「ビリッ」と服が裂ける音がした。
ここは俺のバイト先である某結婚式場ホール。
大学3年の俺、山田ケンゴ(21)は、インカムをつけてロビーで案内係をしていた。先ほどまでは、色とりどりのドレスで着飾った新婦友人など多くの参列者でロビーは人で溢れていたが、一応、昼間の部の披露宴は全部開宴して、さっきの喧噪とは打って変わりロビーは閑散としている。
さて、まかないのおにぎりでも食いに行くか、と思ったところ、服が裂ける音が。
振り向くと、ど派手なピンク色のドレスを着た若い女性がうずくまっていた。
目元がくっきりとした、かわいい感じの人だ。
「お客様、大丈夫ですか?」
「服が破れてしまったみたい・・・」
体にぴったりと貼り付いたピンク色のドレス。背中が縫い目からぱっくり裂けて、白い肌と淡いピンク色のブラが見えたので、とりあえず、俺が着ているベージュ色の上着を掛けた。
インカムで社員の黒服に報告すると、「今、忙しいんだ。着付けの先生に何とかしてもらえ」
着付室に電話すると「お色直しが集中して手が離せない。ソーイングセット(裁縫道具)を貸すから自分で縫ってもらいなさい」・・今日は全会場が埋まっていて大忙し。介添えの女性スタッフも出払っている。とても参列者の世話までは手が回らないと言う感じ。
俺の対応のまずさなのか、女性は不機嫌になってきている。
「他に着替えはないのですか?」・・・市内の美容院で髪を整え、着替えてからこのホールに来たので私服は置いてきてしまったという。
「では、衣装室に非常用のドレスがありますので……(汚したりしたときのために、古い貸しドレスが数着用意してある)」・・・新婦との約束で、これを着て出るのが夢だった・・
そう言うと、女性は泣き出してしまった。
仕方ない・・・・・奥の手を使うか・・・
「では、私で良ければ縫ってお直ししましょうか?」と俺は言った。
女性は目を丸くして俺の方を振り向いたので、話を続ける「私、ワンピースぐらいなら自分で縫えるんです」
女性は信じられないと言った表情で、「本当に出来るんですか?。すごい・・・お、お願いします」
休憩時間がぶっ飛んでしまった。ああ、おにぎり食べたかったなぁ……なんて事はお客様のことを考えるととても言えない。俺はインカムで上司に報告し、女性を伴って控え室に行こうとするが、今日は全部使っている。予備の控室も授乳室の貼り紙がしてあるので、やむなく、裏方の倉庫にお連れした。
段ボールが積まれた倉庫には窓も冷房もなく、室内は汗ばむような熱気。換気扇だけがぶんぶんと回っている。
「す、すいません。こんな部屋で。あ、あの、ドレスをお借りできますか?」狭い部屋に二人きりとなり、俺は女性を意識してどぎまぎした。
「は、はい。そうでしたよね」女性ははっとしたように、ドレスの背中のファスナーを降ろすと、ドレスを肩から外したので、俺はあわてて目をそむけて壁を向いた。
「お、お願いします」女性は俺にドレスを差し出そうと近づいてきた。
俺が女性の方を向くと、下着姿・・・・・・・俺は目を逸らすが、
「あ、あの・・直して頂けるんでしたら、み、見られても平気ですよ。それよりも、キャンドルサービスに間に合いますよね?。お願いします」女性はぺこりと頭を下げ、ドレスを差し出す。胸の谷間が見えた。上半身は、淡いピンク色のレースのブラだけ。ドレス用なので、胸元が広がって、胸のふくらみが見えている。
その下のお腹も少し出ていて、おへそも見えた。
下半身は、ベージュのストッキングにブラとお揃いのショーツが透けて見える。
明かりが一つしかない部屋で、壁を向いて作業したのでは、手元が暗くなってしまうので、部屋の中央、蛍光灯の真下に段ボール箱を運び、腰掛ける。
着付室から借りてきた裁縫箱を開け、ドレスに針を通しながら、部屋の隅にある段ボールに腰掛けた女性と話した。
名前は友香と言い、新婦の親友で24歳のOL。結婚式の半年前、新婦の独身最後の旅行に付き合ったとき、外国の観光地でこのドレスを一緒に選んだ。
ところが、今日の結婚式の3ヶ月前、友香さんは彼氏に振られてしまい、ヤケ食いして太ってしまった。美容院でも、無理矢理ドレスに体を押し込んできたとのこと。
俺はドレスを裏返して思った。随分と雑な縫製だなぁ・・・観光地で売っているこの手の安物のパーティードレスって見かけはいいけど、何回も着ないから、いい加減に作っているものも多いんだよね。(まさか、本人にはそんなこと言えないが)
「私の上着、羽織ってください。そんな格好では・・・」と、声をかける。いくら式場係員とはいえ、男の前で下着姿でいるのは恥ずかしいだろう。
