07月26

タックル姫(絶頂作戦)

前作で、みんなに怒られた。

たしかに、一本を二本にしてごまかそうとしてた。

ゴメンです。反省です。続きです。飛ばします!

十月に入り、大きな仕事も片付いた。忙しいことには変わりはないが、
少しだけ気持ちに余裕が出てきた。母親が、玄関のフェンスが壊れて
いると言う。「ああ、次の日曜にでも直しに行くよ」ついでに、高い
木の剪定も頼まれた。

日曜の朝。快晴。まだまだ暑い。久しぶりに庭に来た。今思うとあの
荒れた庭がずいぶんキレイになったと感じる。懐かしさすら覚える。
さっそく、フェンスの修理を始める。おそらくトモはここに来る。
オレの勝手な予定では、午前中のうちに作業を終わらせる。仮に午後
にズレても早めに終わらせる。昼飯を食べ終える頃にトモが登場。
そこで二人で話す。つらい話になるが仕方が無い。もし、来なかった
ら、電話する。そのためにも、早く作業を終える必要がある。

「オレさん、デートしよ」トモだ!もう来たのかよ。
「おう、トモか」
「忙しかったの?ずっと連絡くれないからさ」
トモ、前に買ってやった洋服を着ている。Tシャツはなく、キャミソール
に見せブラ。さすがに秋だもんでその上からGジャン。ミニスカート。
黒いニーハイのタイツ。それに合わせたブーツ。薄く化粧なんかしていや
がる。でも、全然イケてる。
「ああ、」早すぎるって!
「何してんの?」
「フェンスの修理」
「デートしよ」
「今は手が離せない」
「手伝おっか?」
「キレイな服を汚したくない」
「じゃあ、着替えてくる」
「いいって。これが終わるまで、かまってられないんだよ」
「じゃあさ、オレさんの仕事終わるまで、ここで見てる」
「気持ち悪い奴だなー。夕方来いよ。夕方!」
「イヤ」
「オレもトモに話があるから、それまで家に帰って勉強でもしてろ」
「せっかく、キレイにしてきたのに」
「じゃあ、誰かとデートでもしてこい」
「…何でそういうことを言うんですか?」
無視。オレ、トモを見ないで手を動かす。
「冷たくなりましたね」
「……」
「嫌われましたか?」
「……」
「ヤリ逃げですか?」
「そんなんじゃない」
「そういう風にしか見えませんよ」トモの声がだんだん大きくなる。
「だから、後でちゃんと話そう」
「今、話してください!」涙声だ。
「ムリ言うな」
「つらかったんだから……。ずっと独りで淋しかったんだからー!」
トモ、泣き出す。
「いいかげんにしろ!オレたちは親子ほど年が離れてるんだぞ。オレ
みたいなオッサンと、もう関わり合うな。忙しくても作ろうと思えば、
トモと会う時間ぐらいどうにでもなったのに酒ばっか飲んでた。トモ
と約束したのに塾に迎えに行くことさえしなかった。オレみたいな、
ろくでなしはトモの将来に何のメリットもない
「メリットってー、そんなつもりで一緒にいたんじゃないのにーー!」
「泣くな、今は良くてもきっと後悔する。もっと自分を大切にしろ」
「次するときー、もっと気持ちよくなるって言ったのにーー!」絶叫。
「バカ、大声で言う言葉か!」
隣の畑で農作業をしてたバアサンが、心配して寄ってくる。
「アレーッ、オレさん、トモちゃん泣かしちゃダメだよー」
「スミマセン、大騒ぎして。すぐに家に帰らせますから」
「もー、イヤ。大…嫌い…です!ワァーーーー!!!」
トモは泣き叫びながら、ログハウスの中に消えていった。
そっちかよ。

オレはかまわず作業を続けた。トモのことは放っておいた。
昼飯でも一緒に食べれながら、話するしかないと思った。昨夜、考え
てたことを頭の中でくり返す。インポのことも言うしかないだろう。
気が重いが仕方が無い。
11時を過ぎた頃には、大体の作業も終わった。車に乗り、街に出て、
コンビニでおにぎりを買う。もちろんトモの分も。
機嫌直しにケーキとアイスもついでに購入。トモの好きなやつ。

庭に帰り、ログハウスの中に入った。トモがいない。帰ったか…。
テーブルの上には、トモのGジャンとバックが置いてある。
ん?トモどこだ。ふと見回したら、居間の隅っこで壁に向かって
膝に顔をあてて体育座りのトモがいた。何やってんの?
「トモ、おにぎり買ってきたぞ」
返事がない。
「ト?モちゃん、君の好きなケーキとアイスもある」
微動だにしない。
「ト?モちゃん、遊びましょ!」
ピクリともしない。
「勝手にしろ」
オレはシャワーを浴びにいった。着替えて居間に戻っても、トモは
同じ態勢でいた。
「トモ、飯にしようぜ」
静寂。なんか場違いな空気が部屋中に漂ってる。
トモの背中から、それを感じる。
「トモ…?」
トモが小声で何か言っている。
「何っすか?」
「????????」
「何言ってるか分かんないぞ」
「そんなものにごまかされないから」トモが言う。
「飯食ってから話そうや。アイス冷蔵庫に入れとくぞ」
「絶対に、ごまかされないから」
「ハイハイ」
トモ、突然立ち上がる。涙目。唇を思いっきり噛んでる。肩がプルプル
震えている。拳を握りしめている。トモが怒り狂ってる。
何だコイツ?やんのか。

「トモ、落ち着けよ」トモに近づく。
「来るなーーー!!バカーーーー!!!」トモ。
「大声出すなーーー!!ボケーーーー!!!」オレ。
「初めて、本気で好きになったのにーーー!!!」
「大声出すなって…」
「オレさんのこと……、本気で好きになったのにーーーーー!!!」
「……」
「あきらめませんから…、絶対なあきらめませんから!!!」

「ワァーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」

トモが叫び声を上げて走り出し、突っ込んでくる。
クソッ!来やがった!!!

タックルーーーー!!!!

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