私はもう限界でした。しかし不思議なくらい冷静で、なんか、もうひろみが別人のような感じがして、その場にそれ以上いても無意味である、自分には関係
ない、と何故か思っていました。
私は普通に玄関を開け、バタンと閉めて階段を下りていきました。約一時間強、あの場に居ました。最初こそ物音をたてないように気をつけていましたが、途中からは目眩を感じたりしゃがみ込むなど、思えば壁に無造作に手をついたりしていたはずです。つまり、そんな音、
私の存在すら気に掛からないくらい二人は?夢中だったという事でしょう…?
私の身体は脱力しているのですが、意識だけははっきりとしています。
ささやかな復讐、せめてひろみと仁の二人の瞳に最大級の恐怖だけでも焼付けたい、そう思いました。
私は右手を左胸に押し当て、自らの鼓動を確認するともう一度忌々しいひろみと同棲している部屋に戻る事にしました。
今度はそっと玄関を開き、部屋の物音を確認します。
物音が聞こえないのを確認し、そっとドアを開き部屋の中を確認しました。二人は抱き合ったまま目をつぶっています、軽く寝息が聞こえるような気がします。
私はそっとドアを閉め…自分の部屋に入りました。デジカメを探しながら走馬灯のように流れるひろみとの記憶と葛藤し、それはいつしか追憶の日々に変わるのだと自分に言い聞かせました。
本業用のアタッシェから必要な物を取り出すと息を整え、そして寝室に向かいました。
起きろ!二時間ぶりに出した声は喉がカラカラなのにも拘わらず、低く冷たいモノでした。
うっすらと目を覚ました仁は
仁:「誰だ!人の部屋に上がり込んで!」と虚勢を張りますが声が上ずっていました。
ひ:「きゃっ…え…」ひろみに至ってはパニック状態でブランケットを引っ張り上げるのが精いっぱいでした。
私:「ひろみ、こいつに俺が誰だか説明しろ」
ひ:「ち…違うの。誤解なの…わ、私が…」
私:「レイプされたのか?」
仁:「いや、そ。それは違う」
私:「お前は黙ってろ!」私は柄にもなく声を荒げました。
普段から温厚な私の仮面が剥がれた瞬間でした。暴力はいけないと思いながらもこの期に及んで言い訳をする仁が許せませんでした。
その後暫くの間、二人に詰問をしました。否、尋問という名の拷問だったかも知りません。
私:「最後の質問だ。どちらが真の恐怖を感じたい?」
二人は答えません…。
私は裏切られたとはいえ、今朝までひろみを愛していました。ですから最後に慈悲の心になりました。
私:「ひろみ、今までありがとう…」言い終わる前に私は右手に力を込めました。
サイレンサーで消された小さな爆発音が聞こえるよりも早く、ひろみの眉間にぽっかりと小さな穴が開きました。同時に失禁したようです、ひろみの身体は痙攣し仁にもたれ掛かるように崩れました。よく見ると仁も失禁しています。
私:「二人して俺の部屋を汚しやがって。よくみろ、お前が抱いた女の末路を」
仁:「ひぃ!…ゆ、許して下さい。おぉぉぉ…」先ほどまで歓喜の喘ぎ声を上げていた男の声とは思えませんでした。
パン!
私の右手に握られたそれは正確に仁の汚らしい一物を射抜きました。痛みとショックで舌を噛んだのでしょうか?仁の口からも鮮血が溢れ出てきます。
私:「そろそろ仕事に戻らなければならないのだよ、俺マター案件も多いしNRという訳にはいかないのでね」言い終わると引き金を引きました。
私は肉の塊と化した二つの物体を血が垂れないようにそっと風呂場に運び、動脈を切り血抜きをし…スーツを着替えてから二人の携帯をチェックして軽く偽装してから営業先に戻り、仕事をこなしました。
仕事からの帰り道に肉の塊の処理と証拠隠滅の方法を考えました。
Nシステムにひっかからないように移動しながら仁の携帯を東京駅まで運びコインロッカーへ。ひろみの携帯はその移動途中に見つけた長距離トラックの底にガムテープで軽く貼り付けました。
深夜になり、二つの肉の塊をそっと車に運び込むと帰宅途中で盗んだ車のナンバープレートを張りつけて山奥へ運びました。肉の塊の処理が終わった後、かなり回り道をして盗んだプレートの処理をしていたり本職用の荷物をセーフハウスに移動させていたら帰宅した時には夜は明けていました。
少し早目に家を出て何度目かの電話チェックをしたらひろみの電話は電源が落ちていました。恐らく移動途中で車から剥がれ落ちたのでしょう。
私は何食わぬ顔で出社し、同僚と他愛のない世間話をしながら定刻になると営業に出掛け、途中で東京駅に立ち寄るとコインロッカーから仁の携帯を取り出しチェックしました。自宅や会社からの着信や嫁からのメールがありました。
充電池を買い、彼の携帯に差し込むと今度は営業先への途中にあるビジネスホテル街の自販機の底に携帯を隠しました。
昼になり自宅に戻り、寝室の処理を始めました。ルミノール反応が出ないように処理をし寝具の処理をします。
そして偽装とアリバイ工作が終わった頃にのこのこと警察がやってきましたが…
私がこうして顛末を書いているという事は警察の目を欺けたのでしょう。ほとぼりが冷めたら出国いたします。皆さん、ありがとうございました。
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