「いえ、暑いからこのままでいいです。続けてください。それに、わたし、汗っかきなんですよ。上着羽織ったら汗で汚しちゃいますよww」そう言いながら、友香さんは俺の横に箱を持ってきて座り直した。
俺の隣に座った友香さんは、珍しそうに俺の手元を覗き込みながら、顔やお腹、胸をハンカチで拭いている。ハンカチで胸を拭く度に大きな胸の形が変わっていて、ブラの紐が横乳に食い込んでいる。化粧品と汗が混じった匂いが艶めかしいし、ストッキングに包まれた太もももむちむち・・・
もっとも、一応プロのはしくれ。友香さんの体を横目におしゃべりながら針と糸を操る手は止めないで作業を続けた。
「山田さん、あなた、男性なのにどうしてお裁縫ができるの?、わたし、縫いものは全く駄目なのに……」と友香さんから尋ねられたので答えた。
父が早い内に亡くなり、母は洋裁店を営みながら女手一つで俺を育ててくれて、大学まで行かせてくれた。
ただ、仕事が忙しいときも多く、その時は進んで仕事を手伝い、親子で助け合って生活してきた。そのため、一通りの裁縫の技術はある。
高校生の時、余り布で同級生の女友達にワンピースを縫ってあげたこともあった。(採寸しながら体を触りまくるのが目的だったのだが・・それは内緒)
話し好きの友香さんに乗せられ、"母子家庭なので仕送りは少なく、(金のかかる)サークルには入らず、つつましい生活をしている"ということまでしゃべらされてしまった。
話をしながらも、縫い目が裂けた箇所の補修と、反対側の縫い目もほつれそうだったので補修した。俺にとっては朝飯前。
「一応、二本取りで返し縫いしましたので、何とか持つと思います」
「ちょっと着てみますね・・」下着姿の友香さんは胸をぷるんっと震わせながら、俺の前に立ち上がった。
と、友香さんの腰が俺の目の前に。ストッキングに覆われたショーツが飛び込んできた。むっちりとした太ももが顔にくっつきそうだ。
俺の視線に気がついた友香さんは「もうっ」と笑いながらドレスを頭からかぶった。
下着姿を見られたとことを気にするよりも、ドレスを着られることが嬉しそう。
袖を通し、背中のファスナーを閉めようとするが、、、窮屈で閉まらない。
「時間大丈夫ですか?」と友香さんが心配そうに尋ねた。新郎新婦のお色直しが済み、キャンドルサービスを気にする時間。
「まだ少しあります。大丈夫ですよ」インカムで流れてくる進行状況からそう答える。
「ファスナー上げるの、手伝ってくれますか?」「はい」
俺は、ファスナーを上に上げようとしたが、ウエストが窮屈ですんなり上がらない。
そこで、友香さんの汗ばんで熱くなっている柔らかなお腹や腰に手を回し、ドレスの生地を後ろに引っ張りながらファスナーを上げる。
次は胸。胸も窮屈そうだ。そこで、「両手を上に上げてもらえますか?」と手を上げてもらうと、胸の肉が上に持ち上がる。でも、あと少しだけ生地を引っ張らないと・・・。
さすがに胸を触るのをためらっていると「(胸を触っても)いいですから、胸の所からそのまま後ろへ引っ張ってください」と友香さん。
俺は、友香さんの大きくて柔らかいバストに手を当て、胸の生地を後ろに引っ張って、ようやくファスナーが閉まった。
だが、一番上のホックもはち切れそうだ。そこで、「ホックの所、縫いつけますね」「はい」
友香さんの背中に回り込んで、ドレスを縫いつける。透き通るように真っ白なうなじを眺めながら、綺麗にまとめられた髪の匂いを感じた。
「お待たせしました。念のため、動きは最小限にしてください。急いで手縫いしたので多少凸凹しています。この後、オーガンジーのショール(透け素材の肩掛け)をお持ちしますので、肩から掛けてごまかして下さい」
「あ、ありがとうございます。直してもらったところ、全然分からないですよぉ。本当にどうなるかと思いました・・・・良かったぁ・・・」鏡でドレスを見た友香さんは涙ぐみそうになったので、気づかない振りをして
「さあ、キャンドルサービスが始まりますよ。会場までご一緒しましょう」
バックスペースを抜け、人気のない廊下を披露宴会場へ向かう。並んで歩いていると、友香さんが俺に寄り添って、見つめているような気がした。ドレスの胸元が丸く膨らんでいるのも気になる。さっき触ったばかりの大きな胸が。
友香さん、年上だけどかわいいなぁ、胸も大きいし。こんな彼女がいたらなぁ・・・
と、妄想していると「山田、そろそろ鳳凰の間がお開き(終わり)だけど、ロビーに戻れるか?」上司の声がインカムから流れ、一気に現実に引き戻された。
やっぱり、スタッフは余計な事考えちゃよくないね。・・・
