06月22

自慢の妻が

私は33歳の社内SEです。
関東の農機具会社に転職したばかりです。
妻は今年で28歳になり大手企業の受付をしていましたが2年前に私と結婚し退職しました。
自分で言うのもなんですが妻は中々の美人で、口数も少なく清楚という雰囲気の私の自慢の妻です。
私はこれまでは世界的IT企業でエリートとして認められてきましたが、社内SEに転職してからは
なぜか営業の方々のカバン持ちとして
トラクターやそのほかの機械を買ってもらうために毎日農家に通う毎日です。
この新しい会社で認められようと必死で働いていますが
優等生で育ってきた私には、粗暴な言葉遣いの若い農家の人たちが怖く、なかなか馴染めず、
また営業の方がたに認められようと卑屈になるため、ほとんど舐められまくりの毎日です。
年下の農家の人たちに、呼び捨てにされて、ほとんど小間使いのように農業の手伝いまでさせられている始末です。
また会社の中でも、現場を知らないという気後れと、みんなとうまくやらなければならないとの思いから必要以上に気を使い、
結局は高卒の若い社員にまであごで使われるようになってしまいました。

そんな中、会社が企画した農家のお客様たちを招いての焼肉パーティーが開催されることになりました。
その接待パーティーの接待に会社の女子社員だけでは満足してもらえない
(女子社員は19歳と20歳のコギャルみたいのと45から50歳くらいの太ったおばさんが3人)と考えた営業部長が、
社内SEなど管理部門の社員の妻を応援に出せといってきたのです。
私は会社での惨めな姿を妻に見られたくないという思いから、
なんとか許してもらおうと部長に頼みましたが、仕事ができないくせに俺に意見するのか!と怒られ
結局は承諾せざるを得ませんでした。

私は妻の恵美に会社の行事だからと、出席をたのみました。
素直な性格の妻は「会社の行事なら私もがんばらなきゃね。」と承諾してくれましたが、不安そうな顔をしていました。

当日は快晴で、夜6時からの焼肉パーティーのため4時くらいから、準備をはじめました。
場所は会社の駐車場を特設会場にした、野外パーティーです。
営業社員や先輩社員などは仕事が忙しく、社内SEである私と、元ヤンキーっぽい若い高卒の事務員たちで準備を進めました。

若い社員にとっては、今回の焼肉パーティーも面倒な行事の一つでしかなく、
「まったく営業部も余計なことしやがって」「ほんと毎日残業なのに何でこんなことまでやらされなけりゃーならねーんだよ!」と全員が文句たらたらの状態でした。
そのうち矛先は私に向けられ、「こんなのいつもまともな仕事してないんだからオメーが準備しろよ!」と私一人に準備を押し付け、彼らはタバコを吸いながらサボっていました。

定刻近くになると、お客様である農家の方々や会社の上層部の皆さんも会場にこられ、社員の妻たちも会場に詰め掛けました。
そして私の愛する妻も膝丈くらいのクリーム色のワンピースにカーディガンを羽織った服装で会社に到着し、
私は妻を連れて会社の同僚たちに挨拶をして回りました。
会社の同僚たちだけでなく顧客達も、私の妻が美人であることにびっくりし見とれているようで、
私は妻のおかげでひさしぶりに優越感に浸ることができました。
しかしその優越感は木っ端微塵に打ち砕かれることいなるのでした・・・・

営業本部長である常務の挨拶で宴は始まりました。
基本的には各営業マンのテーブルに自分の顧客を案内することになっており、
それぞれのテーブルに会社の上層部が張り付きます。
私達管理部門の人間は、まだ当社との取引が少ない見込み客で、特に若い農家達のテーブルに付きました。
私のテーブル担当の上層部は総務部の山崎という部長でした。
私は、汗だくになり肉や野菜を炭火で焼き、妻も皆さんにビールや焼酎を注いで回りました。
山崎部長といえば、普段顧客と接していないせいか対応がわからないらしく、
卑屈な笑顔で挨拶をしてまわり、私に対して「オイ、肉が足りないぞ!もっとジャンジャンやかなきゃだめだろ!」と上司っぷりをアピールしていました。

ほかのテーブルを見回すと、古くからの当社の顧客が多く、年配の方も若い方も紳士的な感じでそれぞれが楽しんでいました。
みなさん、最初だけは初対面である私の妻に緊張していたせいか、おとなしかったのですが、
「いやあ、石川さんにこんな綺麗な奥さんがいたとはな」「オメーもなかなかやるな」だんだん打ち解けてきました。
妻は少し照れながら、「そんなことありません、今後ともよろしくお願いいたします」といいながら酒を注いでまわりました。
そのうち「奥さんも飲めるんだろ?」「オラ、飲めよ!」などと言われ、少しびっくりして私の顔をみましたが
私がうなずいたため、勧められるままに酒を飲んでいました。
宴は進み酒もかなり入り、私のテーブルは私が恐れていた状況になりつつありました。
「アンタの旦那、ホント使えねーんだよな。機械の事あんまりわかんねーし」
・・・お客さんたちが、こぞって妻に私の無能ぶりを語ると、
社内の先輩たちまで
「システムエンジ二アだからって、現場知らなくて良いとでも思ってんのか?SEなんざ、うちにはいらねーんだよな、ギャハハ」
妻に私の無能ぶりを自慢するかのように話し出しました。
妻も愛想笑いを浮かべながら、「そうなんですか、すみません。主人をよろしくお願いします」などといいながらも、
皆さんの話を必死にきいていました。
私はいたたまれなくなって、席をしばらくはずし、会場のみなさんにお酒をついで回ったりしていました。
2時間ほどたち、営業部長の挨拶で宴は終了しました。
私は自分のテーブルに戻ると、12人いたメンバーのうちの5人が私と妻を入れてカラオケスナックに2次会に行くことになっていました。
私は後片付けもあるので、許してほしいといいましたが、「お前がいないから、奥さんと約束したんだ。お前は片付けが終わってから来い!」といわれました。
妻は少し不安そうな顔をしながら、「お願い、早く着てね。」と言い残し、彼らと消えていきました。

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