますが?」
有「確かにね。悪い時に頑張れるかだと思ってた時のことですから、凄くつらかったです。
そのせいで森脇とも険悪になった時期もあります。しかし、今は大丈夫ですよ。
僕だってお笑いあきらめて定職につこうと思ってた時もありますから。気持ち分かります。」
友「森脇さんの結婚式に出なかったと聞きましたが、お祝いしたりしなかったんですか?」
有「そんなこと無いですよ。結婚式でなかったのは彼の生活や世界を尊重してだったんです。
後に電話でおめでとうと言わせてもらいましたよ。それにテレビでですけど一緒に歌歌いましたしね。」
友「最後にこれからにこれからの有吉さんについてお願いします。」
有「はい。これからも頑張って生きたいと思います。一人でも多くの人を笑わせられる芸人になりたいと思います。
なんだか型どおりですいません。」
友「いえいえ笑今日は本当にありがとうございました。」
有「こちらこそありがとうございました。」
有吉いいやつじゃないか!率直にそう思い友にそう感想を述べる。
「ああ、すごいいい人だったよ。年下の僕にもほんと丁寧に対処してくれたよ。
で、終わった後に再度突っ込んで聞いてみたんだ。」と言いオフレコ部分を語りだす友。
友「正直なところ、まだ森脇さんとの仲は戻って無いんじゃないですか?」
それを聞いた有吉は
有「それぞれの風が吹いてあいつと僕は違った道を歩みはじめたんだ。
だけどね、同じ空の下、上を向いて歩き続ける限り、猿岩石は終わらないんだよ。」
喫茶店の窓から空を見ている有吉。
それにつられて見た友の目には太陽と透き通るような雲が見えたという。
「めっちゃ、良い言葉じゃない!何でそこがオフレコ?笑」と僕。
「そうなんだよ・・・これいいじゃないですか!やっぱり使っていいですか?ホロッときますよって、有吉さんに言ったんだよ。そしたら
『僕は笑ってもらいたいんだよ』って笑いながら言ってたよ。」
この企画を鼻息荒く提出したところ、同タイミングでの大物芸能人同士の交際発覚による大幅な記事差し替えのあおりを受けあえなく没。
遂には完全に立ち消えとなってしまったのだという。
あまりにも悔しそうなので友の許可を取って僕はここにその文の一部を記載させていただいた。
皆さんの心の中にも白い雲があること願う。
最後までお付き合いありがとう。
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