「はい、お客様を秋桜(の間)にお送りしている所です。すぐにロビーに戻ります。」
無事、キャンドルサービスに間に合うタイミングで友香さんを披露宴会場にお送りする。
友香さんが会場に入っていくとき、つかの間の楽しい時間が終わったことを感じた。
バイト従業員がお客さまを恋愛対象と見ていたのでは仕事にならない。
と、感傷に浸っている間もなく、別の会場の披露宴がお開き(終わり)になった。
タクシーの配車やバスのお見送り、カメラのシャッター押し、更衣室の案内など、てんてこ舞いの忙しい時間が続いた。
いつのまにか、秋桜の間もお開きになった様子。
会場を後にする友香さんが満面の笑みで俺に手を振ってくれて、それで疲れと空腹がふっ飛んだ。気にかけてくれていただけでもよしとするか。
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数日後、俺はホールの支配人に呼び出された。
支配人直々の用事とは・・・?。平日なので、講義が終わってからホールに行くと、遅い時間にもかかわらず、支配人と課長が出てきて、1通の手紙を差し出した。
「山田、これを見てくれ」
俺が恐る恐る手に取ると、課長が「山田ァ、やったじゃないか!!すごいぞ!!」と言ってくれた。
手紙は友香さんからのもので、丸っこい綺麗な字であの日のお礼が書かれていた。ホールの社長もこれを目にし、お客様が喜んでくれたことに、感極まって涙を流していたという。
さらに、ポチ袋のような小さな封筒が入っていて、"山田さんへ"、と書いてある。
(友香さんから俺の連絡先の問い合わせがあったが、個人情報は回答できない旨と、手紙なら取次ぐ事を説明したそうだ。)
「何が書いてあるのかはわからんが、山田、がんばれよ」
「あと、山田、社長から金一封だ。来週から時給も上がるぞ。よかったなぁ」
「それと、これもつけていいぞ」支配人は、ベテランのみがつけることを許される、キャンドルを形取った金色のバッジを俺に差し出した・・・
臨時収入に金バッジ。それだけでも嬉しかったが、それよりも友香さんからの封筒の中身が気になった。
支配人室を出ると、俺はトイレに駆け込み、封筒を開けた。そこには、ピンク色の文字が。
「この間はありがとうございました。お礼をしたいので、お会いできますか?。連絡待っています。(連絡先)」これだけだった。
早速薄暗いトイレから電話を掛けると・・・「まあ、丁度良かった。今からお会いできますか?」と、嬉しそうな声。
二、三のやりとりのあと隣町の駅前喫茶店を指定されたので、急いで向かった。
喫茶店には既に友香さんが着いていた。白いキャスケットをかぶり、髪は後ろで1本に束ね、白いブラウスにデニムのベストを羽織り、黒のコットンパンツにスニーカー。友香さんのボーイッシュな格好は、かわいらしい顔立ちに似合っている。
「友香さん、お待たせしました。ごふざたです。」
「ごめんね、呼びつけちゃって。来てくれてありがとう。私からの手紙、着いたんだ」
「さっき、ホールに行って、もらってきたばかりです」
「それですぐ電話くれたの?」
「はい。」
「まあ・・・・うれしい♪」友香さんは一人ではしゃいでいる。
「そう言えば、この間はお昼のおにぎり食べ損なったって言っていたよね」
「は、はい・・」(これも喋らされてしまっていた・・)
「おにぎりの代わりに、晩ご飯ご馳走してあげる。"今日は"軽めのイタリアンでいい?」と、レストランに移動して軽い食事。友香さんはワインも飲んでいて「今は客と従業員ではないのだから、敬語はやめようよ」ともいわれた。
ブラウスを膨らませているバストと、V字に開いた襟元から見える鎖骨や胸元ばかりに目がいき、友香さんも時折俺の方をじっと見たりしたので、どぎまぎして食事の味は覚えていない。
食事の後、公園を通り抜けながらしゃべっていると、回りに人がいないところで
「ねえ、ベストまくって、ブラウスの背中見てくれる? 何か気になるのよ」と友香。
「うん、いいよ・・・あっ、破れている」ブラウスの背中の縫い目がほつれて15cm位開いているので、ピンク色のブラが目に飛び込んだ。(どうして、こんな破れたブラウス着ているんだ?)
「ブラウス、直せるよね?。針と糸は持っているから」
「うん、このぐらいなら直せるよ。でも・・・ここで?」
「まさか?、ここじゃ直せないよ。暗いし、ここで脱ぐわけにいかないわ。ねえ、あそこで直そうよ!」
そう言うと、友香さんは俺の手を引いて、ホテル街へ向かった。
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