日本たたきで収入アップのシー・シェパード代表
産経新聞11月20日(日)12時1分配信
米国の反捕鯨団体、シー・シェパード(SS)代表のポール・ワトソン容疑者(傷害容疑などで国際指名手配中)の2010年の報酬が、前年より2・5万ドル増の12万ドル(約920万円)だったことがわかった。05年に南極海調査捕鯨妨害を開始して以来、ワトソン容疑者が受け取った資金は52万ドル(約4千万円)にもなる。日本への過激な妨害をPRして集めた寄付金で、“私腹肥やし”を行っていた形だ。一方、SSの拠点の1つとなっている英国で、与党保守党の国会議員、ザック・ゴールドスミス氏がSSの資金集めを支援し、英国での後援者となっていたこともわかった。(佐々木 正明)
SSは米国と英国で、総収入における税金が控除される特別なNPOとして認定され、毎年、当局に対して活動報告書を提出する義務がある。いずれの事実も、産経新聞が入手したSS米国本部と英国支部の活動報告書により判明した。
1977年に、国際環境保護団体グリーンピースから脱退したワトソン容疑者が設立したSSは、団体のカリスマを信奉するメンバーが集まり、ワトソン容疑者の意向が強く反映される。日本の捕鯨関係者は「SSはワトソン容疑者がいなければ、ただの烏合(うごう)の衆に過ぎない」と分析する。
メディアを巧みに操るのが得意なワトソン容疑者は、調査船団を妨害する際、米、英、オーストラリアなどの反捕鯨国のメディアに情報を流し、一方的に日本を批判。各メディアも「日本船団がわれわれを殺害しようとしている」などとするワトソン容疑者の言葉をそのまま伝え、一方で、SSも公式サイトなどで「今すぐ寄付を」などと呼びかけて、団体への支持が集まってきた経緯がある。
特に、SS抗議船にカメラクルーを乗船させ、捕鯨妨害の様子を撮影した米有料チャンネル、アニマルプラネットの番組「Whale Wars(クジラ戦争)」が2008年に始まると、団体の収入はうなぎ上りに増加。2010年には、米国内での総収入は991万ドルと過去最高を記録した。
報告書によれば、団体が与えたワトソン容疑者の年俸は05年に7万ドル、06?08年は8万ドルで、09年に9・6万ドル、10年に12万ドルとなっている。ワトソン容疑者は反捕鯨国のメディアに頻繁に出演しており、出演料を含めると年間収入はさらに多いとみられる。
ワトソン容疑者は事あるごとに「われわれの団体は多くのボランティアが活躍している」などとPR。無償の若者たちが危険な活動に手を染める一方で、ワトソン容疑者だけが特別で、日本をダシに使って集めたお金を懐に入れてきたとも言える。SSを脱退した前活動家によれば、「団体にはお金を管理する何人かのメンバーがいて、ボランティアとのトラブルが絶えない」という。
一方、SS英国支部も年間収入を増やした。昨年は、33・8万ポンド(約4000万円)と前年より26万ポンド増加した。報告書には「後援者が増えた結果だ」と記され、最大の後援者の1人として、チャリティーイベントなどでSSの活動を支えたゴールドスミス氏の名前を挙げている。
ゴールドスミス氏は環境保護関連の雑誌編集者を務めた経歴を持ち、保守党の政治活動にも参加。昨年5月、ロンドン市内の選挙区から立候補し当選、下院議員となった。公式サイトには「幅広い分野で環境保護問題に関与している世界中の団体のために資金を集めている」と記されている。
SSについては「すばらしい団体」「英雄的な活動をする」と支持を表明。昨年1月に、SS抗議船アディ・ギル号が日本の第2昭南丸と衝突沈没した際には、声明を出し、「彼らは日本の捕鯨船を怖がらせるスピードを持つアディ・ギル号に代わる船を手に入れたがっている」「支援を必要としている」などと団体への寄付を呼びかけた。
SSの活動に、物資人員面でも金銭面でも多大な貢献を果たしているオーストラリアでも、与党緑の党のボブ・ブラウン党首がワトソン容疑者との親交ぶりをアピール。事実上の母港のタスマニア島・ホバート港にSS抗議船が寄港する際には、波止場まで出迎え
るパフォーマンスを見せ、日本を批判する豪州での急先鋒(せんぽう)となっている。
SSは、英国でも豪州でも、政治ロビー活動で国会議員に支えられている実態が浮かび上がった。
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