【落語】ひとり部屋 作:内田守衛
・与太郎は庭仕事の最中に梯子から落ちて、手足の骨を全部折って入院しました。
・きょうは奥様がお見舞いにやって来ました。
奥様「406号室、竹下与太郎・・ここだね」
与太郎「あッ、奥さん!」
奥様「与太郎、元気かい?」
与太郎「元気じゃないですよ、もう、これですから」
奥様「気の弱いことをお言いじゃないよ、精をつけて養生すればすぐに直るさ」
与太郎「でもねえ、両手両足、全部折っちゃったんですから」
奥様「まったく下手に落ちたもんだよ」
与太郎「上手に落ちろと言われても・・」
奥様「いままでは面会謝絶で来られなかったけど、これからは毎日来てやるよ」
与太郎「ありがたい、何か差し入れをおねがいしますよ、毎日」
奥様「お見舞いだろ、刑務所じゃないんだから、そうそう、今日はね・・」
与太郎「何です?その包みは・・」
奥様「おまえの好きな、うなぎだよ、お昼はまだだろ?」
与太郎「うなぎ!うなぎは私の好きなものでも百本指に入りますから」
奥様「どんだけ好きなものがあるんだよ、おまえは」
与太郎「じゃあ、さっそく戴きます」
奥様「お待ちよ、まず身体をきれいにしてさ、それから食べるがいいよ」
与太郎「そうですね、もう十日も風呂に入ってないから、そこらじゅう臭くって」
奥様「だからさ、私が拭いてやるよ、今濡れタオルを用意するから、その寝巻きをお脱ぎ」
与太郎「お脱ぎったって、奥さん、こうやって手も足も吊られてるんですから」
奥様「それもそうだね、ちょっとお待ち、脱がせてやるから」
与太郎「そおっとお願いしますよ」
奥様「まず、この紐を解いてと・・こっち向きな、あれ、おまえオムツしてるのかい?」
与太郎「そりゃそうですよ、パンツはけませんから」
奥様「オムツをとるよ、いいかい?わっ、臭いじゃないか」
与太郎「いちおう、毎日看護婦さんが拭いてくれてるんですけどね、途中で止めちゃうんですよ」
奥様「すいぶんいいかげんな看護婦だねえ」
与太郎「いえ、こいつが悪いんです、こいつが立っちゃうんですよ、きれいな看護婦さんに触られると」
奥様「わたしも拭いてる途中で立たれたらいやだよ」
与太郎「奥さんなら大丈夫です、きれいな人だとだめだけど・・」
奥様「おまえ、気は確かかい?頭も打ったんだろ?」
奥様「さあ、大事なとこを拭くからね、立たせるんじゃないよ」
与太郎「とにかく、そおっとやってください」
奥様「解ってるよ、ちょっと持ち上げるよ、皮の中も拭くからね、ちょっと剥くよ」
与太郎「奥さん、だめだ、奥さんの柔らかい手で触られると・・」
奥様「ほーら、立ってきたよー、見てごらん」
与太郎「なんで自慢してるんですか?しょうがないですよ、何日も出してないから・・」
奥様「そうか、精が溜まっちゃってるんだねえ、これはッ」
与太郎「いてっ、指で弾かないでくださいよ」
奥様「出してやろうか?私が・・」
与太郎「え?ほんとですか?なんせ自分じゃ触ることもできないんで」
奥様「私がやれば直ぐでるよ、あっという間さ」
与太郎「じゃ、お願いします」
奥様「いいかい、やるよ、シュッ、シュッ、シュッ・・どうだい」
与太郎「うーん、いまいち、ですかねえ・・」
奥様「何がいまいちだい、気持ちよくないかい?」
与太郎「あのー、フィーリングの問題ですかね、これじゃあ、多分1日やっても出ませんね」
奥様「パチンコやってんじゃないんだよ、私は・・」
与太郎「あのー、何か見せてもらえませんか?」
奥様「新聞でも見るかい?」
与太郎「もう、意地悪だなあ、おっぱいとか、おしりとか、私の好むものを・・」
奥様「きょうは着物だけどね、穿いて来たんだよ、これ脱いでやるからね、よいしょっと」
与太郎「奥さんのパンツですね!それですよ、好きな物の百本指に入りますから」
奥様「ほら、これを持って眺めるんだよ、いいかい、嗅ぐんじゃないよ」
与太郎「持てませんよ、こうやって両手両足つってるんですから」
奥様「じゃあしょうがない、こうやって顔に乗せて臭いでも嗅いでな」
与太郎「ああ、懐かしい臭いだ!子供の頃いつも嗅いでた、あの懐かしい臭いだ!」
奥様「そんな昔じゃないだろ、いいかい?やるよ、シュッ、シュッ・・どうだい」
与太郎「うーん、なんかこう、いまいち気分が・・やっぱりムードですかねえ」
奥様「じゃ、音楽でもかけるかい?」
与太郎「いえ、そういうことじゃなくて、もっと精神的な・・本能をくすぐられるような・・人間の根源を彷佛させる・・形而上の何か、ですか?・・っていうか、奥さんのおしりでも見せてもらえば・・」
奥様「なんだ、遠回りな言い方しないで、早くお言いよ、ほら!おしり」
与太郎「ああ・・だめだ!そんな簡単に捲っちゃだめですよ」
奥様「おまえ、入院してる間に随分おかしなことを言うようになったよ、やっぱり頭打ったんだろ」
与太郎「やっぱりそうですかねえ?なんだかそんな気がしてきました」
奥様「かわいそうに、ごめんよ、植木の手入れなんか頼んだりして、お前の面倒は私が一生かけて看るからね・・ウウッ」
与太郎「奥さん、奥さんにそんなに言われると・・ウウッ」
奥様「よーし、こうなったら奥の手だ」
与太郎「えーッ?!ベットの上に立ち上がって、こっち見下ろしちゃって、どうしたんですか?」
奥様「どうだい?よく見えるだろ?これからだんだん裾を捲っていくからね、お前がいちばん精神的に、本能をくすぐられて、人間の根源を彷佛させる、形而上の何かを感じた処でストップとお言い、いいかい?」
与太郎「わ、わかりました!もっとずっと上です、もうちょっと上かな、膝より30センチくらい上、あ、ストップ!いや、ちょっと上過ぎた、もうちょい降ろして、そのタワシがやっと隠れるくらい・・」
奥様「タワシじゃないよ、これは、このくらいでどうだい?」
与太郎「あ、調度いいです、ああ!これですよ」
奥様「おや?立ってきたよ!かなり形而上の何かを感じてるね?」
与太郎「奥さん、裾をチラチラ動かしてくれませんか?タワシが見え隠れするように・・」
奥様「タワシじゃないって言ったろ!こうかい?」
与太郎「ああ、そうです!奥さん!たまんないですよ」
奥様「うーん・・いい形になってきたね、じゃあ私がだんだんしゃがむからね」
与太郎「えーッ!気をつけてくださいよ、ああッ!先っぽがくっついた!」
奥様「いいだろ?この触れるか触れないかって感じ・・よーし、私も濡れてきた、いいかい?入れるよ」
与太郎「ああッ、奥さん!」
奥様「入ったね?与太郎!入ったね!」
与太郎「入りました!わーッ、奥さん、いいです、気持ちいい?ッ!」
奥様「与太郎!私もよくなっちゃったよ・・」
与太郎「ああ、奥さん、そんなに腰を動かしちゃあぶない!」
奥様「どうしよう、止まらないよ・・」
与太郎「奥さん!痛い!痛いですってば!あッあぶないーッ!」
奥様・与太郎「ウワアーッ!ガッシャーン!」
看護婦「ガラッ!竹下さーん、お食事ですよー」
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20180818